『ネット時代の反論術』

相手の意見をよく読まず、文中に使われている単語を見て「脊髄反射」的に批判・反論をされることが多くなったブログ時代に、そういったものにどう対処していくかをフランクに書き綴った本。
著者はまず反論を3種類に分類し、それぞれに合った技術を紹介する。
1.見せかけの論争―論争自体に関心はないがギャラリーからよく見られることを目的にして論争のふりをすること。八方美人ではなく味方になるターゲットを決めて訴えることが必要。
2.論理詰め―理詰めで自分の主張を相手に受け入れてもらうこと。真理はひとつではなく、力関係によって決まること、また外野を排して同じ土俵に立つことが必要。
3.人格攻撃―反論というかたちで相手を潰すこと
。自分も汚れ役となる覚悟(ここ重要)が必要。
一般に議論・論争といえば2を指すが、筆者は「ほんとうに論争をしたいという動機をもっている人は、世の中、そんなに多くありません」という。学者などでさえ、専門をちょっとでも離れると1か3にずれる。全くその通り。
であるので1と3に習熟して、状況に応じて使い分けたり、相手の動機を察知して対処したりするのが賢いやり方になるだろう。
インド哲学で行ってよいとされる議論は「真理を知るためのもの」と「相手に勝つためのもの」までであり、「名利のためのもの」は禁止されている。相手に勝つことは、自分が所属する派の基盤を守るために正当化されるが、そのような拠って立つ組織がない現代人にとっては、相手に勝つことがそのまま名利になってしまうのだろう。個人でやっていかなければいけない現代はツライのである。
右翼左翼やフェミニストとの論争を繰り広げてきた筆者の具体例はとても分かりやすく、突き放したような書き方に思わず笑ってしまうこともあって、マニュアル的な要素だけでなく読み物として十分愉しめた。

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