『子の世話にならずに死にたい 変貌する親子関係』

田舎のお寺でも、首都圏にいる檀家さんが少なからずいる。さらに、子どもたちが首都圏に住み田舎には年寄り夫婦だけという世帯は数え切れないほどだ。そしてその数は今後どんどん増加していくだろう。核家族化は、首都圏だけの問題ではない。
本書は今の50代、60代が介護や葬儀、法事などを子どもに頼りたくない事情を社会学的に考察し、実際に頼らないようにするためにはどのような方法があるかを具体的に提示している。子どもに頼りたくないのは信用していないからではない。子どものことを思えばこそ迷惑をかけたくないのだ。
今、「家」という共同体が急速に崩れ夫婦単位、個人単位になってきているのは紛れもない事実である。そうなれば継承者のいない仏壇やお墓はどうなるのか、葬儀はどうなるのか。寺院はそうした社会情勢や需要に応え切れず、高いお布施で不信感を集めるばかり。
私は住職を務めている者であるが、これまで葬儀や先祖供養を支えてきた団塊の世代がまもなく見送られる側となるのに見送る者がいなくなってきた現在、寺院としてもう手をこまねいてはいられないところまで来ている、すぐにでも何か手を打たないといけないと手遅れになるのだと思わせられた。
樹木葬、桜葬、散骨、墓の引越し、遺骨の手元供養などの具体的な手順や連絡先が掲載されている。死後の自分の身の処し方を考える上で一読しておくとよいだろう。

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