前日に帰国したばかりのけがわさんをお迎えして平日の自宅ゲーム会。ゲームマーケットで発売された同人のボードゲームを中心に遊ぶ。コンポーネントを自作しなければならない同人は、カードゲームならある程度手軽に作れてもボードゲームとなると困難がつきまとう。ボードの印刷やコマの調達をコストを抑えつつきれいに仕上げるのはたいへんだし、ルールの調整もより綿密に行わなければならない。さらに発表すれば海外のゲームを遊びこんだフリークの厳しい目にもさらされることになる。それでも近年、同人の域を超えた素晴らしい作品を見かけるようになってきたと思う。焼き直しが多くなってきたドイツゲームと一線を画するようなオリジナリティの高い作品が求められている。
カンパニーメーカー|重力の儀
カンパニーメーカー(Company Maker / 米出康人 / Y-Games, 試作品)
会社を起こし、投資し、乗っ取りあうゲーム。6年前のゲームマーケットで発売した作品をもとに改良が加えられている。
手札から3枚タイルを出すと起業できる。3枚の合計によって会社の場所が決められ、成長路線か合理化路線かを選ぶ。成長路線ならば1大きいタイル、合理化路線なら1小さいタイルを置くと投資したことになり、会社が移動する。移動先に会社があればつぶすか乗っ取るかを選んで駆逐する。こうして最期に残った会社で投資の多い人にボーナスが入り、それに持ち株などの合計で点数の多い人の勝ち。
いくつかの会社が成長したり縮小したりしながらボード上を移動していくのがポイントで、お互いつぶされないような駆け引きを生むことになる。私は起業できるタイルが揃わなかったので、投資に力を入れてほかの人が起業した会社を奪う路線を取った。だが最期まで生き残った会社のボーナスでけがわさんの勝ち。まだこれから改良していくそうだが、競争と協力が同時進行する中に駆け引きがあるよいゲームだ。
重力の儀(The Ritual of Gravity / 沢田大樹 / B2Fゲームズ, 2008)
記憶と勘で石を7つ、重い順に並べていくゲーム。B2Fゲームズがゲームマーケットで20個だけ限定販売してすぐ完売したが、ルールが公開されているので気になった人はぜひ遊んでみることをおすすめしたい。コンポーネントはホームセンターや100円ショップなどを回れば手に入るものばかりだ。
はじめに9つの石を適当に取ってスタート。ほかの人の取った石が有利すぎると思えば交換してもよい。あとは1ラウンドに場から1つずつ石を取り、手持ちの石を1つ出して重さで競りをする。全員が石を出した後に重さを量り、重い石を出した人から好きな石が取れるのだ。なんて斬新なルール!
競り落とした石は手前に、重いと思う順番に並べる。このとき前に競り落とした石を持って重さを比べてはいけない。前に置いた石と石の間に入ると思えば、触れないように石を使ってずらすこと。一方競りに使って計量した石は場に戻す。ここがポイントで、次第にどの石が何グラムだったか明らかになっているというわけだ。それを形とともに覚えておかなければならない。
こうして8つ石を競り落とした後に、残った競り用の石をどこかに入れて完成する。そして確認の計量を開始。左から順に1つずつ、捨てるか重さをはかるか決める。前にはかった石より重ければOK、軽ければ前の石も一緒に捨てなければならない。これを繰り返して最後に石が一番多い人の勝ち。運動会のマリ入れで1つずつボールを出していくようなスリルがある。
軽い石は見かけで分かるが、丸い石ほど分かりにくい。同じ重さならセーフなので、結構多かった24グラムの石を集めることにした。ところが同じくらい数の多かった25グラムの石も間違って取ってしまい、後半はメチャクチャ。結局4つで最下位だった。優勝は1~2グラム差で緻密に並べたかゆかゆさん。
ただの記憶ゲームだったらこんなに盛り上がらないだろう。石のかたちと重さが微妙に対応しているところが手がかりにもなるしワナにもなる。石の重さを1グラム単位で見極めようとしている行為自体が儀式的で新鮮だった。
シチリアの殖民(Colonization in Sicily / 川崎晋 / カワサキファクトリー, 2008)
法案を出し、投票して実行しながらシチリア島を開拓していくゲーム。このたび英語版が発売される『カルタゴの貿易商』に続く、カワサキファクトリーの本格的なボードゲームである。
はじめに立候補するかしないかを順番に表明したら、立候補者は法案カードを出す。誰が出したかを隠す特製のスリーブに入れて混ぜ、投票にかける。立候補しなかった人は誰が出したか分からない法案を見て、自分が実行したいものに投票。自分の法案に投票してもらった人はボーナスとしてお金をもらうか、お金を払ってその法案を実行できる。投票してもらえなかった人は地団駄を踏むのみ。
法案にはシチリア島に家を置く入植、家を取って得点にする開拓、開拓でできた都市にいろんな効果をもった建物を置く建設、お金、特権カードがあり、どれがほしいかはプレイヤーの状況によって異なる。立候補した人は、どの法案を出せば投票してもらえるか需要をよく読んで出す必要がある。
最後は開拓で獲得した得点に投票チップや建物のボーナスを加えて得点の高い人が勝ち。積極的に立候補しても、あまり立候補せず投票ばかりでも、どちらにも勝ち筋がある。
立候補すれば効率よく投票チップを集め、投票すれば確実に入植と開拓を繰り返したかゆかゆさんがぶっちぎり。私は序盤に無理をして宮殿を建て、法案が通れば入るお金が増える能力を身につけたが、需要を読み切れなかったり、そもそもいい法案カードが来なかったり、ここぞというところでダミープレイヤー(4人の場合1人入る)に邪魔されたりして最下位。法案を選びに選んで投票してもらうときも、反対に投票するときも駆け引きがあり、お互いに心中を読んで行動するところがすごく面白い。幾分強力な効果をもった特権カードなど古典的な手法も含まれているが、心理戦を含んだ駆け引きはドイツやアメリカでも高い評価を集めている要素でもあり、このゲームが世界の最先端をいくゲームだと信じて疑わない。
でえく(Deeku / 田邉顕一 / 高天原, 2008)
江戸時代初期を舞台に各地に大工さんを集めてお城を建てるボードゲーム。高天原は昨年の引き続き2年目のゲームマーケット出展だが今回のコンポーネントはすばらしい。エンボス生地に縁を和紙であしらったすばらしいボードに木製コマ、厚みのあるタイルと申し分ない。
手番には大工を各地で雇ったり、雇った大工を移動したりしていく。1年(4ラウンド)の終わりに収入があり、各地にいる大工が収入源になる。街に2人以上大工がいて、その街の最多数ならば城の建設ができる。これで得点を上げるのだが、お金もいるし大工も1人失うので後回しにしたいところ。ところがその間にほかの人に最多数を取られてお城を奪われてしまうかもしれない。どこまで収入源でき、どのタイミングでお城にできるかが考えどころだ。
序盤から早めにお城を建て、競争も制することができた私だったが、皆の来ないお城に効率的に配置したかゆかゆさんが終盤に猛烈に追い上げてトップ。お金が少なくて倹約を余儀なくされるので、短期間に一気に事を運ぶことはできない。ほかの人の動きを見ながら長期的な戦略で地道に進めていくゲームである。
千夜一夜異譚より「王宮建設」(One Thousand and One Nights / bone5 / 骨折ゲームズ, 2008)
毎年話題を集める骨折ゲームズ。同じゲームで7つのゲームが楽しめるゲームアンソロジーから、ボードを使う唯一のゲームをプレイした。
ランダムに並んだ中央の資材を、競りで買って色別に建設現場に置く。このとき自分のコマと一部を置き換える。こうして各建設現場がいっぱいになったとき、コマの多い人が資材の数だけ得点を得る。
資材を増やせば得点が高いが、その分自分のコマが置けなくなるのでほかの人が後からもっと多くコマを置いてかっさらうかもしれない。かといって自分のコマばかり並べていたら資材が減って得点が減る。うまいジレンマである。
後半は塔が立つにつれて完成時の得点も高くなる。また現場監督を置けば塔のボーナスが手に入るようにもなる。こうして高得点のエリアは競争も激しくなる。それよりも得点の低いエリアでコツコツ稼いだほうが得かもしれない。
競りの方法はだんだん値段が下がっていくオランダ式。パスするたびに1金もらえるので、パスするにしてもどこで抜けるかよく考えなければならない。次の人が競り落としたらどの資材を取ってどういう結果になるのか、そこまで予測すれば、あえて高くても競り落としておくという選択肢も出る。競り落としたら連続で並んでいる3個の資材を選んで取る。このしばりがいい。
布石に置いておいたコマを利用する機会がなかなか見つけられず、ほかの人はさらに多くコマを置いて得点をもっていくという展開。あまり大事でないところで突っ込んだりして、うまりそうなエリアがあるときに競り落とせなかった。それぞれのエリアの状況と持ち金を見ながらの競りが駆け引きに富んでいて面白い。