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暗闇の大広間(Finstere Flure)

機械的に追いかけてくる怖さ

一定のルールに従って追いかけてくるモンスターから逃れてダンジョンを脱出するパズルゲーム。血痕があちこちにあるボードはパニックを助長させる。

モンスターは組み立て式でいくつか替えパーツがあり、フランケンシュタインや目玉親父、その混合など好きなものを作ることができる。手をにょきっと前に出して突進してくるさまは恐ろしい。

暗闇のフロア
今日の餌食は誰か?

ゲームは、各プレイヤーが全部のコマを動かした後、モンスターが移動する。まずはプレイヤーのコマから。マスに書いてある数字だけ移動し、移動が終わったら裏返しにする。このとき重要なのが石で、押せば動くのでモンスターの視界から隠れよう。血の池で滑って一気に進むという方法もある。

次にモンスターの移動。移動タイルをめくって、今回何歩動くか決める(誰かを捕まえるまで何マスでも、というタイルもあり)。モンスターは1マス進むたびに左右を確認し、視界に人間がいればそちらに向かって方向転換する。複数入たら近いほう。何だか、キョロキョロあたりを見回しながらこちらに向かって迫ってくる様子が目に浮かぶようである。

モンスターに捕まってしまったコマは、スタートに戻るというルールと除外されるルールがあるが、除外されるルールのほうが緊張感があっていい。さようなら~!

こうして反対側にある出口から何人出せるかを競う。

石の陰に隠れていれば安全というわけではない。モンスターは力持ちなので、モンスターが石を押してそのまま壁まで持っていかれると圧死することもある。また、壁まで行ったモンスターは反対側から出てくるので、遠くまで逃げたと思っても安心できない。

たくさん人がいるうちはわいわいと遊んでいられるが、人が少なくなる中盤あたりからゲームは急に重くなる。他人を犠牲にして生き延びるにはどうしたらよいか、先の先まで読まなければならないからだ。動き方によって2人のうちどちらかが犠牲になるという場面もあり、決断を迫られる。上級ルールはワープなどが登場するが、思考能力のキャパシティーは基本ルールでいっぱいいっぱい。パニックにならず、冷静に(ときに冷血に)対処するのは難しい。

Finstere Flure
F.フリーゼ/2Fシュピーレ(2003年)
2~7人用/10歳以上/60分
ショップ検索:暗闇の大広間

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遺言(Last Will)


 心のタガを外して

会ったこともない叔父さんが亡くなったという知らせが入った。大富豪ながら家族も友人もいない叔父さんは、金の使い道を知っている親戚に遺産を与えることにしていた。遺言状には、決められた額を親戚に与え、その中で最も早く使い切った者に残りの財産を与えるという。そんなミッション、余裕じゃないか・・・と思って集まってきた親戚たちは思い知ることになる。破産するのも容易じゃないと。

そんなクレイジーな設定のチェコのボードゲーム。ドイツ語版が”Mankomania”であることでも知られる『ビバ破産!』のような双六かと思いきや、シビアなマネージメントが求められるゲームだった。イラストも20世紀前半のレトロな雰囲気を出していて格調高い。

毎ラウンド、中央のボードにコマを置いてこのラウンドのアクション数などを決める。獲得できるカード枚数、お使いできる下男の数、そしてアクション数、さらにプレイ順もこれで決まる。手番順が先になるほどカード枚数もアクション数も減り、カード枚数が多ければアクション数が少なく、逆にアクション数が多ければカード枚数が少ないというジレンマ。ここで軽くシビれる。

次に下男コマを置いてカードや拡張ボードを取ったり、不動産の価格を変更するフェイズ。ここはワーカープレイスメントで、先手番が圧倒的に有利。

そしてアクションフェイズ。手札からカードを自分のボードにカードを出したり、出ているカードを発動させたりして実際にお金をなくしていく場面だ。限られたアクション数の中で、どの組み合わせだとお金を一番使うか考える。もちろんコンボもあり。

カードは「劇場」や「船旅」など1回限りのイベントカード、何回でも使える浪費カード、シェフ・婦人・犬・馬など出費をかさばらせる同伴者カード、特殊能力をもたらす助力者カードなどがある。例えば同じ「船旅」でも、通常は2アクションで2ポンドしか消費できないが、犬と婦人とシェフと一緒に出せば9ポンドも消費できる。なんとも贅沢な旅である。

中でもカギとなるのが不動産カード。購入するのに大枚をはたけるが、これをもっている限り破産できない。不動産価格は徐々に下落していくので、安くなったときに手放すのである。ただし、管理費を払っていると不動産価格が下落せず、手放しにくい。どうせならば庭師を追加で雇うなどして、管理費を無駄に増やしておきたい。

誰かが破産するか、第7ラウンドの最後にゲーム終了。破産した人が複数いたら、一番負債の多い人が勝つ。

普段から無駄遣いに定評のある鴉さんが、序盤から追加アクションでどんどんお金をなくし1位。常識の逆を行くシチュエーションに大笑いしたが、節約を心がける心のタガが外れそうで怖かった。くれぐれも、このゲームが終わってからボードゲームのまとめ買いなどしないようにしたい。

Last Will
V.スーキー/チェコボードゲームズ(2011年)
2~5人用/13歳以上/45~75分
日本語版は、アークライトから『おかしな遺産』として2013年春発売予定