山形ボードゲームコンベンション 06/01/07-08
60年ぶりとかいう大雪の中、4年目となる新春ゲーム会が山形県長井市の桜湯別館で行われた。参加者は最多の13名。遠い順に滋賀から奥山さん夫妻、青森からたけるべさん夫妻、東京からかゆかゆさん、仙台から遊友会の神尾さん・光の翼さん・QTAさん、庄内からnagaさん・Stさん、天童からYBgCのmuraさん、山形から上野さん、そして私。午後2時頃からぼちぼち始められ、一番長い人で翌朝の6時まで16時間。
もっともmuraさんは午後ずっと料理していたし、夕食はのんびり談笑していたし、翌朝つくばに発つ神尾さんは1時頃お休みになったのでガツガツと遊んでいるわけではない。卓分けはいつも通りトランプを引いて決めたが(今回はカーマスートラ・トランプ登場)、卓のメンバーによって軽いゲームをどんどん回すもよし、重いゲームを長時間遊ぶもよし、ほかの卓に遠慮せず好きなゲームを遊べたと思う。
次回の合宿は8月の予定。
タブラの狼|カイヴァイ
タブラの狼(Lupus in Tabula / G.デロッシ / ダヴィンチ出版, 2002)
寡黙な人、雄弁な人、論理の人、直感の人……
初対面の方もいたので名前覚えをかねて人狼。内容はこちら。最近はネット人狼というのが流行っているそうで、新しいボードゲーム層を呼び込むひとつの入口となっている。
神尾さんがゲームマスター。ゲームマスターがうっかりするとゲームが壊れるので大事な仕事だ。私はふつうの村人だった。経験豊富な仙台勢が論理的に世論を形成。かゆかゆさんがぐるじゃないかという疑いをかけてみたが、全体に世論に流されていく。結局仙台勢もかゆかゆさんも村人で、この世論が当たっていた。ボディガードのおかげで占い師が公然と予言したのに殺されず、狼は不利になっていく。多少の犠牲者を出したものの、投票行動から狼と狂信者が推理されて人間側の勝利。
狼は何と奥山さん夫妻だった。旦那さんが手掛かりが薄いうちに早々と殺されたので、内心リベンジを誓った奥さんだったが、終盤に狂信者のmuraさんと共に葬られた。muraさんはノーマークの人物ばかり投票していて狂信者ぶりを発揮していたが、もしかしたら村人でもそうだったかもしれない。
このゲームは推理派と直感派のせめぎ合いが面白い。人はいつも合理的な行動を取るとは限らない。裏をかくという意図なく推理派を裏切る直感派がいてこのゲームは人間臭くなる。名前だけでなく、性格の一端までお互いに覚えてもらえたようだ。
カイヴァイ(Kaivai / H.&A.オシュターターク / プフィフィカスシュピーレ, 2005)
1000年以上前のポリネシア。海に浮かぶ村を広げながら名声を高める戦略ゲーム。一昨年「西部の無法者」と「ハッツファッツ」というカードゲームを出したプフィフィカス・シュピーレが、エッセン出展2年目にして取り組んだ大作ボードゲームである。作りこみの細やかさといい、コンポーネントの美しさといい、メジャーなメーカーに勝るとも劣らない出来だ。
手番はビッドで決めるニューイングランド方式。点数の低い人から1~10の番号のいずれかを選んでいく。番号が高いほどコストが上がるが、手番が先にできて移動力も上がる。番号が一番低い人は補給を受けられるようになっている。盤面を見ながら、今自分がしたいことは何か、そしてそれが可能なのかを考えながらビッドしたい。
手番が決まったら、番号の高い人から6つのアクションのうち1つずつ実行する。基本的な流れは村に家を建てて、魚を釣って、それを売って、売ってもらった魚でお祭をして、売り上げでまた家を建てて……の繰り返し。このほかに船で遠出する、移動力を上げるというアクションがある。各アクションは初めて実行するならば無料だが、誰かがすでに実行したアクションをまた実行するには影響チップというのを支払わなければならない。だから先手番が有利なのだ。
何周かするうちに全員が影響チップを支払えない、支払いたくないという理由でこれ以上アクションをしないことにしたらラウンド終了。ここで面白いことに手持ちのお金の価値が下がり、魚が腐っていく。古代のポリネシアではお金も魚も新鮮なうちに使わないと価値がなくなってしまうのだ。
これを10ラウンドしたら、最終決算をする。盤上にはいくつかの村があり、村ごとに影響力の1番大きい人が村の大きさに応じて得点を得る。影響力はその村に建てている家、停泊している船、そして手持ちの影響チップで決める。大きい村など、終盤には船が集まってきて攻防が激しい。
序盤にかゆかゆさんがリードするが、船が1艘しかなかったことから苦戦。ほかの人に相乗りして島を広げるStさん、小さな島に分散する私、両方を抑えながら力をセーブする光の翼さんがあとを追う。家ももっと建てたい、魚を売ってもっとお金がほしい、したいことはいっぱいあるのに、影響チップが足りなくてちょっとずつしかできないのが苦しくも楽しい。最後の得点計算まで気が抜けない展開で、光の翼さんが終盤貯めた影響チップで大きな島を制して1位。
できることが多いので考える時間も伸びる。運の要素は魚釣りのダイスしかないので、ほかの人の手を見て決めることも多い。終わってみたらインスト込みで3時間が経過していた。でも、村の中での陣取り、村と村の間の陣取り、カツカツな資金のやりくりなど、ドイツゲームらしい楽しみどころが満載。昨年のエッセンで発売されたゲームでは、ケイラスと並んで完成度の高いゲームだと思う。
古代(Antike / M.ゲルズ / エッガートシュピーレ, 2005)
地中海沿岸を中心に、ギリシャ、エジプト、アラビアなどが勢力を争うボードゲーム。昨年のエッセンで発売され、『フェアプレイ』誌の人気調査で9位になっている。
こういうゲームは複雑だろうという先入観があったが、やることは実にシンプル。大理石、金、鉄の3種類の資源を集めて神殿、特殊能力、軍隊、街の4種類を作る。軍隊を移動して敵陣を攻撃したら同じ数だけコマを打ち消しあって勝敗を決める。初の特殊能力、敵の神殿破壊1回、神殿3つ、街5つ、海域7つで1勝利点になり、規定点に達したら勝利だ。
面白いのは資源を取る、神殿を作るなどのアクションがルーレット状のマスになっており、自分のコマを回して選ぶことだ。これによって同じアクションは続けて行いにくくなっている。各国ともある程度はバランスの取れた成長になるだろう。
盤面はけっこう広いので序盤は自分の領土を広げたり、領土に神殿を建てたりして国を育てる。そのうち広がりきれなくなったら戦争だ。攻め込まれそうなところは予め防備を固めておこう。でも四方八方が敵だから、国防のマネージメントも難しい。
中央でどこからでも攻め込まれてきそうな小国だったかゆかゆさんが、周りが領土を広げることに夢中になっている間ひとり国力の増強に努め、隣国エジプトにあったStさんの神殿を次々と破壊して1位。中盤までは1手番5秒ぐらいで進行し同時プレイかと思えるほどだったが、盤面がいっぱいになった終盤、戦争を見越した軍備をするようになってからは途端に戦略性がアップ。もとより運の要素は全くないので考え始めるとかなり重い。
誰でもある程度までは点数がいくが、神殿を破壊しないと勝利できないぐらいになっている。鍵は盤面がいっぱいになる少し前の中盤の打ち方にありそうだ。
ピサ(Pisa / G.ブルクハルト / アードルング, 1999)
切り札の色、トリックの数、強い数をはじめに投票で決めてから始めるトリックテイキングゲーム。ブルクハルトのカードゲームはほかのデザイナーにない独特の魅力がある。今はとても楽しめるようになったが、トリックテイキングのトの字も知らないドイツゲーム始めたての頃、このゲームや「シュティッヒルン」のあまりの難しさにたじろいだ記憶がある。3人用トランプ「スカート」をよく遊ぶドイツ人と違って、日本人にトリックテイキングは敷居が高い。
切り札の色は第1(どの色にでも勝つもの)、第2(第1には負けるがほかの2色には勝つ)があり、まず手札の色を見ながらどの色が切り札だったらいいのか考えて投票する。投票は手札からカードを裏向きで出し、合計数の一番多かったものが採用される。
次の投票はトリックの数。つまり多くトリックを取ったら勝ちという通常のトリックテイキングか、反対に少なくトリックを取ったら勝ちというミゼールかを決める。そして最後に高い数字ほど強いのか、低い数字ほど強いのかを投票。だんだんややこしくなってきた。
ここで投票に使ったカードを合計し、一番少なかった人から得点が入る。自分の手札の都合でルールを決めるといっても、つぎ込みすぎてはここで点数がもらえない。最小の労力で最大の効果を。
そして投票で使ったカードから3枚だけ捨てる。ここで持っていると不利になるカードをうまく調整するのだ。一色をなくすとか、弱い(強い)カードを捨てるとか、いろいろな戦略があるだろう。写真は第1切り札が赤、第2が黄色、トリックの少ない人が勝ちで、0が1番強い。つまり赤のカード、数字の低いカードはトリックを取ってしまいやすいので処分したいところなのだ。もう脳が傾いてくる……。
トリックはマストフォローで普通に。結果によってまた得点を記録し、次のラウンドの投票から始める。人数分やって得点の多い人が勝ち。
さすがは熟練のゲーマーぞろいで、皆すぐに要領をつかんで厳しい手を打ってくる。上の写真のルールで上野さんが泣く泣く赤の0を出したときには笑いが起きるほどだった。取らない人が勝ちというミゼールが特に盛り上がる。
魔法使いの夜(Die Nacht der Magier / J.P.シュリーマン、K.ベッカー作 / ドライマギア,2005)
ドライマギアが昨年のエッセンで発表した暗闇で遊ぶゲーム。暗闇で遊ぶゲームというと本物の火を使った「森の影」が有名だが、このゲームは発光性のコマを使用している。光を十分に当てたら電灯のスイッチオフ。
台状の盤面には中央に魔法の火があり、周りに魔法の鍋が並び、さらに木のコマがびっちり並んでいる。目的は魔法使いコマを端から押し入れて、魔法の火をどかしながら自分の魔法の鍋を中央に入れること。
押せば台の上から何かコマが落ちるのは必定。落ちたら手番終了で次の魔法使いの番になる。暗闇で見えないコマを落とさないようにするには、盤面のコマがどんな風に動いているのかをだいたい想像しながら魔法使いを入れなくてはならない。これが難しくも面白い。
1回目は奥山さんの奥さんが成功、2回目はかゆかゆさん。こういうのは慎重な性格の人が有利だ。魔法使いをがむしゃらに突進させるのでは、コマがすぐ落ちてしまう。子どもでも楽しめ、その幻想的な風景が強く印象に残るゲームである。もっとも、あまりに夜遅いとゲーム中寝てしまいそうだが。
カタンの漁師たち(Die Fischer von Catan / K.トイバー / シュピールボックス, 2005)
昨年のエッセンあたりに発売されたボードゲーム情報誌『シュピールボックス』の付録で、基本カタンにつける拡張セット。付録といっても、きちんとした厚さのタイルとチップが入っている。
漁場タイルは海岸に置く。タイルには数字が書いてあって、そこに開拓地や都市があればその目が出るたびに釣りをすることができる。裏になったチップを取ると、1~3匹の魚が。魚が貯まるとお店のスタンプよろしく、いろんなことができる。
- 2匹…盗賊を砂漠に戻す(資源カードは奪えない)
- 3匹…誰から1枚資源カードを引く
- 4匹…ストックから好きな資源を1枚取る
- 5匹…すぐに街道を1本引く
- 7匹…発展カードを1枚取る
魚のメリットは、手札制限にも数えず盗賊にも奪われないことだ。好きなだけ貯めて、後で一気に使うことができる。釣る楽しみ、貯める楽しみ、使う楽しみ。
このほかにボロ長靴があって、これは自分より同点以上の人に押し付ける。もっている人は勝つために10点ではなく11点必要となってしまう。これの押し付け合いがけん制となって、誰かだけ突出しないようになった。これはいいアイデアだ。
8の漁場を取った奥山さんががんがん釣って一歩リード。ものすごい量の魚が入ってウハウハだ。これを6の漁場をもつ奥さんが追いかける。そのうちこの2人が最大交易路合戦を始めた。奥山さん、魚5匹でどんどん街道を伸ばす。魚臭い街道。私は赤の数字がなかったものの、5がたくさん出たおかげで発展カードを引き、最大騎士力の体制を整えた。幸い騎士を公開する人がおらず、長靴を押し付けられないまま騎士を公開して勝利。5が出まくるのに9が出ないという不運に見舞われたQTAさんは、漁場からも遠く不完全燃焼。
勝っても負けても、釣りは楽しかったようだ。