趣味が高じると、「自分の中で盛り上がる」という現象が起きる。近場で遊ぶだけでは飽き足らず、遠くまで足を伸ばして更なる刺激を求めるのだ。それでついドイツのエッセンまで行ってしまう人だって少なくない。私が弘前までゲームを遊びに行ったのもそういう「盛り上がり」があった。
弘前在住の健部さんは神話・ファンタジーを専門とするフリーランスの作家さん。こんな作品(アマゾン)を発表している。ボードゲームでも翻訳に携わっており、あの「カタンの開拓者たち」トライソフト版のルールを手がけた人物でもある。多岐にわたる活動はご本人のホームページにて。
お知り合いになったのは昨年の秋から始めたミクシィ。その後お正月の山形ボードゲームコンベンションや、秋葉原水曜日の会でたびたびお会いすることになった。健部さんが特に力を入れているのがトリックテイキングというジャンル。スカートというトランプゲームが盛んなドイツでは数多くの種類のトリックテイキングゲームが発売されているが、日本では敷居が高いせいかあまり評価されていない。流通も少なく、入手難のゲームが多い。ミクシィのコミュニティ「トリックテイク」を読んでいるうちに健部さんのコレクションを遊びたくなり、遊びに行ってもいいですかとお伺いを立てるとOKの返事が。思い立ったらすぐ行動である。
山形から弘前までは全部バス。長井6:30発の山形行きで山形市まで1時間、降りたところから仙台行きが出ていてさらに1時間。広瀬通で降りて10分ほど歩き、宮城交通高速バス案内所から弘前行きで4時間20分。待ち時間を入れると往復15時間の道中である。雪解けの山々を眺めながらぼーっと過ごした。弘前バスターミナルまでお迎えにきていただいて帰宅後すぐゲーム、食事と入浴をはさんで翌朝まで。奥様とお嬢さんが参加した。遊んだゲームはトリックテイキングを8つに、子どもゲーム・2人ゲームを入れて14タイトル。珍しいゲームを遊べた喜びと、健部さん一家の暖かさに触れることのできる喜びとで、とても楽しい1泊2日となった。
※レポートでは、トリックテイキングの用語を説明なしで使っております。詳しくはメビウスの説明などを参照下さい。
イスパニョーラ
イスパニョーラ(Hispaniola / M.シャハト / プロルード, 2004)
海賊をテーマにしたトリックテイキング。トリックを取るたびに、そのリードカラーの船に自分の海賊コマを置き、ディールが終わったときに船に残っている海賊が得点になる。船が満員になると、新しい海賊が来たとき前にいた人は島流し!こちらも最後まで残っているとマイナスになってしまう。したがって何色でリードするか、何色のとき切り札を出すかといったスートまで意識して臨まなければならない。
もうひとつ、獲得したトリックは、最後まで持っていると一番多い人がマイナスになってしまう。トリックを取るたびに隣の人に押し付けられるが、当然後で押し付け返されることもあるわけで、後半まで持っていて最後にドーンとプレゼントするか、ちびちび片付けていくかも判断のしどころとなる。
ちなみに切り札は手札から1枚ずつ出して一番数字の多いカードの色になる。しかしそのカードはもう使えなくなるので、手札のマネージメントも考えなくてはならない。
序盤に置いた海賊はほとんど島流しになり、終盤になるほど得点が高くなるので、最初から取りに行かない微妙な力加減も要求されて、面白いゲームになっている。さらに何ディールかするので、相手の得点状況に応じた戦いも面白い。トップ目は皆から叩かれるので、差が開きにくくなる。
最初の3ディールで突っ走った私が3人から総叩きにあい、代わって浮上したほのかちゃんが1位。トリックを取って、カードを押し付けたり、相手の船を島流しにしたりするのが快感。シャハトらしい、ジレンマも随所にちりばめられている。
ワイルドパイレーツ(Wild Pirates / 作者不明 / ラベンスバーガー, 2005)
こちらも海賊をテーマにしたトリックテイキング。ナイスプライスシリーズということで、ボードゲームなのに2000円という価格はお得感がある。リードカラーに関係なく、獲得したトリックだけコマを進める双六。途中のマスには+3(3マス進む)、-2(2マス戻る)、←(遠回りせよ)などがあるから、そういうマスに入るよう(入らないよう)、何トリック取ったらいいのかまで考えてプレイしなければならない。
さらに、他の人のコマがいるマスに入ると、そのコマを錨のマークまで戻すことができる。ゴール間際はイカリのマークがなく、踏まれたらたいへんだ。それでも海賊たちは、宝島を目指して進み続ける。
ほのかちゃんがトップ目だったが、健部さんに踏まれてゴール目前で後退、容赦しないお父さん。私も後を追いかけたが間に合わずそのまま健部さんが1等賞となった。トリックテイキングの中では軽いプレイ感で、初めて遊ぶ方にオススメ。
山3(3トリック以上取らないと脱出できない)と海3(3トリック以下でないと脱出できない)は、ルールでは止まった人だけが従うことになっているが、通過したら全員従うというルールにすると、もう少し手ごたえがあるゲームになるそうだ(ゴール前ではちょうど3トリックでないと上がれなくなる)。
キジのお嬢さん(Schicki Micki / J.ゼメ / ツォッホ, 2003)
パーティに出かけるキジのお嬢さんの衣装をコーディネートするパターン認識ゲーム。カードを1枚ずつめくり、同じパーツが同じ色だったらそのパーツを一番最初に見つけて言った人の勝ち。でも2箇所同じ色のパーツがあったら、先に青いコマを取った人の勝ち。さらに全部のパーツが同じ色だったら先に赤いコマを取った人の勝ち。さらに、稀に虫を2匹連れてくるキジのお嬢さんがいる。このときは一番最初に机をノックした人の勝ち。この4種類の行動を素早く選択するのは至難の業で、ただ絵をあわせるだけでなく、何箇所合っているかまで考慮にいれないといけないのだ。
右の写真では、何をしたらよいかわかるだろうか?……そう、黄色の虫と紫色の帽子が同じなので、青いコマを取る。わかりますかー?
「慣れですよ」という健部さんが1位。2位はほのかちゃん。本気でやって惨敗した私だったが、マテウスのイラストのおかげで癒された。セットのような知能テスト感もないし、エレメンタルズのようにグロテスクでもない。お子様にも安心。
闘球盤(Tokyuban / 作者不明 / ?)
両サイドからコマを弾きいれて、最後に盤上に残っていれば得点になるという、ちょっとカーリングを想起させるようなゲーム。欧米でキャロムと並んで人気が高いクロキノールというゲームの日本版である。
中央の30点圏内には釘が打たれており、この中に入れるには正確なショットが要求される。この中に入っている相手コマを弾き飛ばすにはさらに角度が正確でなければならない。
中央まではわずか30センチである上に、盤がつるつるしているので、ほんの小さな力でもコマはスーッと飛んでいく。力を入れすぎると場外になってしまうため、角度もさることながら力加減がとても難しい。
ばしばし打って場外になったほのかちゃんを尻目に、慎重なプレイで大人勝ち(写真・私が赤)。お互いに技術をある程度つけたら、相手に飛ばされないところに自分のコマを配したり、自分のコマでガードして50点を狙いにいったりともっと戦略的な戦いになるだろう。ただ、これだけ大きいボードを広げながら、中央の円だけで戦うのがもったいない気がした。
テケリ・リ(Tekeli-li / 佐藤敏樹 / ボードゲームのおもちゃ箱, 2005)
国産同人ゲームとは思えないシステムとコンポーネントのクオリティの高さ。海外にも紹介したくなるトリックテイキングゲームだ。エッセンで売りたい。
ほとんどのカードは取るとマイナスになるので、ゲームはミゼール(いつもの反対)になる。トリックを取ってしまう数字の強いカードの処理に困り、マイナスの大きい6などは取らせるよう仕向ける。こういうマイナスの押し付け合いは、それだけで楽しいのだが、このゲームはそれだけに留まらない。
各色で一番強い8と、次に強い7は、同じカードがもう1枚ある。これでバッティングさせると、互いにキャンセルしあって次に強いカードがトリックを取ることになるのだ。だから同じカードを出してくれる人がいるのに賭けて、あえて8からリードなんてこともありえる。もう1枚もっている人は、キャンセルして他の人に被害を及ぼしてもいいし、あえてマイナスのカードを出して押し付ける手もある。この辺の機微は、トリックテイキングの新境地ではなかろうか。
さらに数字が低いカードに、2枚集めるとプラスに好転するカードもある。これはぜひともほしいのだが、数字が低いだけに集めるのはなかなか難しく、成功したときの嬉しさったらない。序盤から押し付けられまくって血を吐いた私はビリ、被害を最小限に食い止め続けたほのかちゃんが勝った。テーマになっているクトゥルフ神話のことはぜんぜん知らないのだが、それに関係なく楽しめた。
小さなオバケ(Das kleine Gespenst / K.ハファーカンプ / コスモス, 2005)
昨年のドイツ年間子どもゲーム大賞。原作が復刊されており、これを読んでゲームに臨んだ。読んでいると読んでいないとでは、このゲームの味わいがまるで違うと思う。
時計を回すと絵柄がでてくる。その絵柄を、オバケの鍵で扉を開けて探す。当たっていればさらに次の絵柄にチャレンジ。最初はあてずっぽだが、そのうち何がどこにあるか分かってくるだろう。記憶ゲームだ。全問正解すると、その時点で優勝になる。
次いでチャレンジ成功した数だけ、ボールを穴に入れるチャレンジ。箱のふたに穴の開いたボードをはめて、その上でビー玉を転がし、10数える間に穴に入ったビー玉を返すことができる。こちらはアクションゲーム。手持ちのビー玉が全部なくなったら優勝になる。
ビー玉を入れる方は、ビー玉のスピードを殺すことが重要。これで健部さんはどんどんビー玉をなくしていく。私はごろごろ転がってばかりで全然入れられなかったが、絵合わせ全問正解を果たして勝った。1つの本をベースに、2つのゲームを自然な流れでつなぎ合わせたところが、このゲームの機軸と言えよう。
キャニオン(Canyon / F.ヘルシャー / アバクス, 1997)
獲得したトリックだけ船を進めてゴールを目指すカード&ボードゲーム。1ディールに獲得できるトリックを予想して、予想が当たればボーナスでさらに進むことができる。ディールの枚数は毎回変わっていき、予想が困難に。1枚だけ配られて、何トリック取れそうですか?なんて。
終盤は、予想ボーナスでしか進めない。ここからがこのゲームの本番だ。あと3歩でゴールだからといって、欲張って予想トリック数を増やすと罠が待っている。ここではボートが滝に向かって流されるので、いつまでも当たらないと滝つぼに落ちてしまうのだ。落ちたボートは少し前からやり直し。
序盤快調に進んでいたのに、ゴールを急ぎすぎて手札を見ずに大胆予想。それがことごとく外れて滝つぼに落ちたのであった。そのうちに遅れてやってきたほのかちゃんにも抜かれた。1位健部さん。
ゲーム全体としては平坦な印象。拡張「グランドキャニオン」では手札を交換したり、フォローしなくてもよかったり、ボーナスがもらえなくても進めたりと、特殊能力が入っており、もう少し賑やかになるのかもしれない。
パラドックス(Paradox / A.ランドルフ / ピアトニク, 2001)
ランドルフのカードゲーム集。2~4人で遊ぶことができ、人数によって別のルールが入っている。このうち2人用がトリックテイキングだ。お互い対面にダミープレイヤーを置き、チームを組む。配られたカードは全て公開。赤の2をもっている人から始める。
マストフォローの切り札なしで、普通にトリックテイキングをする。ダミープレイヤーが何を出すかは同じチームのプレイヤーが決めてよい。チームごとに獲得したトリックの数字の合計で勝負する。
問題は、1トリックごとに20点が引かれてしまうこと。つまり、4枚の合計が20点を超えていないトリックは減点になってしまう。そこで、自分のチームが取ったらいいのか、相手のチームに取らせたらいいのかを見極めながらリードしなければない。なにしろカードは完全公開。自分のチームが取れないと分かったらどんどん低い数字を出してくるに決まっているのだ。
序盤は選択肢が多いのであまり苦しくないが、スートが切れる後半になると難しくなる。達人ならば2,3トリック先まで読んでいくのだろうが、そこまでの余裕はなかった。負け。
巾着切り+魔術ゲーム(Beutelschneider+Gaukelspiel / M.ズィーンホルツ / ハーレキン, 1997/98)
酒場に集まった人々がお金を奪い合うトリックテイキングゲーム。メーカーのハーレキンというのは「クリムズのガラクタ箱(KKKK)」の前身で、ズィーンホルツの個人メーカーとして始まったらしい。昨年発表された「クリムズテップの建築士」は、このゲームのシステムに基づいている。
各スート弱い順に、1~4金、物乞い、ウェイトレス、マスター、10金、商人という構成になっている。小銭を争うならばマスターが最強だが、マスターは10金に負け、その10金は商人だけが取れる。この上位に、切り札スートというのがあり、番兵から領主までいて、商人にも勝つことができる(領主も暗殺者に負けるので最強ではない)。でも商人の代わりに1人だけ入っているスリ(巾着切り)には要注意。これをつかまされると、最後に20金失うことになるのだ。
ちょっと込み入っているが、お金を狙って人が集まってきていると考えればすんなり頭に入る。お金が出なければいくら領主が出てきても上がりなし。もちろん手札にお金のある人が、そうやすやすと渡すはずがない。
さらに拡張では、獲得したお金を鉛に代えてしまう錬金術師、カードを再利用できる幻術師、ババ抜きでトリックテイキングをさせる魔術師など、あっと驚く多彩な展開が楽しめる。テーマ付けによって、ゲーム中の会話も笑えた。
ファーファリア(Farfalia / D.カーバー / ダヴィンチ, 2004)
チームで博物標本を集めるというテーマのトリックテイキングゲーム。イタリアのダビンチから発売されているが、もとはアメリカのゲームらしい。
ゲームは予め指定された標本を、1ディール中にできるだけたくさん集めるのが目標だ。種類は集めれば集めるほど高得点になっていく。1トリック取るたびに、トリックの中から好きな札を1枚ずつしか獲得できないため、切り札の色が何枚も指定されているとつらい。
集めたカードの得点は、チームの両プレイヤーに入る。だからチームで協力していくことが大切だ。ただし相談は禁止。自分が取れそうになければ、相手の手札に期待してほしいカードを放出するという手もある。2:2:1のチームを組む5人で遊ぶのが面白いらしいが、2:1の3人でも十分いける。ダミープレイヤーをどれぐらいうまく利用できるかが鍵だ。
魚を3枚も集めるというタスクがあって、そこがなかなか集められず盛り上がった。5人でも遊んでみたい。
ジャンボ(Jambo / R.ドーン / コスモス, 2004)
2人専用ゲームとしては珍しくアラカルト・ドイツカードゲーム大賞を取った作品。そのほかドイツ年間ゲーム大賞ノミネート、ドイツゲーム賞8位も取っており、昨年のベストカードゲームといえる。作者のR.ドーンはこれとゴア、ルイ14世で、急速に人気を集めてきた。
ルールはほとんどなく、カードに書かれたテキストをメインに進行するという、ドイツゲームには珍しいタイプのゲームだ。慣れていなければカードのテキストを読むのに時間がかかるが、その分インストはほとんどないので敷居は高くないと思われる。
品物を仕入れて、組み合わせを変えて売る。売るの買うのも基本は3枚一組。例えば毛皮―毛皮―塩、パイナップル―パイナップル―布と仕入れて、毛皮―パイナップル―塩という組み合わせで売る。仕入れ値と売値の差額で少しずつ稼いでいくというわけだ。これが基本。
さらに、手札を増やしたり、品物を別口で手に入れたり、相手の邪魔をしたりする特殊カードがワンサカとある。ただし、その効果は何枚かのカードを除いてさほど強力ではない。塵も積もれば山となるで、少しずつ力を蓄えていく。この辺がアメリカのカードテキストゲームとは違うドイツらしいところだろう。
序盤に棚を増やした健部さんが大量仕入れ大量販売路線で勝ち。私は序盤に使えないカードばかりが来て出遅れたまま終わった。動物をけしかけて相手の戦力を削いだりできるものの、総じてソロプレイ感が強いという印象だった。
テュロス(Tyrus / L.エスコフィエール、D.フランク / オイロゲームズ, 2004)
オイロゲームズのデカルト出版が買収される直前に発売した2人用ゲーム。兵士、商人、神官(グー、チョキ、パー)の3種類に数字が割り振られたコマを使用する。選挙場所が決まったら、コマを3つ置いてオープン。選挙場所が城砦なら、兵士の数で勝敗を決めるが、このとき商人がいると兵士を買収し、神官がいると商人を殺す。商人と神官の処理をした後で、兵士が多い方の勝ち。ほかの選挙場所も同じようにして勝敗をつける。選挙で3タテにするか、より多く勝てば勝利。
コマは当該の選挙場所でないところにおいてもよい。これによって勝負を捨てて次の選挙場所にかけるという手もある。またコマは使い切りなのでカウンティングも重要。というよりもカウンティング以外に相手の出方を読む手がかりがない。何回も遊んでいれば癖がわかるのかもしれない。
1回目は戦力温存作戦で行ったら健部さんが全力投球してきて初回から3タテ。2回目はいいところまで行ったが、終盤息が切れたところで再び3タテ。3枚で健部さんの5枚を破ったところは見せ所だったが、それ以外はいいところなしだった。
アトラス&ゼウス(Atlas & Zeus / B.カタラ / オイロゲームズ, 2004)
沈むアトランティス大陸で繰り広げられるサバイバル。同じく終わり間際のデカルト出版から発売された。こちらは「キャメロットを覆う影」で今世間を沸かせているカタラの作品だ。
相手を攻撃するいろいろなカードをプロットして、両者一斉に公開。処理していく。戦力が上回っている全ての島で相手を倒す「カニ男」、隣の島に打ち込んで強敵も倒す「モリ」、火山を噴火させてそこにいる人を全滅させる「火山」など、瞬殺系が目立つ。島は順番に1枚ずつ沈んでいくが、その前に派手な殴り合いが起こったので、島がほとんど沈まないうちに決着がついてしまった。先手をうって攻め込み、付け入る隙を与えなかった私の勝利。
それにしても強固に武装した屈強な男たちなのに、やられるのがあっけなさすぎ。人の世の無常を感じさせられる。
ペテン卵(Mogelei / M.キースリング / 1×1. 1995)
ゲームの概要を読んで、健部さんとこれはトリックテイキングなのかと話していたが、遊んでみてウソトリックテイクだということに決定。
作者のキースリングは、クラマーとのコンビ作で大賞作を連発しているが、年表を見ると1999年のティカル以前には、受賞などハナから考えていないようなヘンテコ作品ばかりだった。とりわけ彼の処女作となるこのゲームは、頭がどうかしているんじゃないかと訝りたくなる。
4スートのマストフォローだが、スタートプレイヤーはリードカラーを口で言い、カードは全員裏向きにして出す。ちゃんとフォローしていて、潔白を証明したかったらこれを表にする。ここでフォローできなかった人と、フォローしているのにウソをついている人はめくらない。「ごめんなさい、フォローできませんでした」なんて、涼しい顔で。
めくった人が親となって、めくっていない人のうち怪しそうな人物にダウトをかける。「おいおい、こんな序盤からフォローできなかったなんてウソだろう?」ダウトがかかったらめくって、本当はフォローしていたなんてことになったら全員のカードを引き取らないといけない(本当にフォローしていなかったらダウトをかけた人が引き取る)。カードに描いてある割れ卵の数だけマイナス。ウソをついたのに、ダウトをかけられなかったら卵カードをもらってプラス点。ばれない限り、ウソをついたほうが得なのだ。
親は、ダウトをかける代わりにプレイの続行を宣言することもできる。また別のスートを言って、全員1枚ずつ出し、潔白を証明したい人がめくって……この繰り返し。続行すると、マイナス札も増えるから緊張感が増す。ゲームが進むにつれて、すでに出たカードのカウンティングもできるからただのブラフゲームではない。
大場をしのいで健部さん夫妻に押し付けることができ、勝った。自分以外の全員がめくらなかったときの不信感、めくらないで通すときの緊張感、相手のウソを見抜くために顔色を伺うときの顔の引きつり……自分はブラフゲームが大好きなんだなあと、つくづく思う。