著・太田啓子/大月書店(2020年)
男女共同参画でよく言及されていたので購入したが、目次をみて結構重いトピックばかりだったのでパラパラ読んでそのままにしていた。しかしある時、小さい男の子が乱暴なことをしているのに「やっぱり男の子だねえ」と笑って許されているのを見て違和感を抱いたのがきっかけで読み直し。
・有害な男らしさ(Toxic masculinity):社会的に「男らしさ」として当然視・賞賛され、男性が無自覚のうちにそうなるように仕向けられる特性の中に、暴力や性差別的な言動につながったり、自分自身を大切にできなくさせたりする有害な性質が埋め込まれている。「男の子ってバカだよね」「カンチョー放置」「意地悪は好意の裏返し」といった周囲の大人の反応によって強化されてしまう。
・インセル(Incel=Involuntary celibate):非自発的な禁欲主義者。自分が望んだわけでもないのに女性と性的関係をもてない男性(いわゆる非モテ)。女性から蔑視されているために恋人ができないと考え、女性への憎悪(ミソジニー)をつのらせて暴力や殺人に発展するケースが跡を絶たない。女性を神格化するのも、女性のことがわからない、わからないから怖い、怖いから敵対しか絶対視のどちらかになってしまう。大切なのは「モテよりもマッチング」であることを中高生に伝えるべき。
・自分の感情に対する解像度が低い:男性は女性と比べて自分の感情を言語化する習慣が少ないことが、コミュニケーションの意図的な省略(家庭内で妻を無視するとか)などのモラハラにつながる。子供の頃から「男の子だもんね、痛くないよね」「男の子だったら泣くな」などのジェンダーバイアスを強化する言葉がけをされて感情を抑え込んできたことが要因。自分の弱さを認め、必要に応じて誰かに助けを求められる勇気が必要。
ある小学生女子向けのファッション指南書で、モテるための「キュートな会話テクニック」は「さしすせそ」で男子をホメることだと書かれていることに、男性が自尊感情を自分自身で供給できない問題を見出す。
自分の機嫌は自分でとるのが大人の態度で、子どもにもそうできるよう育ってほしいものです。ところが「男性を立て、手のひらで転がすのが賢い大人の女性」といった言説があるように、なぜか男性が女性に機嫌をとってもらえることを許容する風潮が一部にあります。そうするとそれに甘え、自分で自分の機嫌をとる訓練をせず(したがって上達もせず)、それどころか女性が男性の機嫌をとることを自明としてしまう男性が生まれるということなのでしょう。これは男性の幼稚さを許容してしまう悪しき文化だと思います。
男性の「男らしさ」(弱音を吐かず、タフで勇敢なこと)が何でも悪いわけではないが、それはときとして、男性を将来不幸に追い込むこともあるということは銘記しておきたい。そんなことを考えると、例えば長い棒を持つのが好きな子に「やっぱり男の子だねえ」みたいはことは言えなくなってしまった。我が家では、「かっこいい」も「かわいい」も男女問わず使っている。