アサーション(自他尊重の会話)の2番目は、自分の意見や気持ちを素直に伝えること。「急いでやってください」「どうしてできなかったんだ?」というような、主語が「あなた」の言い方は攻撃的な印象を与えるが、「急いでもらえると助かります」「どうしてできなかったのかと考えています」と主語を「わたし」にすることでやわらかい言い方になる(アイ・メッセージ)。
強制されたり追い詰められたりして、自分の行動を自分で決められなくなると、人は抵抗や反発を感じる(心理的リアクタンス)。主語が「わたし」の言い方は強制力がないので聞いてもらえないのではないかと思うかもしれない。しかし選択の機会を与えることで相手が尊重されていると感じ、自主的な行動につながれば、「言われたときだけやる」「怒られないためにやる」仕事から脱却できるだろう。
「残念だ」「悲しい」「つらい」などのネガティブな気持ちを伝えることも時には大切。信頼できる人であれば、悲しませたくないと思うのが人間の情というもので、上司部下・先輩後輩という関係ではなく一対一の人間として「悲しませないために自分ができることは何だろうか」と感じてもらえれば、自発的な行動につながる。ただし強い感情をそのまま相手にぶつけると正直引かれてしまうので、冷静に淡々と述べることを心がけたい。「私はあなたに対して怒っている」というのも、目下に対しては脅しや威嚇になってしまうので避けたほうがよい。
そんなネガティブなことを言うのは弱音を吐くみたいで恥ずかしいという方もいるかもしれない。特に「男の子は泣くな」と育てられてきた男性はそう感じやすい。しかしそのような感情をしまい込むと、うつ病や自殺につながりかねない。今更言っても仕方ない愚痴は相手を選ぶが、笑い話に仕立てたりして気軽に話せれば、お互いに心を開いて付き合える良好な人間関係ができるのではないだろうか。
事実を確認し、自分の思いを伝えたら、いよいよ次は提案である(つづく)。