慕古真心 不離叢林
末後端的 坐断而今
これは5日に106歳で遷化された曹洞宗大本山永平寺貫主・宮崎奕保禅師の遺偈である。遺偈とは僧侶の遺言のことで、毎年元日に書き改めることになっている。実際作っている人はあまりいないようだが、禅師様のこの遺偈は実際今年の元日、遷化されるわずか4日前に書かれたものだという。
「古の真心を慕い、叢林を離れず。末後の端的、而今を坐断す」と読むのであろうか。釈尊・達磨大師・道元禅師の仏道に倣って一生を修行道場で過ごしてこられた宮崎禅師のご生涯が滲み出ている。永平寺では「先人たちが歩んできた禅の道を、この永平寺にて歩んできたが、今まさに、その道が途切れようとしている」と解説しているが、後半は道が途切れるということではなく、この世に留まる最後の一瞬まで坐禅し続けるということだろう。まさに禅僧の鑑だ。
翻るに新しいものに追われ、修行から程遠い生活をして、静かに忍び寄る自分の死を怖くて見つめられない自分がいる。禅師様のご生涯を真似ることなど到底できないが、最後の教えを大事に頂いて胸に刻み付けたいと思った。