ゲームマーケット以来となる上京。せっかくなのでいろいろ用事を入れてゲーム会も入ったが、ゲーム会にいろいろ用事をくっつけた感も否めない。秋葉原のR&Rステーションでふうかさん、karokuさんと待ち合わせ。昼食を取る時間を惜しんで途中でおにぎりを買っていった。
R&Rステーションの利用料は平日1人250円。アークライトが取り扱うボードゲームを無料で借りて遊ぶことができる。このボードゲームがどんどん増えていて、中にはどういうわけか国内で一般発売されていないゲームも未訳で眠っている。
今日遊んだゲームのヒットはどれもカードゲーム。今の季節、ボードゲームよりもカードゲームがいい。夏バテでこってりした料理が食べられなくなるのと同様、この季節はテーブルにものがぎっしり並ぶのは暑苦しいので(R&Rステーションの冷房は快適だけれども)、カードゲームが楽しいのかもしれない。
ガリバルディ|ワニに乗る?カードゲーム|ドンドラゴン
ガリバルディ(Garibaldi: La Trafila / G.マリ / ネクサス出版, 2007)
イタリアの軍事家ガリバルディは1849年、ナポレオン3世によるローマ陥落後 オーストリア軍に狙われながら妻とともに北のヴェネツィアに逃げる。同胞は途中で捕らえられ、妻も死んでしまうが、何とか生き延びた彼はニューヨークに渡り、後に帰還後はイタリア統一に大きな功績を挙げることになる。
1人がそのガリバルディ役になって逃げ、残りがオーストリア軍になって追いかけるという1対多のゲーム。日本人にはなじみのない歴史だが、美しい絵画が入っているあたり、有名なモチーフなのだろうか。中身は8割方『スコットランドヤード』だが、独特の味付けもある。
ガリバルディは、奥さんと部下と3人で逃げているという設定で悲壮感が漂う。したがってそれを追いかけるオーストリア軍は悪役。コマの移動先を決める相談も、『スコットランドヤード』のように正義感に駆られてではなく、「どうやっていじめてやりましょうか?」という意地の悪い風だ。
さらに、お互いにイベントカードがあって、相手の手札を削ったり、足止めをさせたりできるのだが、オーストリア軍のほうのイベントカードが強力。ガリバルディに手札を全部捨てさせ、全く身動きをとれなくしてしまうこともある。そんなカードを見せあいながら「今度はこれでどうでしょう? イッシッシ」なんて相談をしていると、もとから独りで戦っているガリバルディはさらに心細くなる。よほどのマゾヒストでないと、ガリバルディは務まらない。
ただ、ガリバルディにも利点はある。『スコットランドヤード』と違って、何ラウンドかに1回、居場所を明かさなくてよい。その代わり、直近4ラウンドに止まったマスにオーストリア軍が入ると、そこに「痕跡マーカー」を置かなければならない。オーストリア軍はまずこのマーカーが出る場所を探して、見つかったら、移動経路をもとに現在の居場所を推理することになる。でも、その頃にはずっと遠くに逃げているかもしれない。
ガリバルディはkarokuさんが担当。顔に出やすいタイプだが、場所の推理よりも、次から次へと出されるイベントカードに悶えている。「奥さんが病気で苦しんでいる!」「裏切りがあった!」そのたびにカードを捨てさせられ、思い切った移動ができないkarokuさん。わずか8ラウンドで捕まってしまった。お店にあった記録シートでは最短記録。それでも、「こっちから逃げたんじゃないか」「いや実は戻ってきたんじゃないか」とあれこれ相談しながら、推理の過程が大いに楽しめた。舞台が実際のイタリアの地形になっているのも「こっちの山を越えたか?」「いや川からだ!」というように臨場感があってよい。
ワニに乗る?カードゲーム(Tier auf Tier – Das Kartenspiel / M.ニキシュ / ハバ, 2008)
「○○カードゲーム」というのが、この頃多い。本編のボードゲームのシステムを使って簡略化したものだが、この世界的に不景気な世の中を思うと、それだけ本編のボードゲーム(一般に高価である)が売れなくなっているのかなと思う。『カルカソンヌカードゲーム』とか、もとよりあまり高くないものをカードゲーム化する流れは、どれだけ不況なんだろう。
動物の積み木ゲーム「ワニに乗る?」も、本体はそれほど高価でない。そのカードゲーム版は、ワニの上にカードを崩れないように積み重ねるゲームである。手番には自分のデッキから1枚めくって、子供カードならワニの上に重ね、親カードなら同じ動物の子供カードをワニの上から取る。先に全種類の親子を集めた人の勝ち。
子供カードが上の方にあるなら簡単だが、見えるところになければ指で払いのけて、下から取り出さなくてはならない。カードを落としてしまったら引き取り。子供には無理そうな手先の器用さが問われる。
大人がやれば、わざとカードをぎりぎりのところに重ねて崩れやすくするのは基本。ほとんど落ちそうなくらい下にしなっているカードから、karokuさんが最後の子供カードを取り出して1位。
「○○カードゲーム」は、二番煎じなだけに、本編の面白さがクローズアップされていなければならない。しかしそれはなかなか難しいことである。
ドンドラゴン(Don Drago / A.ヴレーデ、C.カンツラー / ハバ, 2009)
ハバ社は、不況の影響か市場調査の結果かわからないが、このごろカードゲームをいくつか発表している。カードゲームといってもカードだけではなく、ハバ社らしい木のコマが一緒に入ったもの。このゲームもその中の1つだが、読み合いがあって大人でも楽しめる内容になっている。
手番には手札から同じ絵柄のお宝カードを2枚以上出すか、裏にして捨て札にする。同じ種類のお宝をほかの人が出していたら、その枚数を上回るように出さなければならない。上回れば、ほかの人からそのお宝を全部奪うことができる。規定枚数のお宝を自分の前に出したら勝ち。
2枚揃ったらすぐ出すか、あえて出さずに3枚、4枚と集めて奪われないようにしてから出すか。でも集めているうちにほかの人が先に出してしまうかもしれない。これだけでもクニツィアのゲームのようなジレンマがある。
さらに面白いのは捨て札の処理。捨て札はまとめて置かず、山札のそばに別々にしておき、その上にドラゴンを置く。新たに捨て札が出ればドラゴンは移動。こうしてドラゴンは常に、一番最後に捨てられた捨て札の上にいることになる。補充では、山札からだけでなくドラゴンのいない捨て札から取ってもよい。
自分がかつて捨てたものは分かっているはずだから、後からほしいものができたらそこから取るのが確実だが、ほかの人の捨て札も狙い目だ。というのも、捨て札にした理由を考えると、もしかしたら自分が集めているので諦めたという可能性があるからだ。でも、全く未知の山札から引くのも楽しい。自分の捨て札か、ほかの人の捨て札か、山札か。その選択がゲームを悩ましくする。最後に置いた山札はドラゴンがいて取れないというのも見事なスパイスだ。
1ゲーム目はみんな出し惜しみしている間にどんどん出して勝ったが、2ゲーム目はカードが揃わず、また3ゲーム目は揃うたびに奪われて負け。あと一手で勝てそうなところで奪われて終わると悔しい。そんな盛り上がりどころもある、とてもいいゲームである。
ハリーカップ!(Hurry’Cup! / A.ボーザ / ハリケーン, 2008)
ドイツゲームがマンネリ気味の今日、フランスゲームに期待が寄せられている。そこにはドイツにない機知と、日本人にも通じる奥ゆかしさが併存している。近年では『キャッシュ&ガンズ』や『ディクシット』がヒットしており、今度日本語版が出る『スモールワールド』も注目されている。
『ハリーカップ』は、2人用の追いかけっこゲーム『ミスタージャック』を出したハリケーン社の新作カーレースである。ダイスでスピードを決めてヘアピンカーブをすり抜け、ゴールをめざせ!
コースはヘックスタイルを並べて自由に作る。直線はスピード制限がないが、カーブでは制限があり、それを超えるスピードが出てしまったら進めない。でもスピードを出さないと置いていかれるので、時にはリスクを覚悟でつっこまないといけない。
さてそのスピードだが、2つのダイスの合計で決められる。1つは、カップに入れてまとめて振って、早いもの勝ちで取る「燃料ダイス」。もう1つは、自分の手番に振る「アクセルダイス」。どちらも6の目まであり、合計を10倍してスピードを決めるから、スピードの幅は20~120キロということになる。
アクセルダイスは運任せなので、燃料ダイスの選択が勝敗のカギ。例えば制限速度が60キロのS字カーブを通るには、2つのダイスの合計は6までにしないといけないから、燃料ダイスは目の小さいものを取っておいたほうがよい。もっとも、ゲーム中に1回だけ使えるアイテムとして、アクセルダイスを振らなくてよい「ホーン」や、スピード制限を無視できる「ニトロ」などもある。
実際に進む数は、燃料ダイスの分だけでアクセルダイスは考慮されない。カーブが多いところで、目の小さいダイスを選んで確実に進むか、目の大きいダイスで一か八か飛ばすか。早いもの勝ちでダイスを取る中で、一瞬で選択しなければならない。
ほかにも途中に落ちているスターアイテムで、一度使ったアイテムを復活させたり、近道したりできる。ただし、スターアイテムの中には次に1マスしか進めないハズレアイテムもあるから要注意だ。
単独最下位の車は自動的に1マス進めるので、自然とデッドヒートになった。抜きつ抜かれつ、ダンゴ状態で終盤まで来たが、karokuさんがスターアイテムからまさかのハズレを引いて大きく後退。最後はふうかさんが温存したアイテムでぶっちぎった。
一瞬で選んだダイスでレースをするという突飛な発想。これはドイツ人に作れまい。単純に盛り上がった。
ストロー(Straw / R.ジェームス / AEG, 2006)
ラクダの背中に荷物を載せていくカウントアップ系のゲーム。50キロを超えた時点でラクダは「背骨が折れ」てしまう。最後の荷物を載せてバーストさせた人は0点、残りの人は手札が得点。
手札が得点になるということは、できるだけ重い荷物(数字の大きいカード)を温存して、軽い荷物(数字の小さいカード)や空飛ぶじゅうたん(マイナスのカード)を先に出すことになる。でもそういうカードを1枚くらいは残しておかないと、重量制限ぎりぎりのときにしのげない。重い荷物をどこまで手札に温存しておくかの選択が悩ましい。
さらに1枚だけあって、タイトルにもなっている藁(わら=ストロー)カード。重さは1グラムという設定である。重量がちょうど50キロのときにこのカードを出すと、バーストすることはするのだが、このカードでバーストさせた人だけが得点できる。藁をもっているときにチャンスが回ってくるかどうか、あるいはもっていないとき、ほかの人にチャンスを回さないかどうかもカギになる。
ふうかさんが藁カードでバーストさせ単独得点。でも重い荷物で逃げきったkarokuさんがトータルで勝った。私はここぞというときにいいカードが来ず。
カウントアップ系はそれだけで盛り上がるものだが、得点方法からくるハンドマネージメントのジレンマと、ゲームにマッチした絶妙なテーマ設定がよかった。初めて遊ぶメーカーだったが、注目である。
ペッパー(Pepper / M.マリアーニ、T.スピーナー / アウト・オブ・ザ・ボックス, 2005)
アメリカのアウトオブザボックスから出ていたとても小さな缶入りのカードゲーム。キャッチボールをして、自分の手札をなくすことをめざす。
まず手札から1枚を出して、好きな人に渡す。渡された人は同じ色のカードを出すか、別な色なら数字の高いカードを出して、また好きな人へ。そのうち出せない、または出せるけど出したくないことになったら、今まで回ってきたカードを全部手札に引き取る。最後の1枚を出して、誰かが引き取ってくれたら(返せなかったら)勝ち。
序盤から全力で出すのは得策ではない。適度に引き取りながら、数字の大きいカードを探す。数字の大きいカードを最後に1枚もっているとあがりやすいからである。しかしいつまでも出し惜しみしていると、ほかの人に上がられてしまう。カードの構成を探り合う段階から、手札の強さを踏まえた上でがんがん攻める段階への移行のタイミングを見極めることが必要だ。
一度はうまく上がれたが、karokuさんの読みがだんだん鋭くなって勝てなくなった。カードの構成が毎回がらりと変わり、それによって出し方を考えるところが面白い。