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動物たちの冬支度『クリーチャーコンフォート』日本語版、7月6日発売

アークライトは7月6日、『クリーチャーコンフォート(Creature Comforts)』日本語版を発売する。ゲームデザイン:R.テイラー、イラスト:S.J.C.テニー、1~5人用、8歳以上、60分、6930円(税込)。

オリジナルはキッズ・テーブル・ボードゲーミング社(カナダ)から2022年に発売された作品。動物たちが食料や資材を集めて冬ごもりの準備をするワーカープレイスメント&リソースマネージメントゲーム。

手番にはワーカーをアクションスペースに配置し、ダイスを振る。アクションスペースではワーカーのほかの特定のダイス目の組み合わせが必要で、自分のダイスと場のダイスを組み合わせて食料や資材を手に入れる。足りないものは市場で買い足すこともできる。

必要なセットが揃ったら食料や家具などのアイテムを作成できる。パンとスープ、キルトとロッキングチェアなど、組み合わせると快適度が上がるものも。春、夏、秋の3ラウンドでゲーム終了となり、快適度の合計を競う。

児童絵本の絵も手掛けるショーナ・J.C.テニーによるほのぼのした世界観と、印刷されたかわいらしい木ゴマで森の雰囲気を楽しむことができる。

内容物:ゲーム盤 1枚、渓谷タイル 16枚、快適グッズカード 72枚(カードサイズ 63×88mm)、旅人カード 15枚(カードサイズ 120×80mm)、プレイヤーボード 5枚、ワーカー 20個、コテージ 20個、種族ダイス 10個、河川ダイヤル 1個、丘の上タイル 1枚、生活改善設備カード 34枚(カードサイズ 70mm×70mm)、生活改善設備用マーカー 4個、コイン 20枚、教訓トークン 21個、物語トークン 20個、素材トークン 114個、親マーカー 1個、村ダイス 4個、倍数マーカー 12個、ルール説明書 1冊

creaturecomfort
(写真は英語版)

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東日本大震災とボードゲーム

(月報司法書士2023年4月号掲載)

2011年3月11日の東日本大震災から今年で13年目となり、死者・行方不明者の十三回忌が各地で行われている。この東日本大震災が、実は日本のボードゲームシーンに大きな影響を及ぼしたことはあまり知られていない。ボードゲーム店も被災し、ボードゲームが散乱して売り物にならなくなったものもあったが、数日で大方が復旧した。話はそこから始まる。


地震で散乱した店内(すごろくや)

被災者支援でボードゲーム

被害の状況がようやく明らかになった翌月ごろから、被災地には生活物資だけでなく、避難所でも子どもたちが楽しく過ごせるよう、文房具類、お菓子、絵本、おもちゃなどを届けようという運動が起こった。有志団体やボードゲームカフェが呼びかけてボードゲームが集められ、被災地に寄贈。奥野かるた店(東京・神保町)は被災者を対象に、送料無料で商品の一部を無償提供すると共に、売上の一部を日本赤十字社に義援金として寄付した。また、すごろくや(東京・吉祥寺)は翌年から、宮城県気仙沼市の児童集会所にて無料のボードゲーム教室を数回にわたって開催。被災者同士や、被災者と支援者の心の壁を取り除いた。

災害大国の日本では、地震だけでなく台風や大雨による被害も毎年のように発生しているが、避難所でボードゲームやトランプが活躍する話をよく聞く。東日本大震災以後も、ボードゲームのメーカーはさまざまな災害の被災者にボードゲームを寄付している。

節電ブームでボードゲーム

一方、被災地以外でも外出自粛ムードや原発停止による節電の呼びかけにより、電気を使わず同じ部屋に家族が集まって過ごせるアイテムとしてボードゲームの需要が拡大した。震災後、博品館(東京・銀座)ではボードゲームの売り上げが2〜3倍、タカラトミー社では『人生ゲーム』の出荷が5割増、ボードゲームが遊べる東京おもちゃ美術館(東京・四谷)も来場者が5割増。市場の動きを受けて新聞・テレビ・ラジオがこぞってボードゲームを取り上げるようになり、ブームが全国に波及する。

2020年からのコロナ禍でも同様の現象が起こったが、「三密回避」で人とできるだけ会わない生活が求められたのに対し、2011年の東日本大震災後は「絆」のもと、家族や近所の人が肩を寄せ合って過ごすことが推奨されたのが大きな違いである。このムードは家族だけでなく友人・知人が集まって過ごす習慣を後押しし、5年後のボードゲームカフェ開店ラッシュにつながっていく。

新作急増で新しい趣味へ

このように東日本大震災によってボードゲームの知名度は上昇し、その魅力に取り憑かれて趣味にする人も自然に増えた。ルールの説明と理解という取っ付きにくさがあるため、伝播のスピードはゆっくりだが、着実に広がっていった。

震災後にマスコミで取り上げられ、売り切れが相次いだボードゲームは『ワードバスケット』、『ブロックス』、『ドメモ』、『カタン』、『ぴっぐテン』、『ニムト』、『ねことねずみの大レース』、『ディクシット』、『どうぶつしょうぎ』、『ジャングルスピード』など。小学生ぐらいのお子さんと一緒に遊ぶことができ、早くて数分、長くても20~30分で終わるお手軽なものが中心で、今も販売されているものばかりだ。

東日本大震災前、マスコミでボードゲームが紹介されるときには「懐かしの」という枕詞がついていたが、それも次第に言われなくなった。テレビゲーム世代の若者にとって、ボードゲームは新しい遊びだったのである。そして実際にも、海外ボードゲーム新作の日本語版が2012年から急増する(2010年、2011年の2倍)。多様なニーズに応えられるようになったことも、震災後のボードゲームブームの一因だった。

コミュニケーションのゲーム

ボードゲームは単なる娯楽や暇つぶしというだけでなく、人と人のコミュニケーションを促進し、孤独を解消する効果がある。被災してばらばらになったコミュニティを再結合するとまではいかなくとも、集まって過ごす中で生きる希望を見出した人は少なからずいるのではないだろうか。

ボードゲームはどれも自然にコミュニケーションが生まれるものだが、コミュニケーションを主体にしたボードゲームも数多くある。例えば上記の中で『ディクシット』というフランスのボードゲームは、親が絵に題名をつけて、みんなが出した絵の中から親が出した絵を当てる。題名の出し方は自由だが、わかりやすすぎても、わかりにくすぎてもいけない。どんな題名だったらちょうどよいかはメンバー次第で、正解発表の後の会話も弾む。不思議な絵がたくさん入っていて、想像を膨らましていくうちにセラピー療法のような効果もある。

人とつながりたいという社会的欲求は、マズローの欲求5段階説によれば生理的欲求、安全欲求の次に必要なものとされる。食料や安全な住居が確保されたら、人と会って笑い合える場を作ることが、被災者支援において欠かせない視点である。2月にはトルコ・シリアの大地震で東日本大震災の2倍以上の方が亡くなった。被災者の方々が、人と人とのつながりの力で苦難を乗り越えていくことを願う。