お正月になると、本堂に法事札を貼り出している。年始で訪れた方々は、自分や親戚の家で今年、誰かの法事があるかを確認する。法事が終わると札をはがすという仕組みで、1年を通して次第に札がなくなっていくのだが、12月になっても何枚か残っているものが頭を悩ませる。
電話して「法事がまだありますよ」とお知らせするのもひとつの方法だが、お寺から催促されてするのでは功徳がない。かつてはお寺で供養して、塔婆をクリスマスに配って歩いたこともあるが、突然住職がやってきて忘れていた法事の塔婆を渡されるのは、さすがにばつが悪い。いろいろ考えた末、今回は状況に応じて次のように対応した。
・来年は法事がない場合は、お寺で供養した上で紙札を郵送
・近隣の方で来年も法事がある場合は、一緒に供養してもらうことにして次の年の法事札と一緒に掲示
・遠隔地の方で来年も法事がある場合は、紙札を郵送した上で来年もありますとお知らせ
・連絡の取れない方は、お寺で供養して終わり
紙札には、勝手ながらお寺で供養させて頂いたこと、おうちでもお参りして頂きたいことを一筆箋にしたためて同封した。あくまで菩提寺の住職の役目として行ったまでだが、中にはお布施をお持ちくださった方もいらっしゃって恐縮した。
数年前まで、法事札は年回忌ごとに貼り出していたが、同じ家で複数の仏様がいると、貼った本人すら見落としてしまう。そこで地区ごとに五十音順で貼り出すようにした。
よく「法事は命日より前に」というけれども、これは年の暮れにならないようにということだと解釈している。この近くでは11月末ころから雪や嵐でお墓参りができなくなる。この雪は春のお彼岸まで溶けない。法事の後にお墓参りができる期間は4月中旬〜11月中旬の8ヶ月。故人の命日がいつであれ、この期間に行うのがよいと思う。
あと、「親戚はどこまで招くか」という相談を受けるが、それは日常のお付き合いの延長線上にあるものなので一概には言えない。血筋の遠近と付き合いの深浅は関係ないことも多い。ただ、たとえ遠方にいる子供たちがいたとしても、少なくとも家族は揃ってほしいと思う。親子三世代でできる家族行事は今どき少なくなっているので、法事は、家族の絆を深める貴重な機会である。
2年続けて法事がある場合は、どちらかの年にお客様を呼び、もう一方の年は家族ですることで御仏前などの負担を減らすという方法や、会費制にして気軽に参加してもらえるようにするという方法もある。「人並みに」とか「前と同じ」ではなく、それぞれの家の実情に合わせて工夫する余地はまだありそうだ。こうして法事が実際的かつ意義深いものになれば、年末に残る法事札ももう少し減るかもしれない。