「頭の良い人」が最大の利益をもたらす使い方が想定された黎明期、才能を世から知られない人々を浮かび上がらせた成熟期を経て、現在は「普通の人」「バカ」向けの暇つぶしとして使われることが大勢となったウェブ。結局話題はテレビばかりだし、ウェブだけで商品の販促は無理。そんな現実と、ネットの世渡り法を指南する。
第1章「ネットのヘビーユーザーは、やっぱり暇人」では、「お前にどんな迷惑をかけたんだよ」という輩が有名人や大企業に怒ってバッシング。もう何を言っても無意味な批判は収まらない。「すべてがフラットでフェアな世界であるネットでは、『誰が言うか』ではなく『何を言うか』が重要」は夢物語である。
第2章「現場で学んでネットユーザーとのつきあい方」では、プロの物書きや企業にとって、ネットはもっとも発言に自由度がない場所であること、ネットが自由な発言の場だと考えられる人は、失うものがない人だけであることを例示。正しいことも、誹謗中傷を恐れて書けない。
第3章「ネットで流行るのは結局テレビネタ」では、「テラ豚丼」「アサヒる」「スイーツ(笑)」などネットで流行っていても一般にはほとんど知られていない現状を報告。ネットの常識が一般といかに乖離しているか。
第4章「企業はネットに期待しすぎるな」では、うまくいくための5か条を提示。特にネガティブな書き込みをスルーする耐性(バカは無視してOK)、B級なネタを発信する開き直りが強調される。ネットでは納豆、チロルチョコ、ガリガリ君が御三家なのだという。ネットは居酒屋のような場所で、居心地の良い店に自然と人が集まり、楽しんでいく。そこに相応しいのはスーツを着た中年男の能書きではなくて、キャンペーンガールやイケメンのノリのよいトークである。
第5章「ネットはあなたの人生をなにも変えない」では、ネットに対する過剰な期待を戒める。ネットによって生き方や趣味嗜好は細分化されておらず、むしろ均一化されている。ネットの進化はもう何年も前から止まり、リアルな生活にさほど大きな影響を与えていない。
ブログ炎上の顛末やオーマイニュース閉鎖、足クサ川柳など、ネットで起こっている最近の出来事がたくさん例示されていて面白く、意見に説得力があった。佐々木俊尚氏がウェブの明るい未来を描く著書がこの頃胡散臭く感じられてきたのは、時代の変化によるものなのかもしれない。
いろんなブログをチェックしていると、日本語が下手だったり、全然ものを考えた形跡がなかったりして読む価値を感じないものが確かに増えている。そんなものに時間を取られるよりも、「リア充」ができるならネットはほどほどにしたほうがよいのかもと、この頃ずっとパソコンの前に座っている生活を反省した。あと、自分のブログではもう少しB級ネタを心がけようかな。