秋も深まる11月22日、東京ビッグサイトにてゲームマーケット2015秋が開催された。
まず目立ったのが開場前の大行列。エッセン・シュピールに見られないこの現象は、少部数・限定販売に起因する。10時の開場にも関わらず、朝の4時半頃から待機列ができ、6時過ぎにはもう100人超え。開場時には約3,000人が並んでいたという。
先頭集団に伺うと、1年ぶりの拡張セットとなる『ハートオブクラウン:星天前路』(FLIPFLOPs)、今回出展が少なかった中古ブース、エッセンの新作を持ち込んだゲームストア・バネストやテンデイズゲームズ、10個しか作れなかったという『マトリンゴ』(ノスゲム)などが人気の模様。開場すると、FLIPFLOPsには800人が並び、中古ブースは人の群れができあがり、ゲームストア・バネストやテンデイズゲームズは蛇行する列が出来上がり、ノスゲムは3分で売り切れた。
年々会場は広がり、出展ブース数もどんどん増えている。今回は410団体が出展していたが、開場時間の7時間は変わらない。全部回るならば1ブース1分という計算で、ほぼ不可能である。エッセン・シュピールですら1ブース2分(4日間/910ブース)の計算である。
この過密さのため、来場者が訪れるブースを絞り込まなければならなくなり、試遊卓が立ちづらいどころか、ほとんど人が立ち寄らないブースも目立った。会場が広くて移動が大変だから、予約受取のために駆け回り、知り合いと談笑している暇もない。「以前より参加者の表情が硬い」(冒険企画局・近藤氏)のも、やむを得ないことだろう。ゲームマーケット事務局は、待望の土日2日開催について検討を始めている。
さて今回、第1回ゲームマーケット大賞の発表と授賞式が、12時から会場中央で行われた。過去1年間にゲームマーケットで発表された新作ボードゲームの中から優秀作品5タイトルが選ばれ、その中から大賞が発表されたのである。大勢の観衆が見守る中、ファンファーレと共にベールが外され、『海底探険』(オインクゲームズ)が大賞に選ばれたことが発表された。メディアに大きく取り上げられた『枯山水』は特別賞を受賞。
受賞台には、オインクゲームズの佐々木氏と、このゲームの原案を考えた小学2年のお子さんが立ち、審査員長の草場純氏から賞状とトロフィーを受け取った。なかなか感動的なシーンである。お子さんは次々と面白いアイデアを思い付くそうで、『海底探険』は家に遊びに来た友達ともよく遊んでいるという。サイコロを振ってコマを進めるすごろくタイプで遊びやすい作品であると同時に、どこまで潜って、どこで引き返すかという選択が悩ましい。ゲームマーケット事務局からは大賞ロゴの入ったシールも贈られ、開場では早速箱にシールを貼って販売されていた。大賞作だから買ってみよう、遊んでみようという方も早速訪れたという。
授賞式の会場はその後、優秀作品の体験コーナーになり、閉場までずっとお墨付きのゲームを遊ぶ姿が見られた。特に『海底探険』と『枯山水』は、観戦者も多く集まって賑やかな様子である。もともと注目度の高い作品ではあったが、「ゲームマーケット大賞だから遊んでみよう」という方が多かったのは、審査員冥利に尽きる。
午後1時からは「COLONARC&きんしゃち&Aquaria」合同ブースを間借りして、同人誌『ボードゲームジャーナリスト(笑)が、行く!!』の頒布を行った。当サイトの20年目、「ふうかのボードゲーム日記」の10年目を記念して制作したもので、エッセン・シュピールなどで出会った人たちのインタビュー翻訳が中心である。500円で300部を印刷したが、2時間でほぼ完売。お買い上げ頂いた方、列整理など頒布にご協力頂いた方、ありがとうございました。
その後いくつかのブースを回って、今回のゲームマーケットの感想を聞いたが、「新作だけでなく、ヨドバシなどでも買える定番も売れた」(ホビージャパン・会田氏)、「90分以上のゲームがこれからの課題」(ゲームストアバネスト・中野氏)、「知識はないみたいだが、どんなゲームでも興味をもってくる」(テンデイズゲームズ・田中氏)という声が聞かれた。 ゲームマーケットに参加する時点で、相当ボードゲームに関心が高いわけではあるが、かといってマニアではない中間層が拡大していることを伺わせる。一部のマニアが業界を支える時代から、広い中間層がそれぞれ好きな方向でゲームを楽しむ時代へ。ショップや出版社は新規顧客に向けて、トレンドを読み、それぞれ独自のカラーを打ち出し始めている。