新聞やテレビの情報や大学の授業で教わることに対して、専門的な知識なしに、面白いかつまらないかという観点で反応する力を「つっこみ力」と呼び、メディアリテラシーやリサーチリテラシーに代わるものとしてその効用を説く。
つっこみ力には3つの軸がある。まずは分かりやすさを心がけること、愛。
『わかりにくい説明をする学者も、これと同じじゃないですか。わかりやすく説明したら、なあんだ、学問ってのは、どうでもいいことを難しく説明してるだけなんじゃん、と世間に知れ渡ってしまうから、ご自分の権威を保つために、難しい言葉でカモフラージュするんです。』
『学問は伝わってナンボです。伝わらずに、自分だけわかったつもりになってたら、無意味な自己満足です。』
次は相手の興味をひきつけること、笑い。そのためには正しさや批判力ではなく、おもしろさという付加価値を高めなければならない。
『どんなに論理的に正しい批判だろうが、正論だろうが、一人でも多くの人に伝わり、納得してもらわないことには、なんの力も持たないのも真理です。それがキビシい現実です。』
『正しいと思ったことを、いかにおもしろく伝えられるかが重要なのに、識者も学者も教育者も、それをあまりにも軽視しています。大衆に媚びる必要はありませんが、ウケを狙いにいくことは、大切です。』
そして権威だろうが偉い人だろうが、遠慮なくつっこむ勇気。論理的に反論できなくてもいい、茶化してでもいいから、何かヘンだということを意思表示しておこう。
『周囲の人を愉しませて巻き込み、相手をいじるパフォーマンスを見せることで、「そういわれりゃあ、なんかヘンだ」という感覚を、多くの人の頭に植えつけることができればいいんです。』
この後、経済学者のインセンティブ理論や日本人の肩書き先行的な職業観、失業率と自殺率の相関などに実際につっこんでみせる。ただ茶化しているだけかというと、10年スパンで長期的な視点を持った再チャレンジ社会や、家を売れば借金の中区なる住宅ローンの仕組みなど、はっとさせられる意見も。創造的なアイデアというのは、笑いの中から生まれるのかもしれない。
ところどころクスリと笑える文句があって、読み物としても楽しめた。