ちょっといい話(1)聴く力

(長井法人会ワンポイント情報 令和6年11月号に掲載)

以前、ある方から、「耳が二つある住職」と言われたことがある。どういうことかと尋ねると、人の話をちゃんと聴くということらしい。そんなアタリマエだと思うが、できる人が意外と少ないのだろう。確かに飲み会などで、自分がしゃべりたいだけしゃべって、相手がしゃべろうとすると席を立ってしまう人がいる。まるで聞き役になるのは負けだと言わんばかりだ。
実際のところ私の場合、ただの引っ込み思案である。自分の話に相手が興味を持つか自信がないから、自分からは積極的に話さないというだけだ。ただし沈黙も恐ろしいので、相手もしゃべらなければ共通の話題を探して雑談を始めるが、内心は、話しやすい雰囲気の中で、心にしまっていることを語り始めてほしいと思っている(無理に聞き出すのもイヤなので、そのまま雑談で終わることもある)。
東日本大震災後、被災した人への傾聴ボランティアに参加していた。そこで学んだのが以下の三つである。
①言葉以外の行動に注意を向ける(姿勢、しぐさ、表情、声の調子など)
言っていることと思っていることが違うことがある。心の中を見ることはできないが、言動をもとに相手は何を見て、どんなことを感じているかを推測していくことは可能である。
②言葉の背後にある感情に共感を示す
置賜弁で「ほだごで~」がこれに当たる。近所に「ほだごで~」の名人であるおばあちゃんがいた。眉毛をハの字にして寄せたまま吊り上げ、泣きそうな顔をして言うのである。相手は、自分の気持ちが伝わったことに安心と喜びを感じる。
③分析しない・批判しない・助言しない
相手が求めない限り、自分の意見は言わず、納得できない部分があっても、相槌を打って話をそのまま受け止める。話すことで思考が整理されることに期待して、「聴いてもらってスッキリしました」という感想になればよい。
お寺には時々いろいろな人が相談に訪れるが、こちらがやっているのはこんな風にハイハイと言って聴くことだけである。

 

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