競馬、カジノ、麻雀……若い頃からギャンブルにどっぷり浸ってきた植島教授の半生記。世界のあちこちでギャンブルに興じてきた思い出を振り返り、そこから人間の強さ・弱さを透徹した目で掘り下げる。
著者いわく、日本人はギャンブルを特別悪いことだと教えられてきたが、今や貯蓄思想はすっかり破綻してしまっている。中国人が2年間屋台を引いて200万貯めたらためらうことなくカジノにでかけ、500万にする賭けを打つ。勝てば翌日から店をもつことができ、負ければまた2年間屋台で働く。そういう割り切り方が日本人にはできない。日本人は負けを怖れすぎている。失うのを怖れているくせに、現状にもまた不満を抱いていることで、心が病む。負けることで得られるものは大きい。自分自身を発見する秘訣が隠されている。
ギャンブルは完全な運ではない。「何かを信じても勝てるとは限らないが、何かを信じないで賭ける人間はほぼ100パーセント負けてしまうのである。」また世間では運よりも実力で勝負すべきという考えがあるが、実力はつかうと確実に減る。だからギャンブラーは実力を温存し、なるべく運で勝つように心がけるのだという。「実力で勝つうちは二流」(p.55)というのは至言。
遊びをほどほどにするよりも、ほかのムダな時間を徹底的に排除したほうがよい。「遊んでいると自覚しているムダな時間のほうが、仕事をしていると錯覚しているムダな時間よりもはるかによい。(p.93)」同じく「仕事ならバカでもできるが、遊びはバカにはできない。(p.125)」
競馬で勝つ秘訣は、超大穴を見つけることである。そのためには負け続けても挫けない精神をもたなければならない。「ギャンブルの勝ち負けなんて死んでみなければわからんということである。(p.137)」
ギャンブルに否定的な日本で生きてきた著者の自己正当化を書き連ねただけなのかもしれないが、道楽人の見方は何かほっとするものがある。