『死者と霊性 近代を問い直す』

編:末木文美士/岩波新書(2021年)

近代日本思想に造形の深い5人の対談と寄稿。『死者と霊性の哲学』(朝日新書)で神智学と憲法の話が出てくる意味がわからなかったが、神智学については安藤礼二氏の説明(p.60~)で既存の宗教との連結と総合という観点で、憲法は中島岳志氏の寄稿「死者のビオス」で死者の声として位置づけられており、合点がいった。

霊性については「言ったもん勝ち」「捉え方は人それぞれ」感が否めないが、対談ではゲノン(1886-1951)、欧陽竟無(1872-1943)、熊十力(1885-1968)、牟宗三(1909-95)、康有為(1858-1927)、ダルマパーラ(1864-1933)、ケーラス(1852-1919)、マスペロ(1883-1945)など知らなかった思想家が次々と紹介されて刺激的。

ホセ・カサノヴァによると宗教の世俗化には三段階あるそうだ(座談会第III部)。第一段階は医療や教育などの分化、第二段階は私事化、そして第三段階は減退化。現代は第三段階にあり、分化したものの中にもう一度宗教性を取り戻さないといけないという。例えば葬儀や法事にグリーフケアやいのちの教育の機能をもたせること。寺院の生き残り策はこのあたりにあるように思われる。

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