『政策論争のデタラメ』

あまりテレビは見ないが、朝晩のニュース番組でしかめっ面をして社会を批判しているキャスターをたまに見ると、過度な一般化と大衆に訴える詭弁を弄していることは分かる。だが本当のところはどうなのか、興味があったので読んでみた。
1.ひとりひとりの省エネでは全く追いつかない。原子力発電は不可避
2.医師は不足していない。勤務医の待遇改善を
3.教育は目標だけでは動かない。結果重視で柔軟に
4.郵政民営化は成功していない。信書配達と過疎地の郵便局は国営で
5.官僚をたたいても国はよくならない。議会改革が先決
具体的なデータを示して議論を進めており、各章ごとに明確な「処方箋」を述べているので分かりやすい。もっとも、処方箋はいずれも大胆な改革案なので、実現可能性には大いに疑問が残る。
中教審の議事録から、都内の区立小中学校が文科省・都教育委員会・区教育委員会から1年間に受け取る文書は120通、回答すべき調査・アンケートは小学校で400本、中学校で200本に及ぶという「ここから浮かび上がるのは、日本の公立学校の先生が、生徒と向き合わずに、書類の処理に忙殺されている姿ではないか。」
実際、長女の学校から、「お子さんは命を大切にしていると思うか」などという(問題は無意味ではないが、アンケートにすること自体が)無意味なアンケートが来た。これに「はい」と答える親のパーセンテージを取って何になるというのだろう。
エネルギー、医療、教育、郵政、公務員はいずれも、私たちの生活と切っても切れないことばかりである。日常のちょっとした1コマ1コマから、その背景に対する洞察を与えてくれる良書である。

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