ちょっといい話(9)合理的配慮

(長井法人会ワンポイント情報 令和7年7月号に掲載)

施設職員研修で「合理的配慮」について話した。障害のある人が円滑に社会参加できるよう、過度な負担になり過ぎない範囲で調整や支援を行うもので、障害者差別解消法の改正により昨年4月から事業者にも義務付けられた。「過度な負担になり過ぎない」のさじ加減が難しいところで、明確な線引きはなく、建設的な対話を重ねて解決策を検討することが重要とされる。
「建設的な対話」は、合理的配慮にとどまらず、ハラスメントの解決や防止にも必要である。上司が部下を注意するたびに「パワハラだ」と主張されたのでは、適切な指導ができず、部下が成長できなくなってしまう。しかし実際、建設的な対話というものは難しい。どちらかが感情的になってしまうからである。上司や部下への恨みや、お客さんの怒りをどうやって鎮めたらよいだろうか。
社内であれば、定期的にハラスメントの理解を深める研修を行うと共に、上司も部下も安心して相談できる窓口を作ることでそのような事態を未然に防ぐのがよい。しかしお客さんとなると研修を受けてもらうわけにもいかない。お店でカスハラ対策ポスターが掲示されているのをよく見かけるが、だいたいポスターをちゃんと見ている人はそもそもカスハラなどしないものである(良心的なお客さんが萎縮してしまい、正当な要求ができなくなる恐れすらある)。
あまりに理不尽なお客さんには、従業員を守るためにも毅然とした態度を取るべきで、お引き取り願うか警察を呼ぶ必要があろう。しかし正当な要求が含まれている場合には、「良薬口に苦し」でも真摯に耳を傾けなければならない。その際、聞き役やメモ役などの分担をして複数人で対応すると、言った言わないの水掛け論をしないで済み、相手を尊重しているという敬意が伝わり、冷静・安全な状態で、建設的な対話がしやすいように思う。
考えてみれば夫婦喧嘩も親子喧嘩も1対1の間で起こる。どちらにも加勢しない(←ここ重要)第三者的な立場がもう1人入ることで、平和的な解決につながるのではないだろうか。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。