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ドイツ年間ゲーム大賞2023ノミネート作品を比較する

ドイツ年間ゲーム大賞2023の発表と授賞式が、本日18時(日本時間25時)に行われる。今年はたまたま発表前にノミネート3作品を遊ぶことができたので、発表前にそれぞれの特徴を比較し、受賞可能性を考察する。

まずはここ5年の受賞傾向から。

2018年 大賞:アズール ノミネート:ルクソール、ザ・マインド
2019年 大賞:ジャストワン ノミネート:ラマ、ワーワード
2020年 大賞:ピクチャーズ ノミネート:マイシティ、ノヴァルナ
2021年 大賞:ミクロマクロ:クライムシティ ノミネート:ロビンフッドの冒険、ゾンビティーンズ:進化の鼓動
2022年 大賞:カスカディア ノミネート:スカウト、トップテン

基本的にユーロ枠、パーティー枠、ライト枠があり、そのうちユーロ枠かパーティー枠が受賞していることがわかる。どちらが受賞するかは、個別タイトルの出来栄え次第といってよい。ライト枠で受賞したのは2013年の『花火』しかない(しかもこの年にはもう1点、ライト枠の『クウィックス』がノミネートされている)。ドイツ年間ゲーム大賞はロゴ使用料で運営されているため、単価の安いライト枠は選ばれにくいという噂もある。

2023年のノミネート作品をこの枠に当てはめると、『ドーフロマンティック・ボードゲーム(以下ドーフロマンティック※)』がユーロ枠、『ファンファクト』がパーティー枠、『ネクストステーション・ロンドン』がライト枠ということになる。これまでの傾向から言えば『ドーフロマンティック』か『ファンファクト』が有力ということになる。

次に、ドイツのボードゲーム雑誌『シュピールボックス』の評価を見る。ドイツ年間ゲーム大賞の審査員11名のうち3名が関係者であり、同誌での評価が高ければ、受賞可能性も上がる。

ドーフロマンティック 平均8.4点/評者8人
ファンファクト 平均7.2点/評者9人
ネクストステーション・ロンドン 平均7.6点/評者11人

『ドーフロマンティック』がずば抜けており(平均評価で年間3位)、ユーロ枠・大箱・高評価の3本揃いで最も大賞に近いといえる。

最後に、3作品をプレイした感想であるが、リプレイ性の高さにおいて『カスカディア』『アズール』をしのぐ。初回プレイは最低限のコンポーネントでプレイするため、特にゲーマーにはピンとこない。協力ゲームに起こりがちな奉行問題も野放しであり、1人用ゲームをみんなで遊んでいるという印象を受ける。

これがゲームが終わるたびに新しい要素がアンロックされてくると、様相が変わる。タイル枚数も得点パターンも増えて1人では見落としが起こりやすくなるのだ。多くの目で盤面を見渡し、今後出てくる可能性のあるタイルを検討し、得点パターンの両立も考えてタイルを置く場所を決める。奉行行為にも自ずと限度が出てきて、みんな一緒に夢中になる感覚を味わえる。

『ネクストステーション・ロンドン』はフリップ&ライトゲームに起こりがちな「みんな似たような感じになる可能性」を、別々の色で路線を引くことで回避する。『ファンファクト』は、プレイヤーに「ちょっとした自己開示をさせる」ことでお互いの性格を知り合う機会を作る。それぞれにノミネートされるだけの特徴はあり、日本語版の発売が期待される。

TGiWレビュー:ドーフロマンティックファンファクトネクストステーション・ロンドン

※Dorfromantikはドイツ語なので「ドルフロマンティク」と表記するべきところだが、英語読みで「ドーフロマンティック」という表記も行われている。テンデイズゲームズからの日本語版は英語読みで発売されるようだ。

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トレイルズ(Trails)

アメリカの国立公園を行ったり来たりしながらリソースを集めてバッジを獲得するゲーム。ゲームが進むにつれて景色は夜となり、より多くのリソースが獲得できるようになるが、それはゲーム終了が近づいているということでもある。高い評価を得た『パークス』の続編で、プレイ時間は短くなっているものの、さまざまな得点パターンによって濃いプレイ体験が得られる。

コースには7枚のタイルが並べられ、プレイヤーの半分は始点から、残り半分は終点からスタートする。手番には自分のハイカーをを1~2マス進めて、止まったところでリソース(石、葉っぱ、どんぐり)を獲得したり、交換したり、写真カードを取ったりする。クマがいるマスに止まるとダイスを振って、出たマスのアクションを行う。確実にほしいリソースがあるときクマには行きたくないが、ほしいリソースが遠くにあるときはワンチャンある。

こうしてリソースを集めて始点または終点に着くと、バッジカードに書かれたリソースを支払ってバッジ(得点)をもらえる。バッジは公開されている2枚と手札の1枚があり、うまくやれば全部一気に獲得することもできる。公開されているバッジは、他の人に取られると集めているリソースの計画が狂うので、ここぞというときには何マスでも進める水筒を使おう。

バッジは種類が豊富で、必要なリソースが違うだけでなく、リソースや写真がもらえるもの、獲得時にほかのバッジアイコンでコストが下がるもの、バッジアイコンで得点が変わるもの、純粋に高得点になるものなどがある。コンボができると気持ちいい。

終点(始点)にたどり着いたら方向転換して次の手番から始点(終点)を目指す。こうしてハイカーは行ったり来たりしながらバッジを集めていく。また、もうひとつの得点源として途中で獲得できる写真と、写真やバッジなどにたまについている小鳥アイコンの最多ボーナスがある。

ゲームは誰かが終点に着く度に太陽が始点に向かって移動し、最後まで行ったら終了。太陽が通り過ぎたタイルは裏返って夜になり、より多くのリソースが手に入るようになる。ゲームが終わるまでにラストスパートをかけたい。

バッジの早取り競争と、そのための計画的なセットコレクションで、特に最後はゲームが終わるまでにバッジを取れるかというスリルもあり、しっかりと楽しめる作品である。

Trails
ゲームデザイン:H.オードゥボン/イラスト:49パークスプリントシリーズ
キーマスターゲームズ(2021年)
2~4人用/10歳以上/40分

CMONジャパン:TRAILS