自由に遊べるだけのスペースを借りきり、説明をするスタッフを配置した上に、ポスターやチラシはフルカラーで完備、呼び込みのお姉さんまで手配しているという手の込みよう。これだけ大がかりなプロジェクトになったのは、オフィス新大陸の企画力もあるだろうが、それ以上に各メーカーがボードゲームに力を入れている証と見ることができるだろう。これぞプロの仕事である。
私が行った時にはカプコンのマイスターH氏、オフィス新大陸の方、グラパックジャパンの方、それから呼び込みのお姉さん方がいらっしゃった。次々と覗き込む客。本屋の入り口ということで往来は多く、ゲームに目をとめる客も少なくない。ちらっと見るだけの人もいれば、フリースペースまできてプレイしている様子を見る人、スタッフに話をきく親子連れなど、実にさまざま。ただフリースペースは3卓と広めに取られていたが、実際にプレイするところまでいく客は少ないように見えた。それほど目立つ場所ではなかったので、公衆の面前で晒し者になるという恥ずかしさよりも、よく知らないボードゲームに対する警戒感があるのかもしれない。しかしそれでも、覗き込む人は興味津々(目がマジ)。各社で用意しているパンフレットはどんどん取られていく。こういったイベントの宣伝効果は絶大だということを認識した。
よくウェブ上では、マニアックなボードゲーム愛好者とボードゲームを全く知らない普通の人という二分法をしがちだが、世の中はそんなに単純ではない。小さい頃人生ゲームやトランプをたくさん遊ぶのが好きだった潜在的な愛好者はごまんといることだろうし、家族で最近遊び始めたばかりという人もいる。1年に1度お正月ぐらいは何か遊びたいと思っている人、飽きたり忙しくなったりしてやめてしまった人、友人や恋人とのつきあいでいやいや遊んでいる人、そのうちどこか面白さを感じるようになった人…そんな千差万別なところで、ゲームをやったことがある人/ない人という線引きをしてものを言うのは不毛な気がする。今日も私の知らないところで知らない人たちがゲームを楽しんでいることだろう。キャラバンを覗き込んだいろいろな人の顔を見ていて、そんなことを考えた。
かくいう私も、スタッフが知り合いであるにもかかわらず、またかゆかゆさんを誘って一緒に行ったにもかかわらず、プレイ卓にすわってゲームを始めるには勇気が必要だった。しかしちょうどグラパックジャパンの方が説明をして下さり、気になっていた新作を2つ遊ぶことができた。
ダンクジャム(Dunk Jam/Unknown/Grapac Japan, 2003)
2人用の3on3バスケットボールゲーム。グラパックジャパンから発売されたばかりのエアロノートシリーズの2号です。
まず5人のキャラクターから3人を選びます。オフェンス向きの身軽なプレイヤー、ディフェンス向きの壁のようなプレイヤーなどから攻守ともにバランスよくチームを編成します。ボードは6角形ですが、1マス分の選手と2マス分の選手の2種類あるのがポイントで、1マス分の選手は身軽で相手のすきまに入りやすく、2マス分の選手は相手の侵入を防ぎやすくなっています。先攻後攻を決めて、選手をボードに配置したらスタート。
3枚の手札から1枚を一斉に出して、オフェンス・ディフェンスの順に選手を動かします。移動した後にカードに支持されたアクションを行います。オフェンス側はパス(ほかの選手にボールをわたす)やプッシュ(相手を押す)などのアクションがあり、またディフェンス側のカードにはスチール(隣接している選手からボールを奪う)などができます。ディフェンスがスティールを出しているならば遠巻きに攻撃するなど、相手が出しているアクションによって攻防が変わります。
ディフェンスのアクションの後、無事にボールをキープできたらシュートです。ここで登場するシュートアクション判定(写真左下のボード)。シュート地点によってボールを配置して、指で弾くのです。ゴールに入ったら得点、外れたらダイスを振って落下地点を決めます。そこにオフェンスがいればまたシュートできますし、ディフェンスがいれば1ラウンド終了です。カードを補充し、攻守交替して次のラウンドを始めます。また、手札の3枚を使い切ったり(30秒ルール)、シュート前にボールを奪われた時点でもラウンド終了になります。山札が切れるまでやって、得点の多いほうが勝ちです。
シュートアクション判定がいかしてました。これがあるおかげでスポーツゲームのスピード感が保たれたと思います。ボール(スーパーボールらしい)は思いのほか軽く、ちょっと力が入っただけで飛んでいってしまいます。うまくバックボードに当ててゴールを決めるにはちょっとした熟練も必要でした。ただゴール直下からのダンクシュート(ゴールのほぼ真上からボールを落とすアクション)はまず外れません。うまくやれば遠くからの3点シュートも入りますが、入る確率は確実に下がります。
できるだけ近くからシュートするためには、ディフェンスを揺さぶりつつゴール前に近づいていかなければなりません。少ない移動数を使った将棋のような攻防に、シュートアクションが加味されて、戦略とアクションを両方楽しめるゲームに仕上がっています。選手コマの造形(ポリストーン)も素晴らしく、今回出たエアロノートシリーズでは一番の出来と言えます。惜しむらくはあまりに作りこみすぎたせいかお値段が3800円という少し高めになってしまったところでしょうか。
かゆかゆさんも私もシュートが決まらず数ラウンドしていたところ、私がスクリーンでディフェンスをおさえて中距離シュートを決めたところで終えましたが、シュート力が上がればもっと点数の取り合いになると思いました。しかし、シュートアクションは緊張して手が震えてしまいました。
オーバルトリック(Oval Trick/Unknown/Grapac Japan, 2003)
手札の内容はみんな同じです。一斉に1枚出して、先頭から車を進めます。後続する車はスリップストリームで追加移動ができるようになっています。このスリップストリーム圏が広く、後ろの車は簡単に前に踊り出られるようになっており、抜きつ抜かれつのエキサイティングなレースになります。前の車はうまくラインをふさいで、後続車に簡単に抜かれないようにします。
ショートコース・ロングコースの選択、スプリントレース・ピットを入れた耐久レースの選択、はたまたマシンのチューニングまで用意されており、いろいろな遊び方ができるようになっているのもポイント。簡単なルールにすることで、スピード感もよく保たれています。
ゲームは先行逃げ切りを狙った私ですが、最後に息切れをしてしまいあっという間にビリでした。3種類のカードしかないのですが、どのカードを出すかは駆け引きがあり、全く油断できません。
ここでボードゲームキャラバンを退出。エアロノートシリーズの1号「ゲキシンK.O.」は技の名前が全くピンとこないのでプレイしなかったが、格闘技好きの人にはたまらない一品であることを付け加えておく。その後秋葉原のイエローサブマリンに場所を移し、かゆかゆさんとファラオさんと3人で個人輸入して入ったばかりの新作を遊んだ。
ロード・オブ・ザ・リング―2つの塔|ニューイングランド|パリパリ
ロード・オブ・ザ・リング―2つの塔(Der Herr der Ringe – Die zwei Tuerme/R.Knizia/Ravensburger,2002)
ゲームはアモン・ヘンからミナス・ティリスまで、映画で出てくる場所を順に追っていきます。コマ(全員でひとつです)を進めてカードを補充し、それぞれの場所では手札からカードを出して力を比べあいます。カードには力・知恵・忍耐・決断の4種類のマークがありますが、どのマークで力比べをするかが、場所によって違います。
場所に来たら指輪の保持者からカードを公開していきます。カードの公開は各色1列ずつで、しかも各列は色とマークが揃っていないといけません。ガンダルフはオールマイティですが、列の最初にしか出すことができず、しかも単独では出せません。指示されたマークでいちばん多くカードを出したプレイヤーから、その場所での勝利ポイントチップをもらいます。ただし勝利ポイントをもらったプレイヤーは力比べに使った列のカードを1枚ずつ捨てなければなりません。こうして負けたプレイヤーでも次回に勝つチャンスが出てきます。
1位のプレイヤーに指輪が渡り、旅を続けます。最後まで行って、勝利ポイントの合計が一番多いプレイヤーが勝ちです。
手札をうまくそろえていくことが大事です。補充の時に表向きのカードもあるので、どの色を揃えるのか考えながら選べますが、一方でほかのプレイヤーが何を補充しているのか注意しておくことも必要です。裏向きの山札から引き、運任せにする代わりにほかのプレイヤーから知られないようにするという方法もあります。いずれにしても次の場所まで補充が2枚しかできないところもあったりして、態勢を立て直すのに焦ります。
カードゲームに特有の運の要素の強さはありますが、手札の公開にほどよいシバリがついていることで、いろいろ考えるところもあり、ゲームとしては水準以上にできあがっています。映画に登場するキャラクターの写真が使われているのも心躍るものがあります。ゲームはめりはりのあるプレイで1位を多く取ったファラオさんが勝利。
ニューイングランド(New England/A.R.Moon&A.Weissbrum/Goldsieber, 2003)
プレイヤーはボードに自分の3種類のタイル(牧草地・農地・住居)を広げ、そこを開拓していきます。同時に船・人・倉庫を配置し特典を得て、ゲームを有利に進めていきます。開拓すれば勝利ポイントになりますがと船・人・倉庫を配置できなくなり、かといって船・人・倉庫だけでは大きな勝利ポイントにならないというジレンマがあり、バランスのよい経営が必要になります。その上、ほかのプレイヤーのタイルが広がる前に自分のエリアを確保しておかなくてはなりません。あれもこれもしたい中で、あちら立てればこちら立たずという状況をうまく打開していきます。
タイルとカードを並べたら、スタートプレイヤーからコインをとっていきます。1~10までのコインがあり、高いコインをとった人から優先的にタイルやカードを購入できますが払うお金も高くなります。買ったタイルはボードに配置します。開拓カードはタイルが並んでいるエリアを開拓して勝利ポイントになります。船カードは船を配置して追加タイル・カードを選べるようになり、人カードは収入が増え、倉庫カードは成立前の開拓カードを保管しておけが、これらの場合開拓していないタイルにコマを置き、そのタイルはコマが入る限り開拓できなくなってしまいます。
はじめは人カードでお金を増やしつつ、ほかのプレイヤーより先にタイルを置いて広いエリアを確保することになりそうです。タイルの並べ方は「チグリス・ユーフラテス」のような感じで、同じ種類のタイルは隣接できません。いちばん勝利ポイントが高いのは4タイル開拓(10点)ですが、こうしたタイル配置のの制限の中で4タイルを並べるのはなかなか難しく、タイミングがよくないと成立しません。それだったら点数が下がる3タイル開拓、2タイル開拓で妥協するか、この辺が悩みどころでしょう。
補充できるカードがなくなったらゲーム終了で、勝利ポイントの合計で勝者を決めます。船・人・倉庫の最多プレイヤーにはボーナス勝利点があります。
ルールが思いのほか難しくなく、またプレイ時間もそれほどかかりませんでした。ただ3人だとボードががらがらなので選択の幅が広がってしまい、悩みどころが減ってしまった感があります。4人でやってこそ、真価が発揮されるのだと思います。
パリパリ(Paris Paris/M.Schacht/Abacus, 2003)
ボードにはパリの地図が描いてあり、4色のバス路線と、それぞれのバス停が記してあります。バス停タイルをプレイ人数+1枚めくって、対応するバス停に配置します。手番プレイヤーから1つずつ選んでお店を開きます。そして誰も選ばなかったバス停では、一番近いところにお店を開いているプレイヤーに収入が入ります(スモールツアー)。このバス停は、グランドツアーリストに入ります。
スタートプレイヤーが隣に移り、またバス停タイルをめくって同様にお店を開いていきます。これを繰り返していくうちに、グランドツアーリストに同じ色のバス停が2つ入ったらグランドツアーです。その路線をバスが走り、路線の主要なバス停にお店を開いているプレイヤーに収入が入ります。
全部のバス停が出たところで、予め1枚ずつ配られていた路線でスペシャルツアーがあり、その収入を入れて一番収入の大きいプレイヤーが勝ちです。支出は一切なく、バス停を選んでお店を立てるだけというルールは至極簡単です。
面白いのは、グランドツアーとスペシャルツアーです。主要なバス停にバスが止まったとき、そのバス停にお店をもっているプレイヤーが隣接するバス停にもお店をもっていれば、追加で収入が入るようになっているのです。こうしてお店を一箇所に集めておけば連鎖で大きな収入が入ります。同じバス停のタイルが何枚かあり、定数を超えると前にいたお店は追い出されてしまうため、主要なバス停での出店合戦はドキドキものです。路線はいたるところで交差しているので、どの路線にもまんべんなくお店を配しながら、連鎖収入を狙うのがポイントです。なお追い出されたお店は袋の中に入り、最後に一番多く追い出されていたプレイヤーには補償があります。
フランスの地名はなじみ薄く、また読めないものもたくさんあってバス停の配置はたいへんですが、終盤お店がたくさん出ているときにグランドツアーをどの路線で起こすか考えるのは楽しく、バスツアーの雰囲気もよく出ていてよいゲームでした。ファラオさんが連鎖に次ぐ連鎖で大儲けし1位。ゲームは2~4人用ですが、何人でも楽しく遊べそうです。
モレール(Moreru/NoBe/Mission Outerspace, 2003)
1枚ずつカードを出して数を増やしていきます。31,61,91以上にしてしまったプレイヤーはステータスカードを減らし、おもらしに近づきます。ステータスが0になったプレイヤーが出た時点でそのプレイヤーがもらしてしまったことになり、ゲーム終了です。
カードの中にはリバース・スキップなどの基本的なものから、ダイスを振る回復チャンスや手札の交換などスパイスの効いたカードもあります。また50と80にしたプレイヤーにも回復チャンスがあります。
ステータスカードには「はらいたい」「おなかの調子が…」などのセリフが書いてあり、それを読まなければなりません。心を込めて読むほど楽しいでしょう。これで「この人たち何してんだ?」といった変な集団になります。
ちなみに私がもらしました。屈辱。