2005年増補新版。仏式の葬儀の中核をなす戒名について歴史的展開、社会的機能、宗教的意味を分析し、今後の展開と対策を考える本。
宗教学者が書いたものなので、戒名の宗教学的意味のところが一番大切だと思うのだが、祖先崇拝一般の話に終始してしまい、本題の戒名についてはほとんど触れられていないのは残念だった。もっとも、原始仏教には戒名がなかったのだから、意味なんてないのかもしれない。
一方、戒名の種類が家柄を反映することによって、社会秩序の維持に役立ってきたとする考察は納得。だからこそ戒名で死者を差別するのはよくないからと言って全部を同じ種類に統一するまでにはなかなか至らないのだ。
今後の展開と対策は、無宗教葬に触れている程度で具体性に乏しい。現実的な問題なので、現実的な改善策がもっと示されてもよかったと思う。