大悲心陀羅尼(現代語訳付き)

大悲心陀羅尼
नीलकण्ठधारणी
nīla-kaṇṭha-dhāraṇī
ニーラ・カンタ・ダーラニー
(千手千眼観自在菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼経より)

नमः रत्नत्रयाय नम आर्यावलोकितेश्वराय
namaḥ ratna-trayāya. nama ārya-avalokiteśvarāya
ナマハ ラトナ・トラヤーヤ ナマ アーリヤ・アヴァローキテーシュヴァラーヤ
三宝に帰依し奉る。聖なる観自在尊に帰依し奉る。

बोधिसत्त्वाय महासत्त्वाय महाकारुणिकाय
boddhi-sattvāya mahā-sattvāya mahā-kāruṇikāya.
ボーディ・サットヴァーヤ マハー・サットヴァーヤ、マハー・カールニカーヤ。
菩薩に、摩訶薩に、大慈悲心をもつ者に帰依し奉る。

ॐ सर्वरविये शोधनाय तस्य नमस्कृत्वा इमं
oṃ sarva-rabhayeṣu trāṇa. tasya namaskṛtvā imam
オーン、サルヴァ・ラバイェーシュ、トラーナ。タスィヤ ナマス・クリトヴァー イマム
オーム、全ての恐怖を救済するものに。その者に帰依してから、かの

आर्यावलोकितेश्वररन्धवो नमो नीलकण्ठहृदय-
ārya-avalokiteśvara-randhavo namo nīla-kaṇṭha-hṛdaya-
アーリヤ・アヴァローキテーシュヴァラ・ランダヴォー。ナモー ニーラカンタ・フリダヤ
聖なる観自在の力をもつ青い首の核心を、

मावर्तयिष्यामि सर्वार्थतो शुभं अजेयं
m-āvartayiṣyāmi. sarvārthato śubhaṃ ajeyaṃ
マーヴァルタイスィヤーミ。サルヴァ・アルタトー シュバン アジェーヤン
私は読誦しよう。全ての点で吉祥で、無敵で、

सर्वसत्त्वानां वाकमाविततो तद्यथा
sarva-sattvānāṃ vākam-āvitato. tadyathā,
サルヴァ・サットヴァーナーン ヴァーカマーヴィタトー。タディヤター
一切衆生の聖なる言葉を広く(読誦しよう)。すなわち、

ॐ अवलोके लोकातिक्रान्ते हे हरे महाबोधिसत्त्व
oṃ avaloke loka-atikrānte. he hare mahāboddhisattva.
オーム、アヴァローケー ローカ・アティクラーンテー。ヘー、ハレー、マハー・ボーディサットヴァ。
オーム、光明よ、世間を超越するものよ。嗚呼、主よ、菩薩よ。

सर्प सर्प स्मर स्मर मक मक हृदयं
sarpa sarpa smara smara maka maka hṛdayaṃ.
サルパ、サルパ、スマラ、スマラ、マカ、マカ、フリダヤン。
動き給え動き給え、憶念し給え憶念し給え、打ち給え打ち給え、核心を。

कुरु कुरु कर्म धुरु धुरु विजयते
kuru kuru karma. dhuru dhuru vijayate
クル、クル、カルマ。ドゥル、ドゥル、ヴィジャヤテー。
行為を為し給え為し給え、保持し給え保持し給え、勝利者よ。

महाविजयते धर धर धारणीश्वराय
mahā-vijayate. dhara dhara dhāraṇī-īśvarāya.
マハーヴィジャヤテー。ダラ、ダラ、ダーラニー・イーシュヴァラーヤ。
偉大なる勝利者よ。保持し給え保持し給え。陀羅尼の主に。

चल चल मम विमलामुक्तरे एह्येहि
cala cala. mama vimalāmuktare. ehy ehi.
チャラ、チャラ。ママ、ヴィマラー・ムクタレー。エーヒ、エーヒ。
発動し給え発動し給え。我が汚れを離れたるものよ。来たり給え来たり給え。

जिन जिन आर्षं प्रशारि वशावशं प्रशाय
jina jina. ārṣam praśāri vaśa-avaśam praśāya
ジナ、ジナ。アールシャン、プラシャーリ、ヴァシャ・アヴァシャン、プラシャーヤ
勝者よ勝者よ、聖人の言葉を讃え給え。望みを持つ者も持たざる者も讃え、

हुलु हुलु मलं हुलु हुलु हृदयं सर सर
hulu hulu. malaṃ hulu hulu. hṛdayaṃ sara sara
フル、フル、スマラ、フル、フル。フリダヤン、サラ、サラ
取り去り給え取り去り給え、汚れを取り去り給え取り去り給え、心を流し給え流し給え。

सिरि सिरि सुरु सुरु बुध्य बुध्य बोधय बोधय
siri siri suru suru. budhya budhya bodhaya bodhaya.
スィリ、スィリ、スル、スル。ブディヤ、ブディヤ、ボーダヤ、ボーダヤ。
現れ給え現れ給え、出で給え出で給え。悟り給え悟り給え、悟らせ給え悟らせ給え。

मैत्रेय नीलकण्ठ दर्शनानां हयमान स्वाहा
maitreya nīla-kaṇṭha darśanānām. hayamāna svāhā.
マイトレーヤ、ニーラカンタ、ダルシャナーナーン。ハヤマーナ、スヴァーハー。
多くの会見について慈悲深き者よ、青い首をもつ者よ。行く者よ、よろしく。

सिद्धाय स्वाहा महासिद्धाय स्वाहा सिद्धयोगीश्वराय स्वाहा
siddhāya svāhā. mahā-siddhāya svāhā. siddha-yogi-īśvarāya svāhā.
スィッダーヤ、スヴァーハー。マハー・スィッダーヤ、スヴァーハー、スィッダ・ヨーギーシュヴァラーヤ、スヴァーハー。
成就者に、よろしく。偉大なる成就者に、よろしく。ヨーガを自在に成就した者に、よろしく。

नीलकण्ठ स्वाहा मालानर स्वाहा शिरसिंहमुखाय स्वाहा
nīla-kaṇṭha svāhā. mālānara svāhā. śira-siṃha-mukhāya svāhā.
ニーラカンタ、スヴァーハー。マーラーナラ、スヴァーハー、シラスィンハ・ムカーヤ、スヴァーハー。
青い首をもつ者よ、よろしく。花輪の者よ、よろしく。獅子の顔を持つ者に、よろしく。

सर्वमहासिद्धाय स्वाहा चक्रासिद्धाय स्वाहा
sarva-mahā-siddhāya svāhā. cakra-asiddhāya svāhā.
サルヴァ・マハー・スィッダーヤ、スヴァーハー。チャクラ・アスィッダーヤ、スヴァーハー。
一切の大成就者に、よろしく。円輪に負けない者に、よろしく。

पद्महस्ताय स्वाहा नीलकण्ठभगालाय स्वाहा
padma-hastāya svāhā. nīla-kaṇṭha-bhagālāya svāhā.
パドマ・ハスターヤ、スヴァーハー。ニーラカンタ・ヴァガーラーヤ、スヴァーハー。
蓮華を手に持つ者に、よろしく。青い首と骸骨をもつ者に、よろしく。

महालिशन्कराय स्वाहा नमः रत्नत्रयाय
mahāli-śankarāya svāhā. namaḥ ratna-trayāya.
マハーリ・シャンカラーヤ、スヴァーハー。ナモー、ラトナ・トラヤーヤ。
たいへん吉祥な者に、よろしく。三宝に帰依し奉る。

नम आर्यावलोकितेश्वराय स्वाहा
nama ārya-avalokiteśvarāya svāhā.
ナマ アーリヤ・アヴァローキテーシュヴァラーヤ、スヴァーハー。
聖なる観自在菩薩に帰依し奉る。よろしく。

सिद्ध्यन्तु मन्त्रपदाय स्वाहा॥
siddhyantu mantra-padāya svāhā.
スィッディヤントゥ マントラ・パダーヤ、スヴァーハー。
成就すべし。真言の句に、よろしく。

5件のコメント

  1. 初めまして。たいへん興味深く拝見しました。梵語の全文掲載並びに詳細な現代語訳を誠にありがとうございます。
    古の高僧が拝したであろう真の御姿などは我々には伺う由もありません。やはり梵語による表現は活き活きとしており感じるものがあります。今後も勉強させていただければ幸甚でございます。

  2. 大悲呪のサンスクリット語を含めた意味と音写のつながりを知りたくて、探していたのですが、ひとつ一つを対応がわかる形で示していただけていて、非常にありがたいです。これからは、ただ音を追うだけではなくて、意味に関しても感じながら味わっていきたいと思います。

  3. 『大悲心陀羅尼』の訳をサンスクリットと合わせて紹介して頂き,少し理解ができました.感謝申し上げます.質問があります.(1)「ニーラ・カンタ・ダラーニー」の「ニーラ・カンタ」は「大悲心」とありますが,4行目と17行目の「ニーラカンタ」はそれぞれ「青い首」と「青い首をもつ者」とありますが,「大悲心」と同じものでしょうか.また,19行目に「ニーラカンタ・ヴァガーラーヤ」は「青い首と骸骨」とありますが,「首と骸骨」は直接的な訳でよく分かりません.(2)15行目以降にある「スヴァーハー」は「よろしく」と訳されていますが,別の英訳ですと”hail”とあり「賛美する」ような意味だと思いますが,如何でしょうか.

  4. 先に質問した者です。その後、ブログの記事を拝見しました。特に、2012.12/5の「ニルギリとノラキンジー」の記事が参考になりました。『大悲心陀羅尼』の仮名の読み方の問題点も指摘されておりました。

  5. 海野様 本山法要に随喜しておりまして返信が遅くなりました。
    ・ニーラ・カンタの意味は「青い頸をもつ者」なので「大悲心」は意訳です。本文のマハー・カールニカが「大悲心をもつ者」です。どちらも観世音菩薩の異名なので、同じものといえば同じものです。
    ・ニーラ・カンタ・バガーラは「青い頸をもち、複数の骸骨がついた首飾りを身につけている者」という意味です。シヴァ神の図像を見るとイメージしやすいと思います。
    ・スヴァーハーの英訳は確かにhailで、供物を捧げるときに讃える言葉です。「よろしく」というのは、語源が「ス」(善い)「アーハ」(述べる)であることから、「善い」を「宜しく」と読み替え、祈願の目的を織り込んで意訳しました。

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