構成はカラーページでボードゲームの写真と基本データだけを掲載し、その内容は本文で詳しく取り上げる。
トップバッターは「安田均のボードゲーム紹介」。00年代のボードゲームを2年ごと5つの時代に区分し、その時期の特徴とベスト10と準ベストを挙げる。ドイツゲームの世界的な認知が進み、アメリカ・フランス・イタリアなどからもその影響を受けた作品が出始める様子を克明に描き出す。リソース・マネージメント、「むずかしゲー」と「かんたんゲー」の相克、セレクトカードゲームというキーワードを柱に、90タイトルにも及ぶ傑作を紹介。最近ボードゲームを始めた人は「これまでのあらすじ」のようなものが分かり、10年以上のプレイヤーには面白いゲームを再発見する機会を与えている。
次に江川晃氏による「ボードゲーム注目作」。2004年以降に発売されたボードゲームを1タイトル1ページでじっくり紹介する。16タイトル中、ドイツゲームは6タイトルに留め、アメリカなど非ドイツゲームを積極的に取り上げており、世界的なボードゲームの広がりを一望できる。
そして秋口ぎぐる氏による「ボードゲームリプレイ」。15タイトルについて、実際に遊んでいるときの発言を、ルールを交えながら楽しくレポートする。リプレイは、TRPGでは盛んに作られているものの、ボードゲームではあまり見かけないだけに、これは見ものである。1タイトルに5ページもかけており、臨場感たっぷり。笑いどころもたっぷり。
それから笠井道子氏による「ウニ頭にもできるもん」。難しいゲームは苦手な方に、簡単お手軽なゲームを15タイトル紹介する。すでに絶版で入手が難しいものもあるが、家族や、子供と一緒に遊ぶゲームを探している方には大いに参考になるだろう。
最後に著者4人に柘植めぐみ氏を加えての「ボードゲーム大好き座談会」。各自がオススメゲームを選び、ほかのメンバーがツッコミを入れる。それぞれの性格が見えてきて、オススメゲームの傾向が違うのも頷ける。
カタログ形式だから、どこから読んでもかまわないし、好きなところだけ読んでもいい。でも全部読んだら、過去10年のボードゲームの流れは十分に把握できるだろう。2003年ごろにドイツゲームについて「パワーが減じている」と評した(『ゲームを斬る』)安田氏が、非ドイツ圏での活況に触れて「ボードゲームは今後きっと伸びますよ!」と本を締めくくっているのが興味深い。ちょっとこの頃ボードゲームに飽きてきたという方にも、新しい刺激になるにちがいない。