そんな悩みに応える本が『みんなのインスト』である。20名もの愛好者が、自分の理想や実践を書き綴っている。これだけ多いと内容も多岐にわたり、完全なボードゲーム初心者や子どもからゲーマーまで、人狼から『アンドールの伝説』まで、TPOやゲームに応じて参照できるようになっている。
私も「インスト論」「インスト論2」という2本を寄稿させて頂いた。前者はゲームマーケット2014春で頒布された小冊子を収録したもので、アメリカ、ドイツ、日本で心がけられていることを比較したのち、禁断の「ルールその場読み」に言及する。後者はインストを聞く側としてのマナーをまとめた。
ほかの方の寄稿を読むと、いろいろな工夫が見られる。「(ルールブックでは最後に書かれている)勝利条件・得点計算を先に説明する」などは序の口。私がなるほどと思ったのは次のようなアイデアである。早速いくつか試してみたいと思っている。
- 遊ぶゲームのテーマや売りを一言にまとめて(キャッチコピーで)伝える(フジワラカイ氏)
- 最初に、プレイヤーが何者なのかを教える(健部伸明氏)
- 初心者の入った人狼では幽霊ルール(脱落しても投票できる)を採用する(アル隊長氏)
- 「このゲームのインストだけお願い」「インストだけやります」「インストだけ聞きたい」などをアリにする(新井さとし氏)
- 後からまとめてではなく、逐一質問する時間を作る(ダチ公氏)
- 同じゲームを3回続けてやる(あだちちひろ氏)
- まず箱絵を見せることから始める(さと(いぬ)氏)
- 3つ程度のゲームをプレゼンして、参加者に選んでもらう(山岡哲也氏)
ルールブックを朗読することについては否定的な意見が多いが、ルールを漏らさないのでよいという意見もあって面白い。この書籍の発案者で編集も務めた山岡哲也氏は、「インストの一つの方法や考え方を提案するものであり、みなさんに自分なりのインストを考えていただくのが目的」と書いている。どれがベストな方法かは状況によって大きく異なり、一様ではない。これだけ千差万別のインスト方法があれば、自分に合いそうなものもきっと見つかる。
最後に草場純氏が「自分の愛するゲームを教えなさい」と述べている。自分の好きなゲームをインストすると、そのゲームの一番面白いところ(「ゲームの心」)が伝わるという意味だが、私はこの書籍に寄稿した全員が、ボードゲームへの愛にあふれ、その愛をインスト時の工夫というかたちで表していると思う。だからこの本を読んでいると、その愛の深さに幸せになれるのである。
みんなのインスト
山岡哲也編/ペンタメローネ
2014年11月16日(初版品切れ、再版待ち)