首が回らぬマネーゲーム
2008年5月にアメリカの投資銀行リーマンブラザーズが破綻し、世界同時不況が訪れた。このリーマンショックの原因となったのがサブプライムローンである。通常の審査では通らないような信用度の低い人「サブ(準)プライム(優良客)」向けの住宅ローンで、この債権を組み込んだ金融商品が世界各国の投資家に販売された。ところが住宅バブル崩壊に伴い、その金融商品が不渡り状態になったのである。
「財政危機への億万ゲーム」と題されたこのカードゲームは、このリーマンショックをテーマにしている。債務証券と有価証券を組み合わせて金融商品を発行し、となりの人に渡す。となりの人は債務証券と有価証券を付け足してさらにとなりの人に。こうして1周してくる頃には、その金融商品の価値がいったいいくらなのか分からなくなってしまう。債務を増やしてしまった人は格付けがトリプルAからだだ下がり。最後に債務の最も少ない人は誰か。
プレイヤーは国家、銀行、財閥のいずれかの組織を担当する。国家は金融商品の一部を閲覧することができ、銀行はあやしい金融商品をスルー、財閥は債務を一部取り替えることができるといったちょっとした能力がある。
手番には手持ちの有価証券と債務証券を3枚まで組み合わせて金融商品を発行し、となりの人に渡す。有価証券は表向きに、債務証券は裏向きにするので、だいたいの価値は予想できるようになっている。
となりの人ができることは、証券を追加してさらにとなりの人に渡すか、債務証券を表にして検査するか、能力を使うかのいずれか。基本はブラフゲームで、できるだけ多くの債務をばれないようにさばく。
検査したとき、金融商品がトータルでプラスだったら検査した人がペナルティー。金融商品の中で一番額の大きい債務カードを引き取り、自分の「整理回収機構(バッドバンク)」に出さなければならない。逆に金融商品がトータルでマイナスだったら、最後に渡した人が差額分を自分の「整理回収機構」に出す。そして新たな金融商品を作って回していく。
3手番ずつ行ったら、1経済サイクル(ラウンド)の終了となる。今回の債務額が一番大きい人、累積債務額が一番大きい人、手札の債務が一番大きい人、そして最後にサイコロを振って一番小さい目を出した人(笑)が格下げされる。全員「ラウンドA」からスタートし、誰かが最低ランクの「D」になったら終了。累積債務の一番少ない人が勝利する。
3人で40分ほど。借金を大量に押し付けるにもまずは信用からと、比較的優良な金融証券を・・・と見せかけていきなり債務額マックス。1週してきたときに検査して、サガエさんに大借金を押し付けることに成功した。ところが格付けでサイコロの目が振るわず格下げ。格付けが下がると、補充で債務を多く引かなければならなくなったり、出せるカード枚数が少なくなったり、特権が消滅したりと、どんどん不利になっていく格差社会ぶり。サガエさんはすぐに国家の特権で格付けを回復したが、財閥である私には格付けを上げる特権がない。結局最後の大博打も見破られて格付け「D」。勝者は銀行の特権でリスクを回避したbashiさん。
証券の単位は1000億。「東日本大震災の被害額3000億ドル」などというように有価証券にも債務証券にも1枚1枚、その金額が何を表すか書いてあって重みがあった。
Trust – Das Milliardenspiel zur Finanzkrise
T.ミュラー、R.クラウゼ/ヘプタゴン(2012年)
3~6人用/12歳以上/45分
ゲームストア・バネスト:信用取引
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