畠中恵・著/朝日新聞出版、2021。曹洞宗のお坊さんぽいカバーに惹かれて書店でジャケ買いしたもの。
明治20年。僧冬伯のもとへは困り事の相談に日々客人が訪れる。本日は店の経営不振に悩む料理屋の女将で……。僧侶兼相場師の型破りな僧侶と弟子の名コンビが、檀家たちの悩みを解決しながら、師僧の死の真相を追う。連作短編エンターテイメント!
相場師でもある主人公や、主人公に相談に訪れた人々が、窮地に思いもよらぬ賭けに出るところが痛快。今のお寺ではそんな賭けをする場面はないもので。
「檀家」が個人単位で、先祖供養などしてもらわず、お寺を支える人というふうに描かれているのが印象深かった。あと、主人公冬伯の次の言葉。お寺にはさまざまな情報が寄せられるが、公言してもいいことと悪いことの区別をつけなければならない。話によっては、家族にも言ってはいけない秘密もある。ほうぼうでお話をする機会が多くなってきただけに心しておきたい。
語りづらいことがあるのかもしれませんが、お聞きしても、余所には語りません。僧は口が堅いのです。そうでなくては人の話など、聞くことはできませんから」