シュピール2日目の夜、「『カタン』の同時プレイ人数」でギネスに挑戦するイベントが行われ、1170人の参加で世界新記録を達成した。
ドイツゲームの代表格である『カタン』はこれまで何度か同時プレイ人数の世界記録更新が行われており、2005年にドイツ・ケムニッツで816人、2013年にアメリカ・インディアナポリスで922人、2017年にオランダ・ロッテルダムで1096人を記録している。
『カタン』発売30周年となる今年、コスモス社はシュピール’25の期間中に8年ぶりの記録更新を企画。メッセ・エッセンの隣にあるグルーガホールが会場で、1日あたり55000人というシュピールの参加者を当て込んだ。参加費はグッズ入りの限定バッグ付きで15ユーロ。

17時からの入場で、始まったのは19時過ぎ。それまでの2時間、記念撮影や看板への書き込み、食事やおしゃべりをして過ごす。筆者の周りに座ったのは、ドイツ人カップルと、アメリカ在住のドイツ人・台湾人夫婦、聴覚障がい者のグループとサポーターだった。台湾人の奥さんが社交的で、あれこれとしゃべっているうちに打ち解けていく。
18時からホールに入り、係員の案内に従って席についた。テーブルにはすでにゲームボードが初期配置まで完了した状態でセットされている。一瞬「イカゲーム」(韓国のドラマ)を思い出してしまったが、勝敗の関係ないイベントなので気楽なものである。
今回は『カタンコネクト』という多人数プレイ版が用意された。通常の『カタン』とルールが異なる。始まる前にルール説明があり、ゲーム中もいったん中断して確認していた。
- 長机に長いシートを拡げ、向かい合って座る。片側が太陽サイド、もう片側が月サイド
- 各自のエリアが11スペースあり、初期配置は開拓地2つと都市1つ
- 太陽サイドと月サイドで交互に手番を行う
- 中央のスクリーンにダイスの出目が表示され、30秒以内に資源獲得・交換・建設を行う
- 資源交換は向かい・両隣・斜め両隣の5人が相手。ただし机の端に座ったプレイヤーは共通ストックと1対1交換できる
- 短時間で交換できるよう資源は公開情報
- 最長交易路は5本、最大騎士力は3枚で獲得。比較対象はなく、奪われない
- ダイスで7が出たときはアプリが指定したスペースに盗賊を置き、騎士を公開したら砂漠に戻す。資源8枚以上のチェックはあるが、相手から取ったりしない
- 砂漠を挟んだ両隣のプレイヤーのエリアに進出することができ、最初の開拓地は+2勝利点
- 開拓地・都市・勝利点カード・最長交易路・最大騎士力・両隣への開拓地の合計が18点になった手番で勝利
開会式ではスムードというラッパー、『ドーフロマンティック:ボードゲーム』の作者M.パルム、カタンスタジオのB.トイバーがゲストに招かれ、トークを繰り広げた。スムードは娘からカタンを教えてもらったとか、勝つ秘訣を語っていたトイバーが負けていたとか。
予定よりも開会が遅れた上に、コスチュームコンテストも行ったために(残念ながらコスチュームをしてきた人自体がほとんどいなかったが)、ゲームが始まったのは7:45。しかしわずか15分で少年が勝ち名乗りを上げ、決着が付いた。商品として3Dカタンと『カタンコネクト』製品版が贈られる。世界記録達成の発表で予定よりも早く幕を閉じた。
ゲームとしての感想を言うと、資源を公開にして手番に時間制限を設けるのは、落ち着いて考える時間がない代わりにゲームのテンポがよく、リアルタイムの楽しさがあった。「木がほしい」「私も木がほしい!」「じゃレンガもってるほうで」「ありがとう!」といったやりとりが数秒間で行われる。お互いほしいものがわかっているので逆提案もありだ。陣取りの要素が薄まり、盗賊による直接攻撃もないのは今風だと思う。
それはともかく、たまたまそこで会った人たちとまるで友達のようになり、1170人で一体感をもってゲームできたこと自体、非常に楽しい経験だった。