付和雷同しがちな日本人に足りない、問題解決のための議論をルールから説き明かし、もっともらしい意見も批判的に見つめ、建設的な議論をできるようになるための本。
実質何も言っていないのにそれらしく聞こえるマジックワードや統計のカラクリ、バイアスのかかった資料解釈、「人それぞれ」という考え方の誤り、意見の要約や根拠の評価の仕方、対立する意見の弁証法(共通の前提を覆す)、正解は決してないという限界など。
議論は必ずしも戦いではなく、協力している面もある。仲良く喧嘩することが、意見を批判されただけで全人格を否定されたようになってしまう日本人には何と難しいことだろう。
「議論に負けても、それは相手に負けたことにはならない。真理に負けた、いや従っているのである。悔しがるより、自分がより心理に近づいたと満足すべきなのだ。」
「議論の場とは、対立しあっているように見えるが、実はたった一つの点では共通している。それは、「私とあなたは同じ問題に関わっている」という信頼である。」
しかし、自分の意見を理解してもらうという努力は放棄するべきではない。主張と理由だけで分かってもらえなかったら、例示、説明、引用、対比、比喩を多用しよう。
「もちろん、理屈がうまく通じない相手もいる。偏見が強かったり必要な知識を持っていなかったり論理が苦手だったり、そういう場合は必要な知識を補い、論理のつながりを丁寧に言い換え、解きほぐす必要が出てくる。」
有名人、専門家だからといってしっかりした意見を持っているとは限らない。批判的に見る・疑ってみるということは、決してひねくれてみるということではなく、問題の本質に迫っていく大切なことなのだと考えさせられた。
もっと議論のルールが学校教育などを通して共有されたらよいと思う。