エッセンでコスモス社にお願いしてきたサンプルが届いたので知人を集めてテストプレイ。発売後1ヶ月ちょっとで届いたのは確かに早いが、国内ではすでにメビウスが販売を開始しているので「今ごろ届いた」になってしまう。メビウスやバネストが当たり前のようにやっているので意識しにくいが、本国とほとんどタイムラグなしで、しかも訳まで付いて手に入るのは、ヨーロッパ諸国と比べてさえ非常に恵まれているのだと感じた次第。そうこうしているうちに、来月はニュルンベルクだ。
それ何やねん?
それ何やねん?(Was’n das? / P.パリエール / ラベンスバーガー, 2006)
すぐ遊べるパーティゲームは重宝する
『ボードゲーム準備のコツ』では「まず簡単で短いゲームから始めて、その後で他の複雑なゲームやなじみのないゲームに移行しよう。最後は軽快なゲームで楽しく締めくくろう」とある。これを四角四面に守る必要はないと思うが、初対面や久しぶりに顔をあわせるメンバーだった場合は重視したほうがよいかなと思い、パーティゲームから最近の1作をセレクト。詳細はこちら。日本版お題カードを入れることによって、西洋風のアイテムでいかに和風を表現するかというところが楽しい。
あまり勝敗にこだわらず、一題ごとにどういうつもりでそのアイテムを使ったのか、それをどう解釈したのかしゃべって笑った。ゲーム中の謎めいた会話も傍で聞いていておかしかったらしい。
ファクトリーファン(Factory Fun / C.v.モーゼル / クワリ, 2006)
あまり広くない工場に機械を並べて、よく分からない工業製品を作るパズルゲーム。オランダのメーカー、クワリから。
ゲームは機械タイルを人数分だけ表にして、早い者勝ちで取り、自分の工場に並べるというのを繰り返す。機械は赤青黄3種類の原材料を入れたり出したりしてはたらき、最終的に黒い製品を完成させる。しかしゲームの目的は製品を完成させることではなく、機械を上手につなぐこと。
原材料は貯蔵庫から出せるが、機械が遠くにあるとパイプでつながなくてはならない。パイプはコストがかかって減点になってしまう。そこでほかの機械から出てきたラインを次の機械へ。パイプが節約できるだけでなく、最後にボーナスも入る優れた方法だ。
下手に配置していると後からどんどん苦しくなる。とんでもなく長いパイプを引かなければならなかったり、パイプを引こうにも場所がなかったり。そうなるとコストを払って場所を変えるか、置けなかったタイルを戻してペナルティを払うかとなる。計画的に、そしてタイル選びは慎重に。
序盤は貯蔵庫をできるだけ使わず機械同士をつなげるよう心がけて1位。お隣のT.V.Flipperさんは対照的に、貯蔵庫を序盤に置ききってしまってツライ状況になっていた。最初のタイル早取り以外にインタラクションがなく、パズルゲーム好きのための作品だろう。ホームページでは与えられた機械を使って最高点を考えるソリテア・コンテストまで開かれている。
大聖堂(Die Säulen der Erde / M.リーネック&S.シュタドラー / コスモス, 2006)
ケン・フォレットの小説『大聖堂』に基づいたボードゲーム。原作のあるゲームはときに、原作に忠実にあろうとしてゲームバランスを崩しがちだが、このゲームは細部まで作りこまれ、隙のない仕上がりになっている。エッセンでも高い評価を得ているが、ドイツゲーム賞を獲得した『プエルトリコ』や『ケイラス』に匹敵する作品だと思う。
労働者で材料を集め、建築家をあちこちに派遣して特権や職人を手に入れ、大聖堂建築に貢献して勝利点を得るというドイツゲームらしい作り。これを何回か繰り返して勝利点の最も多い人がゲームに勝利する。
はじめは材料の調達と職人のリクルートから。材料には砂、石、木、金属の4種類があり、職人は「木を2個用意すりゃぁ、1勝利点にするぜ」「砂と金属で3勝利点にしてみせまっせ」など、いろいろなタイプがいる。手持ちの職人・これから手に入りそうな職人に合わせて労働者を送り、必要な材料を調達しよう。計画性が問われる部分だ。
次に建築家を派遣する。派遣先は8ヶ所。特権、勝利点、追加の材料、職人、労働者などが手に入るが、ところにより先着1名さまのところもある。ここで建築家を派遣する順番を決めるシステムが面白い。全員の建築家を袋に入れてランダムに引くのだが、先に置くほど高いお金を払わなければならないのだ。払えない、払いたくないというときはパスをして後回しになる。
順番は全くの運任せの中、どこまで金額が下がった時点で置くかはほかの人の動向次第。特権と職人、職人と職人、材料と職人など、強力なコンボは至るところにあるのだ。自分のチャンスを生かし、ほかの人のチャンスを防ぐよう、ベストの手を選択したい。
全員が建築家を置いたらボード上を順番に処理していく。初めにイベントカードがめくられ、よいことも悪いことも予想外の出来事にカウンターパンチを食らうが、凹んでいてはいけない。イベントカードの悪影響を回避する方法もちゃんとあるので、リスク管理能力が問われるというわけだ。
そして材料の調達で余った労働者で収入、特権カードの入手、修道院からの臨時勝利点、材料の入手ときて、ダイスを振りその目だけ徴税。王の宮廷に労働者を置いていた人は免税になる。それから新しい職人の入手、次に使える労働者の追加、足りない材料の購入や余った材料の売却まで行い、やっと修道院の建築。処理はたくさんあるが、全てボード上の図で示されているので難しくないし、機械的にやるのであっという間に終わる。
修道院の建築では、手持ちの材料を職人カードに振り分け、そこに書かれている分だけ勝利点が入る。収穫の喜び。これまでの努力が実るか実らないか? 中央に修道院のパーツを1つ足して次のラウンドへ。
悩みどころは材料・職人の選択と労働者の配置に絞り込まれており、煩雑さを感じない。ゲーム時間は90~120分と長めだが、これをしよう、次はあれをしようとやりたいことが湧き出てくるので退屈に感じず、むしろ終わってからもう1度遊びたくなるくらいだ。常時次人さんはブログ「操られ人形別館」でカードの研究を始めたほど。小説『大聖堂』を知っている人も知らない人も、美しいボード・イラストとバランスのよいシステム、そしてこのゲームだけがもつ魅力を感じられると思う。
修道院でこまめに勝利点を入れて序盤リードした米出さんを、特権カードで追う私。職人カードのアップグレードはその分遅くなってしまったが、残しておいた金属でガラス職人を使い一気に詰め寄る。勝ったかと思いきや、最後の最後に金属で大稼ぎしたN君が一気にごぼう抜きで1位。すごい展開。また遊びたい。
I am grateful Kosmos Verlag for offering the sample and Mr. Nose for offeringthe Japanese rule.
ひつじパニック(Haste Bock? / ラモント兄弟 / ツォッホ, 2006)
詳細はこちら。前回の評価は自分に最良のパターンを作ることばかり考えて、後手番不利ではないかと思ったが、今回は1番手のT.V.Flipperさんが優しい手を打ってきたこともあり、そうでもない展開となった。
特に大量得点チャンスとなる第2、第4フェイズでは、「回転」のタイルをもつ人を見据えて、先手番の人が幾分か協力するというプレイがこのたびは見られた。協力しすぎてはただ得点を献上するだけだが、「これなら回転してもメリットはあまりない」という程度の状態に調整すれば、決して自分の損にはならない。
このような手番の後先に基づいた微妙な協力関係があちこちにできると、ゲームはずいぶんダイナミックになる。さらに1位の人に得点させないようにほかの3人が協力し、2位の人が逆転しないよう下位の2人が協力するといった順位に基づいた協力関係もあり、ほかの人の気持ちまで読みながらヒツジを移動するのが楽しかった。
I am grateful Zoch Verlag for offering the sample.
ローマ帝国の危機(Kampf um Rom / K.トイバー / コスモス, 2006)
カタンシリーズの最新作。昨年の『エラズント』、一昨年の『カンダミール』と、カタンのシステムからちょっと離れていたがこのたびはかなり近いところまで回帰した。邦題からいうとプレイヤーはローマを守る側のようだが、原題「ローマを巡る戦い」のように、プレイヤーは攻める蛮族の側になる。ローマの都市を次々に略奪して力を蓄え、征服して自分たちの国を建国し勝利点を上げるのだ。ひでぇな。
ボードはヨーロッパの地図。東北から攻め込んでいく。各自もっているのは騎兵1隊と歩兵1隊。こいつらがヨーロッパを縦横無尽に荒らしまわってくれる。ダイスを振って出た目のマスにあるコマに収入が入るのはカタンと同じだが、騎兵と歩兵は絶えず動き回り収入のある目が変わっていく。アドベンチャー人類に見られたシステムだが、今回は中盤まで部隊は2つのまま。その代わり、両部隊の力を増強することができ、強くなればより多くの都市から略奪できる。ダイス目に恵まれた場所を陣取りつつ、部隊を強化して隣接する都市をたくさん略奪しよう。でも各都市先着1名だから、先を越されないように注意。
都市をある程度略奪したら、今度は建国だ。同じようにして隣接する都市に部隊を駐屯させる。これで移動はできなくなるが、今度はそこから近くの都市へと国を広げられるようになる。これでやっと、収入のある場所が増えていくというわけだ。そうなったら資源がどんどん増えていくから、ゲームは終了に向かってどんどん加速していく。終盤がだれないのは、カタンの魅力のひとつだ。
10勝利点先取で勝ちだが、勝利点は建国した都市の数のほか、最大外交官(ラージェストアーミー)、たくさん略奪したで賞(1部隊で5色制覇)、バランスよく建国したで賞(両部隊が4都市ずつ)があり、建国が早くても遅くても勝ち筋がある。これ自体は十分楽しめるレベルにあるが、数あるカタンのシリーズで見るとダイスの振り直しで偏りがなくされているくらいで、特別新しいことは感じられなかった。
N君が両方の部隊でたくさん略奪したで賞を取り、そのまま建国も着実にやって1位。私は資源が足りず強化に力を入れられなかった。2時間ぐらいかかる。
I am grateful Kosmos Verlag for offering the sample and Mr. Nose for offering the Japanese rule.