ちょっといい話(11)アサーション(1)事実を確認する

(長井法人会ワンポイント情報 令和7年9月号に掲載)

アサーション(自他尊重の会話)の一番目は、自分も相手も了承できる事実から始めることである。「あなたはいつも遅刻するよね」「全部人任せだよね」「絶対そういう性格だよね」と言われれば、「そういうときもあるかもしれないが、いつもじゃないよ!」と反論したくなるもの。「今週は〇回遅刻した」「〇〇の件では人任せだった」「〇〇といった言動から、そういう性格なのかなと思うことがある」というのであれば事実に近い。印象論ではなく、事実をできるだけ正確に言葉にすることを心掛ける。

もっとも、こうして述べられた事実が意図せずして相手を追い詰めてしまうこともある。常識的に遅刻はするべきものではないし、仕事は人任せにしないほうがよいわけだから、それができなかったのは事実だとしても、それをわざわざ言うのは非難やダメ出しと受け止められるだろう。実際、注意・叱責する意図で、事実だけ述べることも多い。「今週は〇回遅刻したね」ということはたいてい「今度は遅刻しないように気を付けなさい」という意味であって「遅刻した理由を言いなさい」ではない(なので、聞かれてもいない理由を話すと言い訳くさくなってしまう)。

そのため、事実の確認は一方的な決めつけにならないようにするだけでなく、相手の立場を想像しながら丁寧に行いたいものである。頑なに詰め寄れば噓をついて隠ぺいしようとしたり、感情的になって話し合いができなくなったりしてしまうかもしれない。警察官の尋問みたいにならないよう、相手が受け入れにくそうな事実は小出しにしたり、遠回しにしたりする。相手が受け入れやすい設定から徐々にハードルを上げていく「フット・イン・ザ・ドア」(セールスマンがドアに足を踏み入れて少しずつ要求を吞ませる)という交渉テクニックのイメージだ。また、「その事実を悪用しない」(ダメ人間認定をしない、他人に言いふらさない)という信頼関係を築くことも大切。この事実を前提に、自分の気持ちを述べていく(つづく)。

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