夏休みに入ったためかいつもより昼の部がにぎやかな気がする秋葉原。ゲーム経験の差を感じさせず、みんな思い思いのゲームを楽しんでいる。ミクシィをベースにしているので初心者・初参加という方が毎回いるようだが、ゲーム経験は少なくとも秋葉原に足を運ぶ時点でプライオリティは相当高いから、別段初心者向けのゲームなど選ばなくともたいていのゲームは楽しんでいく。そういう自由な雰囲気に便乗するかたちで前半は昔のゲーム、後半は国産ゲームという面白い取り合わせで遊んだ。
近衛兵|黄金のドラゴン
近衛兵(”Die Praetorianer” vom Neue Spiele im Alten Rom / R.クニツィア / ピアトニク, 1994)
「古代ローマの新しいゲーム集」は入手難の一品だがクニツィアのエッセンスがいっぱいつまっており、この中で使われたシステムがリファインされて90年代後半の傑作につながっている。「近衛兵」はフロカティ・サーカス(1999)に結実していく。
カードをやめたいところまで好きなだけめくって、その分だけ点数になる。しかしカードには赤・紫というグループと緑・青というグループがあり、別のグループが出てしまったらアウトだ。バーストしてそれまでにめくったカードも全部0点になる。黄色は中立なのでOK。
ここからがクニツィアらしいところだ。めくったカードが別のグループでも、数字が一致していればバーストにならないどころか、その時点で得点になる。すなわち通常のバーストする確率は5分の2(5色中2色)だが、数字が並んでいくにつれてその確率が何パーセントかずつ減っていくという仕組み(でもその色が減るのでさらに微妙になる)。これがめくるにつれて弱気になる気持ちを奮い立たせる。
なぜか2枚目でバーストしてしまうくさのまさんを除き、順調に得点する3人。終盤でくさのまさんが今までためていた運を使うかのようにフィーバーしたが、けがわさんが寄せて勝利。プレイ時間10分ほどで、軽く盛り上がった。
黄金のドラゴン(Goldener Drache / W.リーデッサー / F.X.シュミット, 1992)
ゴールデンドラゴンになるべくドラゴンたちが黄金の火山をめざしてレースを繰り広げる。「アベ・カエサル」のリーデッサー作。プラスチック製だがなかなか豪華なコンポーネントは見どころだ。
ドラゴンは風で進む。風チップは南、東南、西南、東、西、北の6種類があり、黄金の火山はボードの一番南にある。手番になったら手元の風チップ置き場の左から1枚ずつ取って(左からとると、チップ置き場の斜面で残りのチップが左に寄る仕組み。スゴイ)、ドラゴンの隣りに対応する方向で置く。そしてそのチップの飢えにドラゴンを移動。元の場所にあったチップを回収する。
南なら火山側に1マス、北なら反対側に1マス。なぜ戻るチップがあるかというと、チップはほかの人のドラゴンに置いて妨害もできるからだ。
1回の手番には3つのチップを置いてドラゴンを移動していくが、特殊カードを使えば5つ置くことができたり、妨害されたときにキャンセルすることができたりする。ただし特殊カードは各2枚ずつだけ。どこでスパートをかけるか考えて使おう。
このゲームのポイントは、どのドラゴンを移動してどのコマを回収するかにある。次の手番でよりよいポジションに進むには、どの方向のコマが必要かをまず脳内プロット。次いでその移動に必要なコマをもっているドラゴンをチェックして移動し、回収する。1周する間に思いがけない方向に動かされてしまうこともあるからプロット通りに行くとは限らないが、戦略性は十分にある。しかしドラゴンの下にあるコマは見えないのでしっかり記憶の要素が絡んできて事態は容易ではない。
みんながあと1手番でゴールしそうになっても、肝心のチップが揃っていなくて右往左往しているうちに、くさのまさんがほかのドラゴンたちの隙間からぐんぐん入り込んでゴールデンドラゴンとなった。やや古いゲームだが、思うようにいかないドラゴンの操縦に雰囲気が出ており、また読み合いの要素もあって楽しめた。
ボッセ(Die Bosse / S.サクソン / F.X.シュミット, 1991)
会社を買って連合し、財閥を形成するカードゲーム。連合するためにはカードのアルファベットを揃えなくてはならない。この「揃える」という要素はサクソンのゲームの基調にあるような気がする。「Allesin Ordnung(整理整頓)」が好きなドイツ人に受け入れられたのもその辺にあるのではなかろうか。1991年の第1回フェアプレイ・カードゲーム賞2位(1位はレス・パブリカ)。
場には5枚の会社カードが並べられる。手番にはお金カードを出して会社を購入し、自分の前に並べるのが基本。同色か全て異なる色で、アルファベットが共通していればカードを重ねてコンツェルンを形成できる。お金カードを補充するときに「利益カード」が出たら決算。コンツェルンが3枚で1点、4枚で3点、5枚で8点、6枚で20点となる。アルファベットが同じカードを6色全部揃えるのはたいへんだが、その利益はいきなり大きい。
会社カードは原油、旅行、電機、化学、環境、自動車の6種類。アルファベットが多いものほど財閥を形成しやすい分、お値段も高くなっている。1つの財閥でも、複数のアルファベットが揃っていれば利益がその分増えるから、有効に利用できれば決して高い買い物ではない。
財閥を育てる助けとなるのが、買収とリストラだ。買収カードがあると、他の人の会社を奪って自分のものにすることができる。奪われたほうは1枚でも少なくなると利益が小さくなるからダメージが大きい。当然、6枚揃っている大財閥を崩すのに使うだろう。リストラは公開しているカード1枚につき100万払い(100万が最小単位なので安い)、カードを自由に組み替えるもので、思ったように財閥が伸びないときや、新しく買った会社で計画が変わったときなどに使う。この買収とリストラがほどよい選択肢とインタラクションと提供し、ゲームの面白さを引き立たせている。
会社カードの山札がなくなったときに最終決算をして、累積ポイントの一番高い人が勝ち。
序盤にしむしゅさんがいい感じできたが、激しい妨害にあって再起不能に。その脇でカードがなかなか揃わず、揃った途端に買収されたりして「ぐはぁ、ぐはぁ」を繰り返すずーあーさん。さらにその隣りの私は、写真のようなB6枚の財閥が誰からも崩されず、決算のたびに大儲けを繰り返してトップだった。
お金カードの計算が最初慣れるまでちょっと手間取るが、カードを揃える楽しさに加え、買収合戦も盛り上がるというバランスの取れた良作だと思う。サクソンの評価急上昇中。
ペッパー(Pepper / W.クラマー&M.キースリング / F.X.シュミット, 1998)
取らないほうがいいというミゼールのトリックテイキングを、さらにエキサイティングにしたゲーム。9人までプレイ可能(一体どうなることやら)。こういう変態ぶりはクラマーよりもキースリングによるのではないだろうか。
親から1枚カードを出し、ほかの人も時計回りで(ある限り)同じ色のカードを出していき、全員が出したところで数字の一番高い人が取るという、オーソドックスなトリックテイキング。しかしこのゲームは、いくら取ってもプラス点になることはない。それどころか、ペッパーカードを持っていると取っただけマイナス点になってしまうのだ。
ペッパーカードは各色の1。つまりその色の中では最弱であるがゆえに取らなくてすむという「最強」のカード。このカードは、配られた時点で手札とは別に自分の前にさらしておく。頃合を見計らって、手札の代わりにペッパーカードを放出。たいていの場合、誰かに押し付けられるだろう。でも押し付けられた人も、ペッパーカードを自分の前にさらしておいて再放出できるのだ。こうしてペッパーカードの熱い押し付け合いが始まる。
ペッパーカードがあるので、手札の数は全員同じではない。誰かの手札がなくなった時点でゲームが終了。そのときにペッパーカードを持っていた人は1枚マイナス2点、そしてトリックで取ったペッパーカードと同じ色のカードが1枚マイナス1点。これを5ディール繰り返して失点の一番少ない人が勝ち。
いくらトリックを取っても、最後にペッパーカードを持っていなければ失点にならないのだから、厳密にはミゼールというわけではない。ただカードをたくさん取っていれば、ペッパーカードが回ってきたときのダメージも大きいだろう。取らないに越したことはない。
1ディールに1人はペッパーカードをたくさん集めて撃沈していき、そのたびに盛り上がった。最後の2,3周での激しい押し付け合いが面白い。ペッパーカードでリードして貰い手を探したのに誰もその色を持っておらず、別のペッパーカード付きで戻ってきてしまうペッパー爆弾が効いた。
そうならないように、何色が切れているのかは覚えておかなければならない。また獲得トリックの色もだいたい覚えておけば、危険なペッパーをマークできるだろう。漠然とでも最低限のカウンティングをすれば幾分有利になりそうだ。しかしそれ以上に、手札のどのカードでリードするかというトリックテイキング共通のポイントはゲームスタート時からあり、勝敗を分けていくのだろう。
ジェンマ(Gemma / 田村 哲志 / ゲームバリュー, 2006)
国産の新作。ゲームマーケットには間に合わなかったが、今年の東京おもちゃショーに出展された。1ボードゲームで1ブースというのはすごい。
ゲームは魔法使いたちがファンタジーのキャラクターたちを使って宝石を自分の城に持ち帰ろうと奪い合う。「サッカーのようなスポーツ感覚のゲーム」(ホームページ)だ。
宝石の持ち主がコマを移動すると、そこには平地、森林、道路、魔法という4種類の地形になっている。指定された地形でカードを出し合って戦闘し、数値が一番大きい人が宝石を取る。最も強い「オメガカード」は、宝石の持ち主ならどこでも使えるが、奪いにきたほかの人は城の手前でしか使えない。またオメガカード以外でも、勝者は先頭に使ったカードをキープしておける。こういう差で宝石の持ち主が宝石をキープしやすくしてある。
勝負に勝てば「ウィングカード」を出してコマを移動だ。移動先でまた勝負し、これを繰り返して宝石の持ち主が自分の城に入ったら得点になる。
序盤にかゆかゆさんが宝石を持ち帰ったものの、あとは取ったり取られたりしているうちにタイムアウトでゲーム終了。サッカーでいうならば先日の日本―クロアチア戦のような戦いになった。オメガカードとウィングカードが連続して引ければ、何とか宝石を持ち帰れるだろう。しかし手札は3枚しかないのでそううまくいかない。「カード運の要素の強いゲーム」(ホームページ)だ。そういうデザインなのだろうが、ゲーマーは物足りなさを感じるだろう。もっと手札が多ければ戦略性が上がるかもしれない。
陰陽道(Onmyoudou Cardgame / 東北芸術工科大学 / グランペール, 2006)
今年のゲームマーケットで発売されたグランペールの新作。ナムコの講師が東北芸術工科大学ゲームデザインコースで講義し、実習で作ったものを製品化したという、珍しい物語がある。
目を引く五角形のカード。これを1枚ずつ10枚、時計回りに並べていく。並べ方は(1)前に置かれたカードの向きで指定された二種類のどちらかを隣に置くか、(2)相克属性という一種類で数値が同じかそれ以上のカードを上に乗せるかのいずれか。ゲームを早く終わらせたいならばどんどん時計回りに並べるし、長引かせて自分の番がまた回るようにしたいならば上に乗せて円を伸ばさないようにする。この手番調整がゲームのポイントだと思う。もっとも、指定された種類のカードがなければ山札から引かなければならないので運もある。
基本ルールは終了時の手札がマイナスになるというもの。数字の大きいカードはどんどん置いていこう。数字の小さいカードしかなければ早上がりをめざすのもよい。別ルールで最後に置かれるカードを途中で予想するというゲームもある。1ゲーム10分未満。あっさりし過ぎている感もあるが、幅広い年齢層に対応できそう。
クォータークエイク(Quarter Quake / 東大寺充 / エルバット, 2006)
白黒それぞれ4つのダイスを振って位置を決め、そこに建物を建てていくボードゲーム。シェアウェアのPCゲームが製品化され、今年のゲームマーケットで初お目見えとなった。
4つのダイスを振ると、黒6-白10というように止まる場所が指示される。まずはここにコマを置こう。自分のコマを隣接して置けると、そこに建物を建て始められる。はじめは2マスの収益の低い建物から。そこにほかの誰かが止まったらお金をもらう。さらにその周辺に自分のコマを置くことによって、建物を大きくでき、収益も上がっていく。破産した人から抜けていって生き残りが勝ち。
最も出やすい7の列にはチャンスカードがある。カードをめくると臨時収入があったり、好きなところにコマを置けたりする。さらに7-7で大地震が発生。7-7を振った人がボードの4分の1のエリアをひとつ指定し、そのエリアの建物が全部なくしてしまう。でもコマはそのままだから、復興は遠い夢ではない。
地震より注目されるのが革命だ。チャンスカードの中に革命があって、これが出ると借金が帳消しになるというルールのため、革命に備えて借金しておくという変な戦略が生まれた。しかも今回は革命が出まくりでみんな潤沢な資金を手にする。これがゲームを長引かせてしまったのか、破産が出ないまま90分が経ち、時間区切りで終了。借金は、お金がないときにしかできないというルールにするべきかも。
PCゲームなら可だが、アナログゲームにしては作業感が大きい。ダイスを振ればあとは選択の余地がない場合がほとんどだからだ。そしてコマの置き方が運任せなのでなかなか大きい建物ができず中盤がだれる。「ダイスを振って出たマスが気に入らなかったり、他のプレイヤーがほしがったりしたら、交渉をして土地を交換できます」などのルールを加えて、プレイヤー間の土地の交換(や売買)ができれば大きな建物を建てやすくなり、破産者も早めに出るだろう。いよいよモノポリーライクだが、ゲームは劇的に変わるかもしれない。ポテンシャルは高い。