ゲームマーケット2017神戸:モニャイの仮面、ボン・ヴォヤージュ、ガリンペイロ
ゲームマーケットでは、購入やお話もそこそこにして会場内でできるだけ遊ぶようにしている。ゲームマーケット大賞の情報収集という意味もあるが、個人的にも、たくさんの新作が毎日のようにリリースされる昨今、買ってもなかなか遊ぶ機会がなく、積みゲーになってしまいがちだ。また今回は、海外から「新作情報がほしい」というリクエストもあり、より積極的に遊ぶようにした。
試遊卓は1卓ということがほとんどで、前のグループが終わるまで待つことも多いが、ノリのよい関西の方々と遊べたのでとても楽しかった。ルール説明して下さったスタッフの方、ご一緒してくださった皆様、ありがとうございます。
『アニュビスの仮面』に続くスマホを使ったVRゲーム第2弾。専用のアプリをインストールしたスマホを紙製のゴーグルにセットしてスタート。見える風景を言葉で伝え、ほかの人はその情報をもとに、タイルとコマを並べてマップを再現する。プレイヤーが交代するたびにマップ内の位置が変わり、最終的にそれらの情報を組み合わせてひとつの大きなマップを組み立てる。
今回は「ムー公認」ということで海底のモアイ像という独特の世界観を打ち出している。粘土を使って「ラパラパ」という宇宙人を造形し、何体かいる「ラパラパ」が最後にUFOの発着点までたどり着ければ勝利となる。
マップと「ラパラパ」の姿は毎回自動生成され、100万通りぐらいになるという。また「ボードゲームらしさ」を追求し、マップを接続するときにパズルの要素を加え、はい・いいえ限定や擬音語など伝え方に制限を加えたりできるバリアントもある。
まず水上で見える風景を伝え、水中に飛び込んで中の風景を伝える。制限時間があるため、コミュニケーション力が試される。さらに終わってから、記憶を頼りに「ラパラパ」を粘土で作らなければならない。夢中になって遊ぶうちに、この海底神殿に迷い込んだような気分になる。
モニャイの仮面
デザイン・濱田隆史/イラスト・梶川晴香&村瀬都思/ギフトテンインダストリ(2017年)
2~6人用/10歳以上/30~60分/4600円
ライトな航海カードゲーム。自由楽暇がゲームマーケット2012春に発表した500円ゲーム『航海の日々』をリメイクした。『トゥーアンリミテッド』『大どろぼうとズルい騎士』に続くライトゲームだ。
各自船員チップをにぎり、一斉に公開。その後にイベントカードをめくって、1位から順にチップを支払ったり受け取ったりする。基本的には1位は支払いが少なくてすむが、イベントによって1位が損することもあり、どれくらい握るかで悩む。
イベントカードは「寄港」が出るまでめくり続けるので、まだ出ていないカードがだいたい分かり、カウンティングの要素もある。誰かの船員チップがなくなったところでゲーム終了となり、船員チップの一番多い人が勝つ。
追加ルールで効果が派手なイベントカードも加えると、ゲームはよりダイナミックになる。少なくにぎっているとペナルティというイベントなどもあって、「そろそのあのカードが出そう」「いやまだでしょう」などと会話も盛り上がる。
ボン・ヴォヤージュ 天気vs航海士
デザイン&イラスト・空地裕介/COLON ARC(2017年)
2~6人用/8歳以上/15分/1800円
はじめに計画カードを一斉に出して、順番に1枚ずつオープンし、お金やワーカーを補充したり、地位を上げたりする。前の人と同じものを選べないところがポイントで、前の人が何を選びそうかを考えて計画カードを選ばなければならない。
補充が終わったらアクション。地位の高い順にワーカーを置いてアクションを行う。すでに誰かが選んだアクションを実行するにはより多いワーカーが必要だ。
特殊能力を得られる勝利点カードの購入や、次の年に持ち越せる貯金など、さまざまなアクションが用意されているが、メインは金鉱山。ここでは置いたワーカーの数だけ袋から特殊ダイスを引いて振り、出た数の金が得点になる。特殊ダイスは6分の1しか金が出ない白から、半分の確率で金が出る紫まで確率が異なり、ダイスを引いては盛り上がり、振っては盛り上がる。
ワーカーをひたすら金鉱山につぎ込むというギャンブルだけでは長期的には勝てず、勝利点カードの特殊能力もじわじわと効いてくる。細部に至るまで作り込まれたゲーマーズゲームである。
ガリンペイロ
デザイン・増川和人/イラスト・緒方剛志/cosaic(2017年)
3~4人用/12歳以上/45~60分/4500円
つづく
ゲームマーケット2017神戸レポート
会場は昨年と同じ3号館。ブース配置に手狭な感じはなかったが、あちこちに渋滞が発生した
3月12日(日)、神戸国際展示場(兵庫県神戸市中央区)にて、「ゲームマーケット2017神戸」が開催された。関西での開催は6回目で、神戸に移ってからは2回目。ボードゲーム出版社、専門店、同人サークルなど198団体が84タイトルの新作ボードゲームをはじめ、輸入ゲーム、中古ゲーム、書籍、関連グッズなどを出展し、4700名が参加した。
待機列はポートライナーの高架下に形成。ボードゲームへの熱意は寒空をも打ち負かす
限定販売を目指して開場前は1000人以上が待機列を形成。昨年のゲームマーケット神戸と比べれば約1ヶ月遅く、だいぶ春めいてきたとはいえ、朝は10度を下回る。10時の会場と同時に人々が殺到したのは、ボードゲームショップDDTとトリックプレイ。いずれも独自ルートでほかのショップでは見かけない輸入ゲームを扱っている専門店である。同人ゲームよりも先に輸入ゲームを求めるのは、関西開催の特徴と言える。
DDTラボのちむ店長。今回は怪盗のコスプレで登場した。目玉は『呪いのミイラ』中国語版の『キョンシー』
しかし同人・創作ゲームの人気も上々。一般ブースは午後遅くまで人だかりが絶えず、売り切れも多数発生した。ブース前に人が集まっているのでしばらく待たななければならず、予めチェックしていたブースに狙っていかなければ、ぶらっと見てよさそうなものを見つけるということは難しい。
それでも東京開催のゲームマーケットと比べれば出展者数が少ないので、ゆっくりとゲームを見る余裕があった。開場時間は同じ7時間。昨年のゲームマーケット秋は539団体が出展したので、ざっくり比べても2倍以上の時間を1ブースに費やすことができる。「これくらいの規模がちょうどいい」という声を出展者・参加者双方から聞いた。今回、私は試遊に力を入れたが、9タイトルも遊ぶことができた。会場で遊んだゲームについては、別にレポートしたい。
昨年の秋にエッセンかと思うような大規模ブースで出展したオインクゲームズ。ドイツ支社”Oink Games GmbH”を立ち上げ、ヨーロッパ展開を本格化させている。エッセン・シュピールの出展で通訳をしたドイツ人女性が支社長となり、専業で営業活動を行う。来年にはアメリカのジェンコンや、フランスのカンヌ国際ゲーム祭への出展も検討しているという。これまでライセンス契約というかたちで海外に展開してきた日本ゲームに、新しい地平を開く。
今回は新作『スタータップス』を発表。準新作『死ぬまでピラミッド』も好調で、すでに3000部販売したという
会場内では、大阪のボードゲーム専門店「キウイゲームズ」の2号店が4月下旬、新大阪駅近くにオープンするというニュースや、地元三ノ宮のグループSNEが8月、アナログゲーム雑誌『ゲーム・マスタリー』を発刊するというニュースが発表され、話題となっていた。なお関西の社会派ゲームデザイナー、北条投了氏の新作は『オーデンの触祭』と、無料配布の『トランプウォール』である。
昨年に引き続き、今回も前日交流会と当日打ち上げの両方に参加し、地元の方ばかりでなく、九州など遠方の方ともお話できた。そして二次会は両日ともトリックプレイに行き、「豚の鳴き声」の収録など、23時頃までじっくり話し込んだ。昨年から1000人も参加者が増えて「これくらいの規模がちょうどいい」などと言っていられる状況でもなくなってきたが、東京開催では急速に失われつつある「お互いの顔が分かっている感覚」が心地よいイベントだったと思う。
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