ルール和訳公開の是非(4)ゼロサム
海外ボードゲームのルール日本語訳をネットで公開することについて、これまで「是」で主張を組み立ててきたが、状況が変わりつつある。毎年この時期に行なっているメビウス訳アーカイブへの新規追加はメビウスおやじさんと協議して見送ることにした。
「ルール和訳公開の是非(1)国内ショップへの影響」の前提「個人輸入する人は非常に限られている」が崩れ(気軽に個人輸入できる)、「ルール和訳公開の是非(2)ヤフオクでの利用」の前提「ショップの供給が追いついていない」も崩れ(ふんだんに供給されている)、「ルール和訳公開の是非(3)メーカー」については、公開して問題となるのは新作より定番と呼ばれる旧作にあることが分かってきた。
しかもこれまでボードゲームをどんどん買ってきた愛好者の多くが飽和状態になり、『ドミニオン』バブルも終わりつつある昨今、どこかが売れればどこかが売れなくなるゼロサムの時代が到来しつつある。独自の日本語ルールを作成せず、公開日本語ルールを利用する業者が増え、コストをかけて日本語ルールを作成してきた既存ショップの利益が圧迫される状況下では、有志ならともかく、国内ショップは日本語ルールを公開しないことになるだろう。当然の成り行きである(それゆえ、これまで毎年提供して下さったメビウスおやじさんのご厚意は非常にありがたいものである)。
有志による一般公開についても、国内でまもなくどこかが扱いそうな作品や現行商品については、業者に利用され(添付販売を禁じても、ここからダウンロードできますよで同じことである)、その分だけ国内ショップの売上が落ちる可能性を認識した上で、行うかどうか考えたほうがよいのではないだろうか。
もちろん国内のショップで買うか、海外のショップから個人輸入するかは個人個人の選択である。大本の出版社・メーカーはどこから買ってもらっても売れればかまわないはずである(長く売り続けてもらえるショップのほうがありがたいだろうが)。だからショップは自由競争で、消費者が恩恵を受けると考えて公開するという選択肢を否定するものではない。
なかなかにアンビバレントな問題で、立場によって異なるのはもちろんのこと、ひとつの立場からも一概に判断を下すことができない。現在のところ、私が和訳公開するのは明らかな絶版品と、メーカー的・内容的(言語依存度が高いなど)に国内ショップが扱う可能性が低いと判断される作品に限ることにしている。
どろんこパーティー(Matschig)
日本でも全国各地で「どろんこ祭り」が行われている。水田で田植えの前に行われ、元は豊作を願う神事だったようだが、今はイベント化され、どろんこサッカーなどが行われている。最初はちょっとの汚れでも嫌がっていたのが、転んで泥だらけになったのをきっかけに、最後の方になるとやけくそになるところがコミカルで楽しい。韓国の保寧で開かれるマッドフェスティバルには、220万人も訪れるという。
ほかにもどろんこ(スワンプ)サッカー、どろんこバレー、泥レスリング(キャットファイト)など、泥の中で行われるスポーツは少なくないが、このゲームは泥玉をぶつけあう泥合戦がテーマ。オリジナルは1998年にファンフォー出版から発売されたものを、14年ぶりにアミーゴ社がリメイクした。
手札には砂カード、水カード、傘カード、特殊カードがある。自分の番には、砂カードと水カードをペア(泥)にして、誰か出す(投げつける)。誰に出してもいいので、一番汚れていない人に。仁義なき直接攻撃。
出された(投げつけられた)人は、傘カードで防御。砂カードと水カードの数字の合計以上の傘カードを出せればセーフ。出せなければ、それをダメージとして食らう。食らった人から次の泥を投げる。仕返しだ!
誰かが泥を出したとき、同じ数字の水カードまたは砂カードを出せば、泥の威力を増して攻撃できる。攻撃する相手を変更できるので、思わぬところから飛んでくることも。
特殊カードは、水カードのダメージを消せるドライヤー、砂カードのダメージを消せる扇風機もあるが、投げつける相手を変えることができるカード、ほかの全員に跳ね返らせるカードが強烈。自分で投げた泥んこが、まわり回って自分に帰ってくるという因果応報。
ふうかさん、karokuさんと3人プレイ。初手、特殊カードを恐れて小さい泥玉を投げつけてみたら案の定返ってきた。karokuさんの手札が偏って、泥を作れないのをいいことに集中砲火。逆襲された時には、全員に跳ね返らせるカード(泥んこを無効にし、山札から引いたカードだけダメージ)で切り返して1位。
攻守どちらもバランスよく手札を整えてというようなちょっとした戦略はあるが、引き運も大きい。淡々と遊ばず、「うぉー、やられた!」「よし、仕返しだー!」などと盛り上げて遊びたい。
Matschig
V.ヘアマン/アミーゴ(2012年)
3〜6人用/8歳以上/30分
・ふうかのボードゲーム日記:どろんこパーティー