『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』

大卒入社3年以内で36.5%が会社を辞める(2000)。その理由は厳選採用・ピンポイント採用のため専門性と仕事に対する意識の高い学生が多く採用されるようになったのに、現場では年功序列の名残で下積みの単調労働ばかりやらされることにフラストレーションを抱え込むからだという。
年功序列は若い頃の労働の対価を中高年になってから受け取る積み立て制度だが、中高年にポストと高収入を与えるには企業の成長が不可欠となる。しかし続く低成長時代においては、年功序列はもう支えきれない。こうして年功序列の幻想に騙されながら、またうすうす気づきながらも高給取りの上司を食わせるためにクタクタになる若者たち。
「年功序列制度は、組織の方針を信頼し、将来を託すという意味で、一種の宗教に似ていなくもない。写経を続ければいずれ極楽へ行くことができると信じられるからこそ、人は写経するのだ。出口のない地下牢の奥で毎日数字を書きなぞっていれば、心身に偏重をきたしても無理がない気がする。(p.87)」
努力が報われない社会に希望はない。そしてこれが少子化の原因になっているという。派遣社員が同じ仕事を半分以下の給料で行い、しかも将来性もないとすれば、その負担は「次世代を作り育てる」という役割の放棄につながる。
この格差の原因を企業の成果主義に求めてはならない。総人件費の抑制のため、結果として成果主義や派遣社員が導入されたのである。格差の原因は、年功序列への無理な固執である。
もはやよい高校、よい大学、よい企業というレールはすでに崩れた。「与えられるものは何でもやれるが、とくにやりたいことのないからっぽ人間」では生き残れない。答えはひとつではないし、他人から与えられるものでもない。会社を利用して自分を磨くくらいの意気込みで、働く理由を見つけ出そう。
字数が少ない光文社新書のせいで全体に具体例や資料が少なくイメージしにくいところも多かったが、主張と構成は分かりやすい。自分の所属する組織が当てにならなくなる可能性は常に意識しておかなければならないと思った。

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