技術も人材も回さない
米ソの宇宙開発競争時代に、人工衛星、有人宇宙船、軌道ステーションなどのさまざまなプロジェクトを達成するリソースマネージメント&セットコレクションゲーム。使ったリソースが隣のプレイヤーに流れるクローズドエコノミーシステムがインタラクションを生み出す。
中央の場にはさまざまな人材カードとプロジェクトタイルが並んでいる。手番には場札から人材カードを取って予約するか、コストを支払って手札か場札から人材カードを自分の前に配置する。コストは最初から持っている研究チップのほかに、手札の人材カードを手放すことにより、ジョーカーとして使える。
研究チップを支払うと、左隣のプレイヤーに移動し、次の手番で使えるようになる。研究チップの総数はゲームを通して一定であり、後から追加されることがない。このクローズドエコノミー(閉鎖経済)システムによって、相手の出方次第で自分の出せるカードが変わってくる。棚ぼたで降ってきた研究チップで出せることもあれば、前の人がなかなか放出せず計画変更を余儀なくされることもある。
人材カードは自分の前に5カテゴリー(エンジニアリング、検査、研究、組立、宇宙飛行)に分けて配置するが、累積すればするほど、そのカテゴリーに配置する人材カードのコストが削減される。また、各カテゴリーで一番手前にある人材カードはスキルを使うことができ、その中にコスト削減されるものもある。こうしてカードが増えるに従って、よりコストの高いカードを配置できるようになっていく。
人材カードも得点になるが、重要なのは人材カードによるプロジェクトの達成である。各プロジェクトタイルには達成に必要な人材とカテゴリーが指示されており、その分だけ集めれば達成して高得点が得られる。ほかの人に先を越されないよう、また次のプロジェクト達成につながるよう考えて狙うプロジェクトを選びたい。また、その間にほかの人がリーチをかけていないか注意しよう。誰かが12人の人材カードを置くか、プロジェクトが全て達成されるとゲーム終了。プロジェクト、人材の得点に加えて、人材カードの条件を満たしていればボーナスもある。
研究チップは天下の周りものだと思っていたが、「安い人材は無料で配置できる」という能力で研究チップを節約したプレイヤーがチップを流さず、苦しい展開となった。同じカテゴリーの人材を増やしてばかりでは、複数カテゴリーで集めることが必要になるプロジェクト達成にも乗り遅れてしまう。なるほど、クローズドエコノミーでは貯め込んだ人が強いのだ。そのことに気づいたときにはすでに敗色が漂っていた。
技術・人材の囲い込みと、お互いそうしているゆえに起こる技術・人材の不足こそ、宇宙開発競争の大きな特徴だったのかもしれない。ウィンウィンはなく、勝つか負けるかの容赦ない戦い。それがロシア製のこのゲームのテーマなのかもしれない。ルール説明書にはこう書いてある。「このマニュアルは国家機密に当たります。取り扱いには十分注意すること。」
Space Explorers
ゲームデザイン・Y.ズラビリオフ/イラスト・A.コット
25センチュリーゲームズ(ロシア, 2017)+リゴレ(2021)
2~4人用/12歳以上/20~40分