エッセンを間近にした今月、ゲームの合間に話す話題もエッセンのことばかりになっている。ちょうど届いたメビウス便もエッセンの新作の先取り。10月はゲーム愛好者にとって1年で一番幸せな月ではなかろうか。
ブロックス3D(Blokus 3D / S.ケーゲル / ビバリー, 2008)
コンパクトの喜び
待ちに待っていたブロックス3Dをついに遊んだ。ドイツ年間ゲーム大賞ノミネートされたフランスのゲーム『ブロックス』が、同じくノミネート作であるスイスのゲーム『ルミ』をシリーズに加え、リメイクして発売することを知ったのが2月のニュルンベルク。360度回転可能なターンテーブル、人数別の制限まで書かれたテンプレート、そしてコンパクトなブロックに一目ぼれ。6月の東京おもちゃショーで日本語版のパッケージ見本を見て、9月に発売されるまで楽しみにしていた。
ルールはもちろん『ルミ』と同じである。だが格段に遊びやすくなった。ターンテーブルのおかげで向こうを覗き込んだりする必要がなくなり、テンプレートのおかげでいちいちルールブックを読む必要がなくなった。そして何よりもコンパクトなブロックは手になじみ、積んだときもしっくりくる。『ルミ』の木製を惜しむ声もあるが、あちらはキューブを接着しているので、はがれてしまう恐れがある。それと比べると、子どもが多少乱暴に扱っても壊れる心配がなくて安心だ(『ブロックス』でさえ、子どもがへし折ってしまう事例が報告されている)。
ぢ~ぷさんと2人で直方体のテンプレートをプレイ。先手のぢ~ぷさんの上に乗せて最高段数にブロックを置いていく。ところがこれが罠で、1段目から置く布石がない。後から猛烈に追い上げられ引き分け。気軽に重ねていってもよし、相手のブロックをよく観察して先の先を読むのもよし。『ブロックス』ではバランスが悪いとされる3人でもかなり楽しめそうだ。
クラッカー(Knallbonbon / J.ニキシュ / ヘクサゲームズ, 1991)
ブラフでクラッカー爆弾を押し付けあうカードゲーム。『ごきぶりポーカー』の要領で手札から1枚を誰かに出し、受け取るかさらにほかの人に回す。
違いは回す回数の上限が定められていることと、直接でなければもとの持ち主に返せることと、中にはたった1枚だけプラス札が混ざっていること。この3つのルールが絶妙で、ほかの人をうまく騙せればプラス札を自分で取ることができる。例えば3回くらいのときにマイナスの少ない人に回せば、その人は警戒して別の人に振るだろう。別の人もこれに乗れば、自分のところに返ってくる。実はそれがプラス札だったと知って悔しがる2人を笑うというわけだ。
回数を超えて回したい(受け取りたくない)場合は、チップを払うことで回せるが、チップには上限がある。チップが少なくなれば、大きいマイナス札を押し付けられる可能性が高い。このチップもブラフの駆け引きで重要な役割を果たす。
4~6人というプレイ人数だが、最大の6人でプレイ。お互いに性格を読みあいながら、高度なブラフが展開された。「こういうタイミングでプラス札を出すでしょう」「いえいえマイナスですよ」口三味線も楽しい。一か八かで取ったカードがプラス札でラッキーだったものの、チップを早く使い果たしてからはマイナスがどんどん来て3位。同じメンバーでもう1ゲームやったら、展開がかなり変わるはずだ。
スピードレーサー(Flotte Flitzer / R.クニツィア / パーカー, 2006)
クニツィアがいつの間にか出していたレースゲーム。クニツィアがハバから出している『パーキングゲーム(FlinkeFlitzer)』と原題が似ていて紛らわしいが、こちらはファミリー向けのゲームだ。カードゲームのような小箱に入っているが、ボードも付属する。カードプレイで車を進めるのだが、カードの効果がどれもひとひねりしてあって、さすがクニツィアだと思わせられる。
まずはスリップストリーム。後ろにいる車が自動的に同じマス進む。車の色指定なので、ときには自分の車以外を進めなければならない。後ろにつけて連れていってもらう手もあるし、前につけて、誰かが出してくれるのを待つ手もある。気がついたらトップなんてことも。おい、俺のクルマを勝手に進めるんじゃない!
スリップストリームでは、ほかの人の車を進める代わり危険ゾーンに入れることができる。そこで出てくる事故カード。山札から2枚引いて、マイナスのカードが出れば戻らなければならない。最悪の場合、最下位の車の位置まで戻ることもある。ワープしたのか? そして一か八かのリスク。山札からカードをめくり、マイナスカードでなければ1マス進める。マイナスカードが出るまで何枚引いてもいいという度胸勝負。もう1枚、もう1枚!
あとは前にクルマが詰まっていると一気に追い越せるカード、1マス進むカード、1マス戻るカードがある。よいカードばかり出していると手札が悪くなり、いつか利敵行為もせざるを得ない。そんなとき、どれを出せば一番自分が不利にならないかも考える。
各プレイヤー2台のクルマの順位の合計で競う。1枚1枚のカードプレイで盛り上がるのは、さすがエンターティナーを自認するクニツィアだ。最初に1位で飛び込んだ私が、もう1台が上がらないままゲーム終了となったが得点合計で1位。
翡翠の女神(Im Reich der Jadegottin / K.トイバー / コスモス, 2007)
ドイツ3Kで1人、今世紀に入ってから全くゲーム賞を取っていないトイバー。その理由はカタンシリーズばかり制作しているところにある。カタンシリーズは今年ドイツカタンが出るなど、まだまだ続く気配だが、一方でエントデッカーもシリーズ化を試みている。『ニューエントデッカー』と『オセアニア』という2つのリメイク作品とは別に、昨年からエントデッカー三部作というものが始まった。その第一弾が『翡翠の女神』である。メビウスから発売されたばかりの『砂漠の王子』が第二弾で、さらに第三弾の『デーモン』が予定されている。
十字になった道からジープを走らせ、移動先でタイルを引いて絵が合えば置き、そこに遺跡があればコマを置く。遺跡が完成したら、コマの数に応じてチップを分配し、そのチップを集めて得点を競う。この基本システムは『砂漠の王子』でも同じだ。異なるのは、チップの得点方法。
遺跡の宝物チップは3色4種類あり、ABCDをコンプリートするとボーナスが入る。劣化しているタイルが混じるとボーナスは下がる。揃わないときは中央に戻って交換もできる。
あとはお金が手に入り、これでコマの増員や追加手番、チップの2枚交換ができるようになっている。特に追加手番が重要で、ほかの人が半分発掘した現場に急行し、追加手番とコマの増員で乗っ取るなんてことが可能だ。
『砂漠の王子』と比べるとほかに要素がないので展開はすごくスピーディだ。今回は30分ちょっとだった。一人で地道に発掘したところにあまりよいタイルを引けず、ほかの人の発掘現場に行った途端に発掘終了になったりして最下位。