ちょっといい話(2)他人の話は参考にならない

(長井法人会ワンポイント情報 令和6年12月号に掲載)

お寺の和尚さんといえば昔からそうだったのだろうが、仏事だけでなくさまざまな人生相談を受けることがある。まず、自分のような若僧を頼ってわざわざ来てくださったことに感謝とねぎらいの言葉をかけてから、お話をお聞きする。
人から相談を受けるとき、自分の体験談を語る人がよくいるが、参考になることはほとんどない。状況も人も違うからである。それよりも、相手の話をじっくり聴いて状況を整理し、自ら解決策を思いつくのを待つほうがよい。テレホン人生相談で加藤諦三氏が「変えられることは変える努力をしましょう。変えられないことはそのまま受け入れましょう。起きてしまったことを嘆いているよりも、これからできることをみんなで一緒に考えましょう」と言うのはだいたいその通りだが、最後は「みんなで一緒に考えましょう」ではなく「自分自身で考えましょう」である(それでは番組が成り立たなくなってしまうけれども)。
思いつくままにおしゃべりする雑談においても、自分の話は最低限に留めるようにしている。大乗仏教には「不自讃毀他(自らの徳を持ち上げ、他人を批判しない)」という戒律があり、陰徳が推奨されている。善行だけでなく、たとえ失敗談であっても、聴く人によっては自慢話になるかもしれない。信頼関係を作るための最低限の自己開示は必要だが、聞かれてもいない自分の話は、相手の話を聴かないで一方的に話し続けることにもつながりやすい。
ただし、自分が思ったこと、考えたことは積極的に伝える。同じ事柄について別の見方を提示することは、解決の手がかりにもなる。例えば病気や事故について「先祖の祟りでひどい目にあった」とネガティブに捉えるのと、「ご先祖様が守ってくれたおかげで軽くて済んだ」とポジティブに捉えるのとでは、予後も全く異なったものとなる。傍目八目、第三者の客観的な見方により視野を広げることは、ただ「頑張れ」なんて無根拠に励まされるよりもよほど力になるだろう。

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