本日、本堂に見事な前机が奉納された。
今年の春、檀家さんがお見えになり、お葬式で大変お世話になったのでと寄進を申し出られたのがきっかけ。そのときにぱっと思い浮かんだのが前机である。
前机とは須弥壇の前に置いて、香炉、花瓶、蝋燭立てなどを載せる台。内陣(本堂中央の板の間)の一番手前に置くため、本堂で最も目立つ仏具である。これまでの前机は、文久元(1861)年に白鷹町山口の石井家から寄進されたものだが、高さを調節するために下駄を履かせており、塗装が剥げている箇所、部品がない箇所も多かったため、打敷で完全に覆ってしまっていた。
新しいものを買うほどの予算もなく、また古いものも大事にしたかったので、部品を取り替えたり付け加えたりして改修することにして、兼務寺の檀家さんである齋藤木工に発注。見ていただくと、当時の節の多い杉材なので、欅で作りなおしたほうがよいのではないかという。そこでデザインと色合いだけ踏襲することにし、寸法、塗り方(漆は高いのでカシューで)、寺紋の入れ方など、細かい打ち合わせをしてお願いをした。
夏は塗りがうまくのらないということで冬に。そして年末になってようやく完成したところである。寄進なさった檀家さんをお招きして、搬入に立ち会って頂いた。
仏具専門ではない木工所の上に、途中の工程を見ることができなかったので、不安があった。そのため想像をはるかに超える出来栄えの良さに舌を巻いた。
まず目を引くのが寺紋。プリントでよいと伝えておいたのだが、彫ってある上に金箔入り。上と下の板が、同じ欅を2枚に切って使われており、木目が同じになっている。前の前机の部品も2箇所使ってくださっていたが、どこがその部品で、どこが新しく付け加えられたものか分からないほど精巧である。前の前机にはなかった部品も、仏具カタログを見て製作したという。予め伝えていたよりもずっと費用がかかったと見受けられるが、予算通りの金額。これもまたありがたい。
「末代まで使えるものを」と齋藤木工の会長さん。立ち会った檀家さんも殊の外喜んで下さって、住職としても嬉しいひとときだった。