インドゲーム事情

筆者は2003年9月からインドに留学することになりました。人口10億人、「最後の大国」と言われるインドのゲーム事情をレポートします。

キャロム(Carrom)

キャロム お弾きを使って自分の色のコマを相手よりも早く四隅のポケット(穴)に落とすゲーム。インドといえばキャロム、キャロムといえばインドというくらい、インドの代表的な遊びで、キャロムとクリケットを知らないインド人はまずいないそうです。
ビリヤードのナインボールと似て、自分のコマを落とせばもう1回、落とせなければ相手の番というふうに交互にやっていきますが、自分のサイドからしか打てません。そのため難しい角度にあるコマを落とすには、壁の反射をうまく使ったりするなど筋をより深く考えなければならなくなります。また、クイーンという赤いコマを途中で落とさなければなりません。これは落とした方が、最後にボーナスをもらえます。自分のコマだけでなく、クイーンの位置を常に把握し、チャンスがあれば落とすようにしなければなりません。どこで狙うかも考える要素です。
とはいえ頼みになるのは指先のテクニック。正しい角度と力加減が大事で、修練が必要です。ポケットの寸前にあるコマにあまり強く当ててしまうと、ポケットに落ちないで跳ね返ってしまったり、反対に弱すぎて届かなかったりと、一筋縄ではいきません。また、人差し指と中指を使って手前のポケットに落とす「シザースショット(ハサミ打ち)」という技も難しいです。
木製の台が1000円ぐらい。コインと呼ばれるコマのセットが最高級で250円くらい、ストライカーと呼ばれるコマが25円。コマのすべりをよくするパウダー(澱粉らしい)を撒くと、驚くほどコマがすべるようになります。巷には、子供用のプラスチック製が80円くらいで売られています。

パチーシ(Pachisi)

 インドで有名な古典的すごろくゲーム。パチーシは「25」という意味です。アメリカの会社が19世紀末に欧米に紹介し、広く知られるようになりました。イギリスではルード(Ludo)と呼ばれ、その名称がインドに逆輸入されてインドでも「リュード」などと呼ばれています。現地語ではチョーパル(Chupar)といいます。日本でも、ルート・ゲームとか飛行機ゲームという名称で販売されていたことがあるそうですが、現在では時々プレイスペース広島に輸入物が入荷する程度になっています。
基本的なルールは、ダイスを振って自分のコマを進め、ボードを1周して元のところに帰すというのもので、他の人のコマがあるマスに止まるとそれを振り出しに戻すことができます(ザップゼラップで使われているルール)。
デリーの国立博物館で展示されていた写真の品はダイスが直方体で3つ。目は1,2,5,6です。コマは4×4色。ダイスもコマも象牙製で細密画が描かれており、ボードはグジャラート模様の刺繍という超豪華版。当然こんなものは売っていません。

参考:ベストゲームカタログ(松田道弘著・社会思想社)

 

チャトランガ(Caturanga)

 チェスや将棋の起源とされているゲーム。チャトランガは4つの部隊という意味で、戦車・騎兵・象・歩兵という古代インドの軍隊編成を模しています。一説では、戦争好きな王様の闘争心を紛らわせるために、バラモンが考え出したという話も。歴史的経緯などはこちらチェス・スクラップブック)。今は遊ばれていない模様です。
写真はデリーの国立博物館に展示してあったもので、彩色の象牙コマはたいへん美しいです。部隊は4つもないようなので、もしかしたらチャトランガの変形なのかもしれません。前線にいる歩兵は顔が牛になっています。
一方、チェスは盛況。街の本屋には詰めチェスの本などがよく売られており、また全国青少年チェス大会などが行われています。現在のチェスの世界チャンピョンはインド人のV. Krammikという人で、インドでも有名人だとのこと。

蛇とハシゴ(Snake and Ladders)

ボード上を蛇やハシゴの指示で行ったりきたりしながら上がりを目指す100マスのスゴロク。ハシゴはずっと上まで進むことができ、蛇は下に戻らなければいけません。ちょうどの数でゴール。ゴールの直前に蛇がいたりして曲者です。
街のおもちゃやでよく売っていました。圧巻はベッドシーツになっているボード。店主は子供用だと言っていましたが、この上に寝るのはちょっと…。

ショックウェーブ版

その他

ハズブロー系のファンスクールというところをはじめとして、デパートではアメリカゲームを売っています。売っているのを目撃したのはスコットランドヤード、バトルシップ、ピクショナリー、スクラブル、クルー、モノポリー、ウノなど。ヒンディー語のルールも付いていますが、本体は英語。インドの物価が安いお陰で1000円前後で買うことができます。