まもなく150回を迎える秋葉原水曜日の会では、記念として恒例のランキング戦を実施中で人がたくさん集まり、今日もにぎやかだった。卓が増えれば長時間ゲームと短時間ゲームがほどよく入り混じり、選択の幅も増える。ライトなカードゲームを繰り返し遊ぶもよし、『カタン』や『プエルトリコ』や『アクワイヤ』などの定番にじっくり取り組むもよし。私にとっては未プレイで死蔵されそうなゲーム(といっても1時間以内で終わりそうなものに限定しているが)をどんどん遊べる貴重な場となっている。
スタンダードヤッツィー|スペースウォーク|ヨットレース|フェラート
スタンダードヤッツィー(Standard Yatzee / 作者不明 / ハナヤマ, 2006)
またヤッツィー2回
イエローサブマリン秋葉原RPGショップのプレイスペースの棚には、自由に遊べるゲームが常備されている。メーカーやショップがテストプレイ用に提供しているものである。その数は60タイトルにものぼる。
その中でスタンダードヤッツィーは最も多く遊ばれているようだ。フェルトはいい感じに毛羽立っているし、付属の紙は全部使用済みで、空いているところに記入しながら遊ばなければならない。これだけ遊ばれればゲームも本望というものだろう。
枝豆さんとサシで勝負。交互に振るわけだから待ち時間がほとんどなくてテンションが持続する。ヤッツィー(5つ全部同じ目)を2回出して300点を超え圧勝。
スペースウォーク(Space Walk / R.ドーン / ラベンスバーガー, 1999)
ブラックホールに次々と落ちていく中で自分の宇宙船を生き残らせるゲーム。作者のR.ドーンは『ジェノバの商人』、『ゴア』、『ルイ14世』でコマを1つずつ置きながら移動する「ドーン歩き」というシステムを使っているが、このゲームもそれが基本になっている。伝統ゲームの『マンカラ』に着想を得たのかもしれない。
自分の宇宙船を1つずつボードに配置してスタート。宇宙船は人工惑星なのか、ボード全体を時計回りに進む。自分の番には自分の宇宙船があるマスをひとつ選び、そこにある宇宙船全部を取って進める。取った宇宙船は次のマスに1個、次の次のマスに1個、次の次の次の……というように1つずつ置いていく。途中でブラックホールに落ちた宇宙船はアウト。宇宙の藻屑と消える。
宇宙船には大中小3種類あって、置き方は大→中→小の順番にしなければならない(同じ大きさなら置く人が順番を決める)。点数が高いが動きの遅い大宇宙船がブラックホールを乗り越えられるかが勝負の鍵だ。予め配られるチップがあってピンチを回避できるが数は少ない。最後まで持っていれば得点になるから使わないで見殺しにしたほうがよいこともある。
終了条件はシビアで、誰かの宇宙船が全滅したとき。終盤はチップもなくなって息きれぎれの持久戦だ。誰が幕を引くのか?
チップを節約して宇宙船を減らし、マークをかわした枝豆さんが中宇宙船を数多く残して圧勝。私は序盤からチップで大宇宙船を守ったが最後に残った2隻が次々とブラックホールに落ちて脱落。完全情報公開なので、自分がどういう手を打ったら次はどうなるかがある程度は予想できる。終盤は最善手が見えやすいので単調になりがちだが、それ以外は下家にプレッシャーをかけたり、トップ目をみんなで協力して叩いたりということができるのが楽しかった。
ヨットレース(Maritim / R.ヴィティヒ / フランクコスモス, 1987)
灯台の交点をたどりながら、ブイを一周して戻ってくるレースゲーム。1987年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品で、5年後にブラッツから別名でリメイクされた。合成皮革の大きなボードに大きなコマがフランクコスモスらしい(箱も大きい)。
スタートラインに並んだヨットたち。まずヨットは1回の手番で直進しかできない。次に移動は必ず灯台の交点で終わらなければならない。灯台から出ている光の棒をたどって、2つの灯台からつながっているところが灯台の交点である(写真では緑のヨットが交点にいる)。思わぬ遠くの灯台が利用できることもある。
自分の番には9ポイントを使える。ヨットが進むのは1マス1ポイント、灯台を回転させるのが120度で1ポイント、灯台を移動する(!)のが1マス2ポイント。これを組み合わせてできるだけヨットが進めるようにするのは、パズル感覚のひらめきが必要だ。
コースはブイを回るところが一番難しい。小回りに回らないと手番を費やしてしまい、ほかのヨットに後れをとってしまう。だがそんなに都合よく灯台は使えないわけで、無駄な移動を少なくするためにさらに考えなければならないというわけだ。
大回りしたのは私のヨットである(写真ピンク)。しかもあと1マス少なかったために手数が増えてしまい、結局ビリ。1位はデッドヒートの末、枝豆さんが制した。限られたポイントの中で、盤面を見ながら最善手を探すのは頭を使った。
フェラート(Verrat! / T.クレーマー / ウィニングムーヴズ, 1999)
アラブの街でカードを集めて王座を狙うゲーム。原題「裏切れ!」が示すとおり、唯一の王位を目指す者は皆を裏切らなければならないのだ。
自分の色の大臣3人の行き先をディスクでプロットして一斉公開する。行き先の街でバッティングしなければカードを入手でき、6種類揃うと王位に挑戦できる。
ところが先行すれば当然ねたみを買うのが政治の世界。宮殿に残っている大臣で投票を行い(大臣の椅子によって投票数が決まる)、一番投票の多かった大臣は地下牢送りとなってしまう。恩赦カードで脱出しなければやがて島流しに。
人が減ればカードも集めにくくなるし投票も通らなくなるから、早い段階で大臣を宮殿に残しておきたいところだ。だが宮殿にいれば街でカードを集められない。どこまで集めて、どこで帰ってくるか、そのジレンマが悩ましい。外遊の間に内乱。実際に政治家になった気分になるこのシステムはすばらしい。
6種類のカードを揃えたら、今度は王様お気に入りの席(王の右前)につかなければならない。大臣を座らせておいて6種類集めても即勝利なので、その席が空くことは滅多にないだろう。ただ、1ラウンドが終わるたびに席がひとつずつ右にずれていくことになっている。空いていなければ手前の椅子に座って順番待ち。ここも妙にリアルだ。
序盤はバッティングしまくってカードがなかなか集まらない展開。最初に集めたはんにばるさんや私を地下牢に送り込んだ枝豆さんが一気に攻勢をかける。みんなリーチという緊迫した状態の中、枝豆さんがお気に入りの席を手中に収めて勝利。ルールでは砂時計を使って自由に交渉する時間が設けられているが、交渉しなくてもツーカーでお互いの行動を読み合う心理戦を楽しめた。
ウントチュース(Und Tschüss! / M.ワレス / ゴルトジーバー, 1997)
さっと説明してすぐ遊び始められ、6人まででき、15分とかからないゲームということで時間調整によく遊ばれているようだ。決勝に3回進んで2回勝ったけれども、トータルでは3位。早めに降りて手堅く行く人、強い順番にカードを出して決勝を狙う人など、それぞれの性格がゲームに反映されて面白い。
アクアレット(Aquaretto / M.シャハト / アバクスシュピーレ, 2008)
昨年のドイツ年間ゲーム大賞受賞作『ズーロレット』の水族館版。1枚ずつめくってトラックに載せ、適度なタイミングで引き取って自分のボードに並べるという基本システムは変わらないが、いくつかの改良点が見られる。
『ズーロレット』では檻の大きさが定められており、増えすぎると要らないというつらさがあった(子どもができたのに泣く泣く処分とか)。それが『アクアレット』では水族館の広さを好きなように広げることで、種類や頭数の増加に対応できる。前半に集めていなかった動物が意外と増えてきたときにも対応できるので安心だ。
『ズーロレット』の売店は種類と動物の数で得点にするが、それ以外の用途がないのが一方的だった。『アクアレット』では同じ種類の動物を5匹集めると従業員コマが手に入り、これをマイナスを減らす、魚マークで得点、お金で得点、イルカ・シャチ・アシカのとなりにおいて得点という4種類の使い方ができるようになった。タイル集めがうまくいかなくとも、これで逆転が狙えるかもしれない。勝ち筋の多様化もよい改良点である。
『ズーロレット』より赤ちゃんが可愛くないのが玉に瑕だが、タイル並べにパズルの面白さが加わり、ズーロレットより確実に面白みが増していると思う。『ズーロレット』をすでにもっている人がまた買うべきか否かは微妙なところだが、少なくとも『コロレット』とは距離があって別ゲームという感じはする。
『ズーロレット』と組み合わせて同時に遊ぶ「メガレット」は、一度試してみたい。