子育てに成功した親の話よりもエビデンスをということで、信頼性の高い学術論文に基づいて、非認知能力、家族の関わり、勉強習慣、友達の影響、別学と共学、性差などについての知見を紹介。本書でもすべての子どもに当てはまるわけでも、絶対に覆らない真理でもないことは述べられているが、統計的差別に気を付けて自分の中の常識を修正していきたい。
- 成長マインドセット:努力することで自分の能力を向上させることができると信じること。人間の能力は生まれつきではなく、目標を設定して努力し、失敗しても建設的に考えることが大事だと子どもたちに繰り返し伝えることでやり抜く力が伸ばせる
- 祖父母との同居は、孫のコミュニケーション力や言語発達に良い効果がある一方、肥満になりがち(笑)。また祖父母が孫の世話をすることで、祖父母の認知機能が30%程度改善する
- 井の中の蛙効果:ごく身近にいる人とのみ比較することで自分の能力を誤って見積もってしまうことにより、偏差値の高い学校で最下位になるよりも、偏差値の低い学校で最上位にいるほうが将来成功しやすい。学歴よりも相対順位
- 収入の男女格差のもとは競争心の差。女性は競争意識が強いというのは実際は逆で男性のほうが強い。男性は女性が同じグループにいると自信過剰になり、女性は男性が同じグループにいないと自信過剰になる。地方議会のクオータ制で女性議長が誕生した地域では、女子の学歴が高くなり、教育格差が縮小。実力のない女性議員は増えず、実力のある男性議員が増加した
- PCに先生の代わりはできない:1人1台端末で学力が低下。ただ単に子どもたちに与えるだけでは害になり、現場の教員が積極的に関わって習熟度に合った指導をすることが重要
最終章の「最も重要な決定とは、何をするかではなく、何をしないかを決めること」が響いた。外国語、人権、ICT、金融など、学校にはさまざまな教育が今求められているが、カリキュラムを詰め込むのではなく、きちんと取捨選択(この頃学校でいう「精選」)して、新たな挑戦のための余裕をもたせておくことが必要だというのは全くその通り。諸会議でも前向きな「これは本当に要るのか?」という視点を出していきたい。