レトリックを意味、形、構成に分け、30の項目に分けて小説などを例に取りながら解説した書。ジュニア新書だけに平易で、ところどころ若者受けしやすいレトリックも交えている。
筆者は英語学が専門であるが、「英語も日本語も、本質的にはそんなに変わらないと思っています」と言い、本書を通してギリシャ以来のレトリックが、日本語にも備わっていることを通して、日本語の独自性よりも普遍性を強調したいようだ。
だからタイトルは「日本語だけのレトリック」ということではなく、「日本語にもあるレトリック」という含みになる。タイトルから日本語の独自性というか前者を期待していた私としてはやや落胆した。
レトリックが目指すものは、白を黒と言い含める技術ではない。「魅力的な表現」「より適切な表現」「文脈をよく考慮して、伝えたい意味が過不足なく表されて」いることである。レトリックを離れてものを表現することはできない。「単なる言葉の飾りではなく、私たちの思いを表す根源的な表現法」なのである。
そういう意味で、レトリックの技法に無関心でいることはできない。話す上でも書く上でも、いくつかは無意識に使っている30項目を確認して、意図的にそして自由自在に使いこなせるようになりたい。