むちゃくちゃな生活を送ってきた作家が、体調を崩したのをきっかけに人生にリセットをかけようと僧侶になった。人里離れたところで心静かに修行に励む、なんていう理想とは裏腹の現実が待っていた!
まず最初のハードルは正座だったという。様式の生活で3分ももたないのに、僧侶は30分くらい当たり前。道場ではそれっきりだった。
道場を出てからは今度は法事や葬儀の忙しい日々が待っている。説教を始めると2,3分でもう誰も聴いちゃいない。でもやがて仏教や念仏で救済された人との出会いを通じて、自分なりの仏道実践を見つけていく。
「ぼやき」というタイトルとはかけ離れた、卑屈なまでの低姿勢ぶりが、上から目線で話してしまう典型的な僧侶と一線を画していて読み物として楽しめた。もっとも、それは作家としてのレトリックなのかもしれない。
葬儀の過剰なイベント化(孫の手紙などの泣かせ演出)に釘を刺しつつ、法要の力・美しさ・荘厳さをもっと磨かなければならないという意見、葬儀は生きている人のためと言い切る態度、祟りの否定など、すがすがしさもある。ただし葬儀のお布施が高いのは僧侶が全生涯をかけて行うからというのはいささか詭弁という気もしないではない。