秋葉原イエローサブマリンRPGショップで行われた第49回水曜日の会に参加。もうすぐ50回となり、常連さんもすっかり顔なじみになった感がある。お互いの性格が分かる中で遊ぶのはより楽しいけれども、初心者を特に意識した会だし、初心者でなくても初めて参加する人もいるので、そういう人が引いてしまうような内輪受け的な盛り上がりには気をつけている。おそらくこれは、オープンとクロースのジレンマという、サークルが抱えがちな問題なのだろう。新しい人にもどんどん参加してほしいし、前から参加している人とは親睦を深めたい。だがその両立はバランスを取るのがなかなか難しいようだ。
毎回20人を超える賑わいに押されてか、水曜日の会の参加者を対象に「リラックマ・ビバ!だらだらゲーム」の体験スペースが毎回開かれ、今回はさらに「ウォーハンマー」の体験卓まで出現した。ウォーハンマーはフィギュアに色を塗らないと遊べないのかと思っていたけれども、そのままで遊んでもよいとあればお気楽ボードゲーム層への敷居も高くない。水曜日の会はドイツゲームが遊ばれることが最も多いが、これからジャンルが広がっていくのだろうか。来週、50回記念。
指輪物語・決闘|グラディエーター|メトロポリス
指輪物語・決闘(Der Herr der Ringe – Das Duell / P.ノイゲバウアー / コスモス(リオグランデゲームズ), 2002)
『指輪物語』で最も劇的なシーンのひとつであるモリア洞窟でのガンダルフとバルログの決闘を描いた2人用ボードゲーム。指輪物語2人ゲームではクニツィアも軍人将棋風の「決断」を出しており紛らわしいが、箱を開けてみればを見れば一目で分かるだろう。
モリアの火の海にかけられた石橋をガンダルフとバルログが反対側から渡ってくる。4回の戦闘の後により高いところにいた方が勝ちだ。この橋は雰囲気を出すための道具立てということで。
戦闘では自分のデッキから9枚引き、その中から6枚を使って3枚残す。これを3回繰り返すと、各戦闘で3枚ずつ残したカードが9枚になる。これを使って最後の戦闘だ。最後の戦闘は力が尽きるまで戦うので、強いカードは残しておきたい。しかし途中の戦闘も手抜きできない。ほどよいジレンマがある。
このほかに何枚かのカードに特殊効果があり、前に出したカードを再利用できたり、相手の手札を公開させたりできる。ドイツゲームらしく、勝負を一気に片付けるような強い特殊効果はなく、タイミングを間違えば全く役に立たないものもあって駆け引きに華を添えている。
くさのまさんがガンダルフで私がバルログ。最初の3戦は僅差で終わり勝負は均衡したが、最後の戦闘が熱かった。特殊能力を封じるカードを出したくさのまさんに、一旦別の特殊能力を封じさせておいて、さらに次の特殊能力を畳み掛ける。これで強力なカードを2回使うことができ、バルログの勝利!(後味悪いけど)
複雑な処理がなくさくさくと遊べるのに、カードの出しどころ、残しどころに駆け引きの醍醐味を感じられた。橋の上のコマはちょっとアブストラクトに過ぎるし、カードのイラストも地味だが、それは暗い洞窟で怪物とおじいさんが戦っているんだから仕方ないか。
グラディエーター(Kampf der Gladiatoren / R.クニツィア / HiG, 2002)
コロシアムで剣闘士たちがダイスを使って死闘を繰り広げるゲーム。クニツィア&ハンスという注目カードがダイスゲームだったので別の意味で衝撃的だった(このカードは翌年アメンラー、翌々年バベルの塔を生む)。
ダイスゲームといっても、そこにはクニツィアらしい仕掛けがある。4人1チームで編成される部隊、その組み合わせは槍使い、網使い、剣士、二又使い、盾使いと5種類から自由に作ることができる。槍使いは先手を取り、網使いは相手の戦力を下げ、剣士は攻撃力を上げ、二又使いはダイスを振り直し、盾使いは防御力を上げる。どの組み合わせが最強ということはない。敵対する相手の部隊の構成によって、強くもなれば弱くもなる。
例えば剣士4人だけで編成された強力部隊。触れるダイスは5個と強力だが、その隣りに同じ剣士4人の部隊があって先手を取られたら防御手段がないからボコボコ。位置的に後手になりそうならば槍使いがほしい。
そして忘れてならないのはコロシアムに放たれた猛獣。ゲーム中これをやっつけてもポイントになるが、自軍が全滅して脱落した人は、この猛獣を使って人間狩りをしていられるのだ。やられた分やり返しながら派手に戦って戦場に散り、後は強い猛獣で手負いの部隊を狙えば勝つチャンスはある。
タナカマさん、くさのまさんと3人でプレイ。どんな部隊でも一戦交えて1人2人減り始めると、後方から狙われる弱肉強食がこのゲームの基本である。すさんだゲームになるかというと、そこはプレイヤー次第でなかなか盛り上がった。タナカマさんの剣士2、盾使い2という攻守共にバランスの取れた部隊が強かった。網使いで剣士を封じつつ倒すまで時間がかかっている間に、タナカマさんは猛獣狩りも忘れない。くさのまさんが最初に全滅、猛獣で人間狩りを始めるがダイスに恵まれず。タナカマさん優勢だったが、最後まで残った私が僅差で差した。ダイスゲーム全般に言えることだが一振り一振りにワイワイ盛り上がるのが面白く楽しむコツなのだ。
メトロポリス(Metropolis / S.サクソン / ラベンスバーガー, 1984)
今でも熱狂的なファンがいるホテル売買ゲーム「アクワイア」の初版から22年後、同じ作者によって作られた作品。ラベンスバーガーなのでおそらく販売部数は多かったと思うが、発売後また22年が経ち、レアゲームの部類に入っている。
ボードには10番地から89番地まで80の土地があり、10ずつ区画に分けられている。。初期配置でランダムに土地をもらった後、4枚の場札から1つを選んで土地を広げていく。区画ごとに5つまでは自由に土地を取れるが、6つ目からは隣りの土地をもっている人しか取得できない(取れる土地がなければプレゼントしなければならない)。
土地が広がったら広さに応じて好きな建物を建てる。1マスの「家」から6マスの「デパート」まで8種類。公園沿いにある家やアパート、川沿いの工場、中央にある市庁舎など、立地によって得点が上がる。さらに、店や学校は同じ区画に家やアパートが建てば建つほど、病院やデパートは空き地が広ければ広いほど点数が上がっていく。工場は工場同士なら点数が高いが、家やアパートなどの点数を下げてしまう。
例えば工場と同じ区画にあるアパートは2点だが、学校とお店の両方がある区画ならば18点にもなる。こうしたリアルで複雑な得点状況は一目では把握しづらいが、得点表で示されているから混乱しない。
これだけでは単なる引き運のゲームになってしまうところだが、ここに交渉がある。お互いの要らない土地を交換し合うのが基本。でもよい土地を取って交換材料にするという手もあるし、4マスと6マスの大型建物は共同で建てて得点を分け合うこともできる。交渉は手番外にも自由に行ってよいことになっており、基本的に自由だが、相互に利益がなければ成立しないのでそれほど頻繁に発生せず、重くはない。今回は得点状況がよく把握できない中でのプレイだったが、慣れてくればよりシビアな交渉になるのかもしれない。
はじめにタナカマさんが中央の病院を建てるが、ここにプラティニさんが市庁舎を建てて空き地をつぶしてしまう。一方のくさのまさんの病院は郊外にあり、空き地十分で高得点になった。プラティニさんは市庁舎を中央に2つ建て、さらに河辺の区画で工場の隣りにさらに工場を建てて高得点を連発。1位になった。私は学校、アパート、お店、家と小さい建物でこまめに得点したが及ばず。
交渉といっても、何点かの土地候補の交換だからあまり長引かず、最後の得点計算が面倒なことを除けば終始すっきりした展開になった。勝てなかったけれども、できあがった都市を眺めていると満足感がある。都市建設のゲームっていいですね。
ホリデイAG(Holiday AG / W.クラマー / F.X.シュミット, 1990)
アウフアクセの大賞受賞などで湧いた直後に発売されたクラマーのボードゲーム。AGは株式会社(Aktiengesellschaft)のことで、「アーゲー」と読む。1975年にASSから発売された「大当たり(Coup)」というゲームのリメイクで、旅行会社の株を買いつつツアーを売って、ツアーの売れ行きによって株の配当を得るというテーマが乗せられた。ASS版は資金が3000マルクで、チップを買うのに100マルク払い、1回で4つまで買えたが、このお金をなくし、毎回2つずつ無料でチップを獲得するというシンプルなルールになっている。
5種類の旅行会社には1~20番までのツアーがあり、手札からカードを出して対応する箇所にトランクを置いていく。その前に、どこの会社でもいいから2枚、株を取得する。これを繰り返して、どこかの会社のトランクが10件以上連続してつながったらゲーム終了。それぞれの会社で、一番長くつながっているトランクが、その会社の価値となる。会社の価値×持ち株で一番点数の高い人が勝ち。
持ち株は2~3件に絞り、株を取っていない会社はカードを手札に止めて連続を作らせないというのが基本。それに他の人がどの会社の株を持っているか=どの会社を伸ばしたいかを見ながら、駆け引きをしていくことになる。10件以上つなげてゲームを終了させた人にはボーナスがあるから、協力関係にあったとしても後出しにしたい。いろいろな思惑が絡んで、手札の選択が悩ましい。
今回は熱帯旅行(黄色)の人気がなく、株を手放す人が出る中、最後にタナカマさんが黄色の株を買って一挙につないで大逆転。残りは僅差だったので、この最後の手番がものを言った。テーマはあまりマッチしているように感じなかったが、システム自体が七ならべを立体的にしたような深みが合って感心した。ルールが簡単なので、また気軽にやれそうだ。