死とは何かを、実存哲学、他者論、時間論、存在論から講義録というかたちで分かりやすく解説した本。
第1日では、すべての人は生まれた瞬間に「百年のうちに死刑は執行される、しかしその方法は伝えない」という残酷極まりない有罪判決を受けるという運命を突きつける。死に対する恐れ、それは自分のあり方に対する虚しさである。
第2、3日では自分の死が到来するはずの時間である未来を時間論から考察する。現在から見た未来(の予想)と、現にこれから起こる未来とは決定的に異なることを示した上で、未来の存在は何によっても保証されないこと、しかし意志によって直面できる新しい時間であることを説く。
第4日は他者論から絶対的に重なり合わない他者と未来の異同を考察。他者の死の経験から自分の死を考えられるかを試みる。自分で見ることができず、もう覚めることのない自分の死は正真正銘の無である。
そして第5〜7日は無を存在論から追究していく。「無」という言葉で表された瞬間、無は存在になってしまう。しかしそれと同時に、言葉で表されない無が立ち上がってくる。私がいなくなるとき、言葉の境界を越えて向こうに行くのである。
ハイデガーとサルトルをベースに、レヴィナスや西田に批判を加えつつ説得力のある論を展開しており、この問題に対する諸哲学者の見解も知ることができる。