3週間ぶりの秋葉原。エッセンが近づいて新作があまり発売されなくなったこの時期、今度は珍しい旧作が多く持ち込まれていた。
卓分けはカードで行い、分けた後に卓ごとにゲームを決めることが多いが、この頃は希望ゲーム名を言ってほかにも希望者がいれば立てるというパターンも出てきた。希望者が多ければ参加できない人が気の毒に思うこともあるが、面白いゲームはいくらでもあるので臨機応変にしているようだ。このような特定のゲームを遊びたいという人の希望を叶えつつ、ゲームをあまり知らない初心者にも楽しんでもらえるようにしようというのが、目下の課題と言えるようだ。
クレイジーレース|マウアー
マウアー(Die Mauer / T.ファクラー / ツォッホ出版, 1999)
一斉に手を明かして城壁(マウアー)を建築するゲーム。コンポーネントの豪華さで名高いツォッホ社が、まだマイナーだったころの作品。コンポーネントが立体であることはシステム上関係ないが、ゲームを盛り上げるのにとても役立っている。
全員の持ち物は塔と門と城壁5種類の7つ。これを早くなくすのが目標だ。誰かが全部なくしたとき、残っていたパーツはマイナス点になる。
まずスタートプレイヤーが親となって、このうち1つを握る。ほかの人は親が何を握ったか予想して握り、全員一斉公開。はじめの予想はあてずっぽうだが、残りコマや親の性格からだんだん読めてくるだろう。
さて親が握っているものをズバリ当てられたら、(当てた人が何人いても)その城壁を場に建築できる。誰も当てられなかったら親が建築。ただし塔と門は隣り合うことができないので、置けなかったらアウトになる。
さてここからが真骨頂。親に、何も握らないという選択肢があるのだ。それを予想して同じように何も握らない人が1人だけならば、握らなかった怠慢な親に好きなパーツをプレゼント。当然マイナス点の高いパーツをプレゼントするわけで、これを食らったらかなりキツイ。しかし何も握らないで予想を当てた人がバッティングしたら何も起こらない。
こうして親を時計回りに交代しつつ、誰かが上がったらゲーム終了。残ったパーツはその大きさに従ってマイナスになる。建築しづらい塔や門はマイナスが大きいし、ほかの人があまり予想しない小さいパーツは建築しやすいがマイナスも小さい。本当にうまくできたシステムだ。
何も握らないという賭けで「策に溺れた」というちーぷさんとMIZさんが負けて塔お引き取り。その間に着々と裏をかいてきたヴァイスさんが1着となった。中ぐらいの城壁がかえって難しい。ブラフの前の口三味線などがおかしく、親になっても子になっても始終心躍るゲームで大盛り上がり。すばらしい。
Xパッシュ(X-Pasch / V.ヘルマン / ファンフォー, 1997)
3つのダイスをつかって会社経営をするという、一風変わったゲーム。メーカーのファンフォー社は作者の個人メーカーだが、一昨年から動きを見せておらず事実上絶版、レアゲームとなっている。
ゲームはまずダイスを3つ振って、出た目に対応する手札を出して会社を設立することから始まる。合計数で設立できる会社と、ゾロ目(パッシュ)で設立できる会社があるが、出る確率が低いほど収益が大きい。
会社を設立したら、指示された数の取締役を置いて経営スタート。以降、自分の手番が来るたびに指示された収入が入る。これが120(上級ルールは150)ユーロになったらゲーム終了だ。高い会社をどんどん設立して収益を上げよう。
しかし、設立した会社がずっと自分のものだとは限らない。ほかの人が設立と同じ目を出すと、その会社に取締役を送り込んでくるのだ。送り込める取締役の数は使ったダイスの数+指示された色の数。設立時よりも多数の取締役が一度に送り込まれてくるかもしれない。単独最多で会社乗っ取り。中盤になると会社がたくさん出現してくるので、どの会社に取締役を送るかの選択が勝敗を分けることになる。
ここまでが初級ルールで、上級ルールになるとさまざまな効果のあるカードが入ってくる。ダイスの目を調整したり、会社の収益を上げたり、つぶれやすいが収益の大きい会社が生まれたりと、新しいドラマが待っているだろう。覚えることは増えるがその分多様な展開が楽しめる。
序盤にゾロ目の会社を次々と設立して収益を上げた私だったが、乗っ取られて収益がどんどん下がり、その間に出目も悪くなって会社が設立できない手番が続いた。その一方で終盤にたくさん集めたFRTSさんが怒涛の追い上げで1点差の1位。
トップ目のプレイヤーは集中して乗っ取られたり、破産宣告で狙われたりするのでゲームは均衡する。また多少出遅れても大逆転のカードがあるので最後まで希望は失わないだろう。カードの強さにばらつきがあって荒削りな感じも受けたがそれでもバランスは保たれており、何よりも基本となるシステムが斬新なことがゲームの魅力になっていた。
グランドナショナルダービー(Grand National Derby / R.クニツィア / ピアトニク, 1996)
自分が賭けた馬を、カードを出して生き残らせるカードゲーム。R.クニツィアの天才ぶりをうかがわせる作品で、翌年にタイタン・アリーナ(Titan:The Arena、AH)、2000年にギャラクシー(Galaxy、GMT)、2004年にコロッサルアリーナ(ColossalArena、FFG)としてリメイクされている。全てアメリカからのリメイクだが、その多さからもゲームのよさが分かるだろう。
レースには8頭の馬が出走する。手番にはカードを1枚出して馬の前に並べ、全部の馬に1枚ずつカードが置かれた時点で一番弱い数字だった馬が脱落する。次のラウンドは残る7頭にて。次は6頭、さらにその次は5頭……というように残り3頭になるまで続ける。
この3頭がどの馬になるかを予想して当てるのがゲームの目標。1枚もカードが置かれていないうちに予想するのは難しいが当たったら4点、以降1枚カードが置かれるたびに予想は易しくなるが当たったときの得点は下がっていく。う~ん、悩ましい。
しかし予想が当たるのは全くの運ではなく、プレイヤーが出すカードだというところがイかしている。自分が大きく賭けている馬は大きい数字のカードを出して応援、反対にほかの人が賭けている馬は小さい数字のカードを出してつぶしにかかる。さらに同じ馬に複数の人が賭けていると一時的な協同作業にもなるだろう。列が埋まりそうな各ラウンド終盤、誰がどこに置くかを予想しながら駆け引きして行動しなければならない。これまた悩ましい、いや悩ましすぎる。
FRTSさんとMIZさんが序盤から水色の馬に大賭け。この水色の馬をいかにして潰せるかが私とヴァイスさんの使命となった。もちろん、それに専念していればいいというものでもない。自分が賭けているほかの馬を生かしつつ。だがやはり手薄になってしまったのか、その間に自分の馬がつぶされて最下位。ゲーム中はずっと自分が賭けている馬が生き延びるかハラハラし続けで心臓に悪い。誰も賭けていない馬が脱落する前半から、賭け金の大きい馬が脱落する終盤にかけてテンションがどんどんあがっていくのがすごくいい。傑作。
遺産相続(Die Erbraffer / N.スーウェル、J.ショー / ラベンスバーガー, 1994)
5代前の先祖から現代に生きる我々に最も高い遺産を相続させるボードゲーム。近年復刊された『榊涼介/林正之のマルチプレイ三昧』で取り上げられ、ニチユーから発売されていたので知名度はやや高いが、絶版なので遊んだことがある人は少ないかもしれない。
まずはじめに配られるのはプレイヤーカード。これは最後まで公開されない。自分がどの子孫かこっそり確認して、その子孫に莫大な遺産を残すにはどの先祖にお金を集めればよいか家計図を見ながら考えよう。途中で遺産がもらえる「未婚のおじ・おば」カードもある。
手番にはカードを出して当該の世代の先祖にお金を増やしたり減らしたり。砂時計のマークがあるカードが出るたびに年月がたち、やがて世代交代。その間に2人亡くなり、資産は遺書マーカーによって分配まで凍結される。これを使って自分の子孫に遺産を残しそうな先祖にお金と骨董品を集めておきたい。
ここで1人ずつ、先祖を1人選んで遺産相続が始まる。未婚の子どもには好きなだけのお金を、既婚の子どもにはお金を折半、そしてヴァイオリンや高級ツボなどの骨董品は好きな方へ。分け方が気に入らなかったら「新遺書発見!」カードを出してキャンセルさせることもできる。その上にまた「新遺書発見!」なんていう場面も。
こうして次の世代、次の世代へ。遺産の分配の仕方から誰がどの子孫かも大方分かってくる。終盤になるほど笑ってしまいそうなあからさまな分配が見られるだろう。最後の年、1周してゲーム終了。最後の最後まで油断できない。
未婚のおじ・おばで順調に稼いできたが、終盤あてにしていたおばさんのタンスが爆発!一文無しになる。それに最後に下ろしてきた骨董品まで全部持っていかれてビリ。しむしゅさんが最後に「高級ツボ」を奪ったが、それを補うほどの大金を相続した娯楽堂さんが1位。カードの効果が派手なので戦略の立てようもないが、その分先のことは考えず、気軽に楽しむのが正解とみた。