『輪廻転生 〈私〉をつなぐ生まれ変わりの物語』


竹倉史人『輪廻転生』(講談社現代新書)読了。生まれ変わりの思想を「再生型」(同族内の生まれ変わり)「輪廻型」(繰り返される生まれ変わり)「リインカネーション型」(霊魂の進化)に分け、世界中の事例を分析します。

西アフリカのイグボ族では、1人の霊魂が2人以上の肉体に同時に転生することもあると考えられており、分割可能な霊魂が想定されています。この考え方を応用すれば、日本でも一部が位牌に留まり、一部が生まれ変わるという考え方もできるでしょう。

アラスカのトリンギット族では、新生児の前世が特定されると、親族関係も引き継ぎ、母親を「お姉ちゃん」、祖母を「お母さん」と呼んだりすることもあるといい、社会関係の資本が再利用されていると分析します。霊魂の有無はさておき、いなくなった家族の役割を別の人が受け継ぐということも、広く再生と考えてよいのかもしれません。最近、葬儀の後に「料理でもいい、外仕事でもいい、遺族が亡くなった人の真似をすれば、その間は亡くなった人が生まれ変わっているといえるのではないか」という話をしています。

仏教の最大の弱点とも言われる輪廻の主体についても、一定の答えが提案されています。五蘊を5本の糸に喩え、その模様・図柄・折れ癖といったパターンが引き継がれていくというもので、イメージが湧きました。講演会で「みなさんが亡くなった後、その性格を引き継いだ別の人が生まれてくる」という話をしたら、「悪い性格が引き継がれて次の人がたいへんな思いをしないように、今のうちから性格を直しておかないと」という方がいらっしゃってなるほどなと思いました。

ヴァージニア大学医学部の知覚研究室で前世の記憶を検証する研究が行われているという話は非常に印象に残りました。これまでに収集された2600の事例で統計を取ると、子どもが前世について語り始めるのは平均2歳10ヶ月、前世の死から次の誕生までは平均4年5ヶ月、前世で非業の死を遂げた事例は67.4%だったとのこと。生まれ変わりまでの日数は仏教で49日説が一般的ですがもっと長いのかもとか、満足した人生を送った人は人間に生まれ変わらないのか、それとも前世を忘れて生まれ変わるのかとか、いろいろ考えることは尽きません。

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