『 3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代』

『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の著者が豊富な具体的事例から「昭和的価値観」からの脱却を勧める本。『若者はなぜ〜』よりも読み応えもあるし説得力もある。どちらかだけ読もうと思っている人はこちらをお薦めしたい。
例えば……
私立の有名進学校から現役で東大法学部、卒業後に大手生保に入社したものの今は数字を拾って関係各所に流すだけ。転職市場ではもはや彼の人材の価値はない。「オレ、どこで間違ったのかなぁ……」
大手日本企業の幹部候補として派遣留学、MBAを取得したものの、その知識を生かすクラスになるにはあと10年以上もまたなければならない。米国企業との直接交渉で煮え切らない50代社員を差し置いて自分の判断で交渉に乗り出したところ「おまえ、なに勝手に仕切ってんだよ!」
東大文学部を卒業してすぐ出家、浄土真宗の僧侶となった松本圭介氏(『おぼうさん、はじめました。』)。一般社会への情報発信に力を入れている。東大生から「どうしてお坊さんになったんですか?」と聞かれて「ではどうしてあなたは官僚になりたいと思うんですか?」
多くの人はキャリアアップする時期を逸し、独立する気概もなく、趣味でも充実させながら今の職場でやっていくしかないのが現実だろう。割り切れるならいいが、「もう一人の自分」が頭をもたげてきたならば……やりたいことがあって転職するというのは昔からあることかもしれないが、それは「逃げ」ではない。
労働者を守ってきた左派政党が労働者の中高年化で保守化してしまい、中高年の高賃金を維持するために若い労働者が犠牲になっているという著者の指摘については傾聴に値する。でももっと実証的なデータがほしい。

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